【感想・ネタバレ】青に沈む庭 特別版のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

カラス、アカノイト、とシャレードから出ている朝丘作品にはお気に入りが続いたので気になって読みました。新たなお気に入りがまたひとつ。

温かい家庭ですくすくと育った一と、家族の温もりを知らないまま、『家族』を求める気持ちから一の姉、真と結婚するも、自分の『病気』を捨てきれず、一度は手にした家族を自ら手放し、自らを攻め続けながら生きる逸人。
密かに許されない思いを抱いてしまった相手にあれだけ無邪気に無自覚に懐かれたら無碍にはあしらえないよね、辛いよね……。
空や海の青、二人の想い出の朝顔の色、成長過程の一と、未だ物憂げな想いに囚われたままでいる逸人を縛り続ける青い想い。
移ろいゆく日々の風景と心の色の描写がひとつひとつ鮮烈で胸にぐっと迫ってくるよう。

真が一の逸人への想いと覚悟のなさを聞いて啖呵を切るシーンは突き刺さりました。
常識的な家庭に育ち、逸人を夫として迎え入れて彼と家族を作っていくつもりだった真には彼が自分の性癖にずっと苦しんできた事も、それらを乗り越えて覚悟して生きていくことがどれほど困難なことなのかも全て分かっていて、一の『自分の気持ちだけが大事で世界の全て』な子どもっぽい真っ直ぐさが苛立って仕方なかったのかもしれない。
些細なことから爆発して喧嘩→翌朝に姉の方がケロっとしておおらかに流してくれるあたりは『家族』のあり方を象徴する良いシーンだったなと思います。
朝丘さんは同性愛者として生きていく覚悟と苦しさを容赦なく描く作家さんですが、家族の絆、一度手にしかけたそれを自ら壊してしまったという罪の意識と苦しさ、逸人の生い立ちの苦悩が容赦なくのしかかってくるので読んでいて苦しかったです……。
自分を偽り、抑えながら生きてきた逸人が一の真っ直ぐさに絆されて脱皮しようとし、子どもらしい真っ直ぐな憧れと想いをぶつけていた一は本当の意味で逸人を受け止め、彼の人生を救おうとする。重く苦しい話で、その後の二人にもまだまだ問題は山積みだろうとわかっていても、二人の成長物語として清々しく心地よく読めました。
あれだけ苦悩していた逸人が意地悪さを覗かせるラブシーンも、星がパラパラと二人の上に降ってくる場面もとても好きです。
挿絵の雰囲気も合ってるんだけど、一と逸人が身長くらいしか描き分け出来てなくない? これじゃ双子の兄弟だよ
ってところが残念……。

カラスの久美もそうだけど、朝丘さんの描く女の子は特徴的というか、ちょっと無邪気な不思議ちゃんぽいのでその辺がイラっとする人も居るんだろうなぁ。
個人的には加奈ちゃんと泉堂のその後が気になります。ケンカップル万歳。笑

0
2015年09月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

全体を通して、恋愛というよりは家族愛がテーマ。
家庭に恵まれなかった逸人さんと、家庭に恵まれてる一。
対照的なふたりですが、この家族愛がたまらなく切ないです。
なんといっても、脇キャラの女性陣が素敵。
朝丘さんはノーマルも書かれる方なので、その辺の描写も秀逸です。
桃色部分はきわめて少ないですが、激しく萌えました。
主に逸人のセリフに。

優しくするけど、手加減はしないよ

ヘタレだと思ってたら、とんでもない猛獣だった、みたいな。
個人的には、逸人が受だと思ってたので吃驚です。
いや…性格的に、絶対に一の方攻だと思うんですけどね。
だから↑のセリフに余計に萌えました。

0
2012年05月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 これは絶対しっとり系のいい話だ! と思って読んだら、やっぱりしっとり系のいい話でした。
 こういうので当たりを引くとワクワクしますよね!

