あらすじ
家族で農家を営む修司は、気候変動や後継者不在の将来に漠然とした不安を抱いている。
一方、隣家の入り婿・一樹は、義父との不和に悩みながらも、理想の農業を目指そうと画策中。
また、修司の妻・亮子や母・由美子も、閉鎖的な土地での役割や過去の澱を抱えながらも、小さな希望を見出そうとしている。
そんな中、地元で一番の成功頭であるメガファームで、従業員が立てこもるセンセーショナルな事件が発生する。
修司の一人娘である千沙や、メガファームの社長夫人、移住してきたカフェ店主など、誰もが屈託を抱えながらも「隣の畑」を過度に羨むのではなく、自らの土を耕し、静かに明日へ踏み出そうとする姿が瑞々しく描かれる。
『ともぐい』で直木賞を受賞、人間の愚直な生きざまを描き続ける、元酪農家の著者・河﨑秋子さんによる地元・十勝を舞台にした【農業×家族×生き方】小説。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
北海道の農家や周囲の人々の、諦念、後悔、希望、再生、調和、若さ、老い、未来など、それぞれの人物の思いが”隣り”ではなく自分と向き合う事で、初めて新たな道へと進んでいける力となる様を、地味ながら誠実な筆致で静かに伝えてくれていた。
地に足のついた小説だった。
Posted by ブクログ
初読みの作家さん。とても読みやすくいいことばかりでないのに読後感はさわやか。北海道の農家さんが抱えるあれこれ雑多な愚痴や悩みと共に生きる連作短編集。ハーベストでコーヒーとケーキ食べたいな~。
Posted by ブクログ
農業界隈での”連作“は大概避けなければならないが、河﨑小説の連作ならば心配御無用。読後は隣の畑より肥沃な土壌に様変わりしているはずだ。
―――隣家と数百メートルの距離はあっても、地縁は四方八方に根を張っている。一つ屋根の下で暮らす家族同様、同業の内情に精通した地域付き合いがここにはあった。
農作業の疲労の上にのしかかる、余計なしがらみや好奇の目。足掻く主人公たちを、折り合いの糸口へ導いてくれるのはそんな同業者だったりして皮肉だ。
混合リレーのバトンパスにミスなし。朗らかにおおらかに読み通せる小説だ。
Posted by ブクログ
河﨑秋子の最新作。十勝に暮らす畑作農家の内面を丁寧に描く。
畑作農家が主役だけど、なんとなく流れる息苦しさや不穏な空気はどんな地域、どんな職業でも共通している。
お姑さんとの関係
地域からの見た目
移住してきたけど居場所がない…
そんな中で見えてくる「希望」とは。
続編頼みまーす‼️
Posted by ブクログ
初めて河崎さんの作品を読んだけどとても良かった!北海道の農家を舞台にした連作短編集。現代の田舎暮らしの描写や人物の心情がリアルで等身大で惹き込まれました。
Posted by ブクログ
各章で主人公を変えながら、十勝の一地域に暮らす数軒の家族を描いた作品です。
何代か続く畑農家、やり手のメガファームの社長一家、移住してきたカフェの夫婦など、畑農家の仕事や農村特有のコミュニケーションに鬱屈を抱えた人々が主人公です。
確かに舞台は河崎さんの地元・十勝です。しかし時代小説が、舞台が過去であるというだけで、テーマ的には現代小説と変わらない事が多いように、この小説の中で起きる問題も、少し色を変えれば、都会の例えば商店街でも起きる内容です。ですから、読みながら「これは河崎作品である」という事を強く意識する事は有りませんでした。
最終的に主人公たちは変わります。でもそれは、全てのしがらみを振り切る様な力強い一歩ではなく、しがらみを負いながらもかろうじて前を向くと言った調子です。リアルと言えばリアルだけど、爽快さは余りありません。
悪くは無いのですけれど。河崎さんの特長だった力強さは影を潜めた作品でした。