あらすじ
電子版は本文中の写真を多数カラー写真に差し替えて掲載。
江戸時代、税の中核は年貢だった。
大名領が石高で表されるように、年貢は社会全体のありようまで規定していた。
だが、その実体はあまり知られていない。
検地によって面積と地味を定め、毎年の検見で作柄を調査し、負担額が決まる。
いつ払うか、貨幣で払うか現物で払うか、どこに納めるか等にも細かな規程があった。
一方で領主・百姓双方の思惑によって丁々発止の交渉が繰り返された。
年貢の成立から終焉までを巨細に解説する。
■□■目次■□■
はじめに
第一章 古代から豊臣政権期までの年貢
第1節 年貢の始まりから戦国時代まで
年貢の始まり/中世の百姓はなぜ年貢を納めたのか/戦国大名の検地と年貢/村による年貢請負
第2節 豊臣政権期の検地と年貢徴収
太閤検地/検地の実際/豊臣政権の年貢徴収法
第二章 江戸時代の年貢
第1節 年貢の意味と検地・石高制
年貢は税か地代か/江戸時代の検地/検地の用具と方法/石高と石高制/石高が年貢高から生産高へ
第2節 年貢の取り方
年貢の負担/厘取法と反取法/畝引検見と有毛検見/定免法への転換/年貢のあり方の時期的変化
第3節 年貢以外のさまざまな負担
多様な負担/漁村の貢租
第三章 領主からみた年貢
第1節 幕府領の場合
幕府領の年貢/幕府領の石高・年貢収入・年貢率の推移/一八世紀半ば以降の状況/一九世紀(江戸時代後期)の状況
第2節 大名領の場合
長州藩(萩藩)/熊本藩など/民政軽視の傾向
第3節 旗本領の場合
旗本領の年貢/年貢の地払い/年貢に代わる上納金の賦課/武左衛門の得た特権/先納による年貢の変質/村々による勝手賄
第四章 百姓からみた年貢
第1節 江戸時代の村と百姓
江戸時代の村とは?/村の住民/村の仕組み/村行政と教育・医療・セイフティネット/江戸時代特有の金融慣行
第2節 年貢を数字でみる
農業生産力の発展/一反当たり収穫量の増加/百姓にとっての年貢の重さ
第五章 年貢の賦課から上納まで
第1節 村における年貢の割付と徴収
村請制の意義/村に年貢割付状がやってくる/納付証明書に当たる年貢皆済目録/百姓各戸への年貢の割り付け方/村の蔵/重層する年貢請負
第2節 江戸への年貢米輸送
幕府領の年貢米輸送と村々の連合/主張する惣代庄屋たち/東北から江戸への年貢米輸送/買納の基準米価をいくらにするか/全国の納惣代の連携/廻米をめぐる百姓と武士
第六章 年貢をめぐる対立
第1節 百姓一揆と年貢
百姓一揆が起こる/前橋藩領の百姓一揆
第2節 村請制と村方騒動
百姓が定免法を求める/個々の百姓の年貢額は村が確定する/名主と百姓の納得ずくの年貢勘定/村方騒動が起こる/一つの村から全国を見渡す
第七章 年貢の矛盾が深まる
第1節 領主の理念と村の対応
年貢と村入用――信濃国高島藩領からみる/高島藩の年貢徴収法/徳帳仕法の特徴/村請制と公私分離/村入用と歩割仕法/歩割仕法の特徴/藩の意図と村の抵抗/表と内所、公と私
第2節 米相場がもたらすトラブル
松前藩領の酒田買替米/酒田買替米をめぐるトラブル/村役人と小前の対立/酒田買替米が教えること
第3節 村方騒動から百姓一揆へ
観音寺村の村方騒動/続く村内トラブル/百姓一揆と検地帳の破棄
終章 年貢から地租へ
地租改正と年貢の終焉/年貢とは何だったのか
注
参考文献
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Posted by ブクログ
江戸時代の百姓=虐げられていた人々、というステレオタイプのイメージを覆す一冊。
おそらく、学校の授業では江戸時代の百姓は重い負担を強いられていました、という説明がなされていると思う。
しかし、実際の史料にみえる百姓はそうとは限らない。確かに重い負担はあったが、ただ耐える訳ではなく、したたかに自律的に動いていた。
年貢の輸送に際して、廻船業者とトラブルになった際には、江戸において利害が一致する遠く離れた他国(他藩・他領)のリーダー層と共同し、交渉する政治力を見せている。
それも、本来的にはタブーとされ、場合によっては処刑される老中などへの直接訴訟を、処刑まではされないと計算した上で、複数人でタイミングや相手を分担して行うなど、かなりアクティブかつ緻密に幕府相手に交渉をしている。
また、江戸時代と明治時代は断絶していたように語られることもあるが、年貢から見ると、享保の改革以降、定額化・貨幣納化していったことにより、明治期の定額・金納化する地租改正への素地ができあがっていた、と江戸時代から明治時代への連続性を指摘する点も目から鱗だった。
「江戸時代の農民は虐げられていただけ」というステレオタイプのイメージを持っている人にオススメできる一冊。