あらすじ
ソクラテス、プラトン、アウグスティヌス、パスカル、ニーチェ、ヘーゲル、カミュ、レヴィナスという古今の8人の哲学者が残した“決めゼリフ”を、「いかに生きて死すべきか」という視点から読み直し、その言葉の中に見えてきたさまざまなことについて考察している。著者は難解な哲学用語をほとんど使わずに、「死」について哲学しているので、まさに、何度も何度も哲学書に挫折してきた人にこそおすすめの一冊といえる。大学の哲学科の教授と寺の住職という二足のわらじを履いてきた著者が導いた「私はいかに生きて死すべきか」に対しての答えは・・・。
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Posted by ブクログ
死というテーマを中心に据えた哲学エッセイ。西洋哲学の主だった思想家の何人かを一人ずつ丁寧にとりあげ、彼らの経歴なども紹介しながらその思想に迫っていく。その中で著者が考えたこと、読者に伝えたいことが、こちらにうまく伝わってくる。(特にカミュを扱った第4章にぐっときた)。その語り口の巧みさと発想のしなやかさは、著者が大学教授であるとともに真宗大谷派の住職でもあることと無縁ではないだろう。
Posted by ブクログ
哲学とは死を考えること。死を考えるということは人間の生を考えることでもある。おそらくあらゆる生物の中で人間だけが死という概念を持ち、それ故に死を恐れる。人間だけが死体を自然のサイクルから切り離して弔う。人間というのは本質的に不自然な行為をおこなう存在であるのかもしれない。ソクラテス、プラトン、レヴィナス、アウグスティヌス、パスカル、ニーチェ、ヘーゲル、カミュ…哲学者たちの言葉から、死を通して人間の存在に迫った、非常にわかりやすい哲学入門。
Posted by ブクログ
「いかに死に赴くか」をテーマとして、ソクラテス、プラトン、レヴィナス、アウグスティヌス、ニーチェ、カミュ、パスカル、ヘーゲルといった哲学の巨人たちの思想が、現代の歌や詩、戯曲や映画の引用を交えてわかりやすく(ときにわかりにくく)解説されている。
個人的には、間違った非実用的な贈りもののやりとりを通じていかに愚者から賢者になったか、というエピソードと、カミュのパートが印象的だった。
前者は、パートナーが贈りものを送る際に、夫は時計を売って妻に高価な髪留めを送り、妻は美しい髪を切って売って夫に時計の付属品を買うが、お互いにとって無駄な贈り物を送りあってしまう。
しかし、夫婦はお互いの贈り物を通じて、お互いの愛情を感じて喜び合う、これが賢者だというエピソードだ。
本当に大切なものは実用的なものではなく愛情だということは、頭で理解しながらも心で理解するのは難しい。
カミュのパートでは、カミュが恩師から受け取った祝福を、ノーベル賞を受賞して与えられる立場になったカミュ自身が弱い人々へ送るエピソードが語られる。祝福を送るということは、何気ない日常の中に新たな価値、自分自身の価値を発見するということだ。既成の価値観や偏差値から自由になって、物事を自分自身の目で丁寧に観察して表現することだ。
このように本当に大切なものは何か、物事を見る自分自身のモノサシを身に着けることで本当に自分の生を生きることができ、ひいては自分自身の死を迎えることができるようになるのだろう。
この本で紹介された「100万回生きた猫」の著者である佐野洋子さんの本も読んでみたいと思った。
佐野洋子さんが谷川俊太郎さんの配偶者であったことは知らなかった。
世界はつながっているのだと思う。