 物語の主人公は岩瀬一。
 一って書いて「いち」。

 一には真という姉が一人いて、その姉は一度、二十歳の時に結婚し、その三年後に離婚した。
 一は、その姉の元夫である元義兄のことが大好きで、元義兄の玖珂逸人の元に通い詰める日々だった。
 逸人は、一の姉と離婚すると共に、今まで勤めていた大手企業を辞め、「夢」と言っていた海岸で喫茶店を営む日々をしていた。
 けれど、一の目に映る逸人は何となく表情も冴えず、全てを諦め切った表情を浮かべているように見えた。
 一はそれが悲しくて、なんとかして逸人を笑顔にしようとするけれど、逸人は二言目には一に対して「もう来なくていい」と言い、「バイトとしては雇わない」と言うのに、時給九百円のお小遣いを一にくれたりする。
 一はそんな自分の立場を歯がゆく感じるのだけれど、同時に自分では逸人を癒せない事を強く意識していた。
 そこまでして逸人を想う自分の気持ちを、一は家族や友人に感じる親愛の情だと、深く考えた事もなかったけれど、ふとしたことがきっかけで一は自分が逸人に抱く想いが「恋」であることに気が付いてしまう。
 せめて本気で想っている事だけは知って欲しい、と思った一は、振られる事を前提に決死の思いで告白するけれど、結局、逸人に望まれたのは一が、逸人にもう会いに来ないで忘れる事、だった。
 一は、自分に対して彼がそう感じるのは、まだまだ自分が子供で頼りないせいだと考え、自分がずっと思っている事だけは忘れないでほしい、と告げ、彼の前に姿を表さないようになる……


 という話でした。
 家族に恵まれなかった逸人と、家族に恵まれた一。
 逸人は、一の家族を壊したくないと、ありきたりの幸せを一とその家族には手に入れて欲しいと願い、その手を振り払うけれど、真っ直ぐな一は、その逸人の想いまで踏み越えて、彼を手に入れる……という感じの話でした。

 なんというか、一の真っ直ぐさと純粋さが、逸人には怖かったんだろうな……と思いますが。
 こういうちょっと現実を噛みしめる感じの痛い系の話は大好きです。

 そしてそれよりも何よりも、元妻・真がかっこよすぎる!

0
2013年09月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ゆっくりと時間をかけて、お互いの気持ちを受け入れていくお話。その根底に流れているのは家族への愛ですね。生い立ちが不幸で家族の愛を知らずに育った逸人は高校生の時に自覚した自分の性癖を恥じている。一度は『幸せな家庭が欲しい』『この性癖を捨てたい』と願って結婚するけれど、いつしか妻の弟に好きになってしまい、そんな自分に絶望して離婚。せっかく手に入れた家族を泣く泣く捨てる。一方、この義兄に対して、刷り込みかっていうぐらい、執拗なまでの想いをぶつけてくる義弟の一。大切な家族のぬくもりを教えてくれた女性を裏切れない。義弟を自分のように後ろ暗い人生を歩ませたくない一心で、一を拒み続ける。物語は最初に“一”視点。次に”逸人”視点で書かれていて、それぞれの感情にけっこう説得力がある。どこまでもまっすぐに逸人を想い続ける一と一のことが大切過ぎてなかなか前に踏み出せない逸人。でも、やがて、誰を不幸にしても、失ってはいけない存在だと気付く。きちんと心情が描かれた、やさしいお話でした。
なんの下情報も先入観もなしで読み始めて、ずっと逸人は『受』だって気がしていました。だから、ずっと、え?攻なの?本当に?という気持ちがぬぐえませんでした。なんでだろ。
この作家さんの情景描写や心理描写は神だと思う。でも、相変わらず、ここは漢字にしといてくれよって思う箇所が多々ある。
余談ですが、個人的に、ヨレヨレになったやたらリアルのシーサーのTシャツを着ていたり、喫茶店でストローやスティックシュガーの紙ゴミを必ず星型に折ってしまったり、お風呂場に使い終わった絆創膏を置きっぱなしにするような男は生理的に無理――とふと思ってしまいました。

0
2012年06月19日

「BL小説」ランキング