あらすじ
一年中海外を飛び回っている商社勤務の有田ユカリ。
ある日、本社に呼び出されると、出張禁止を告げられた。
理由は、体脂肪率が高いために、万が一があると困るから。
思いがけず日本での暮らしを強いられたユカリは、既婚か未婚かを問われる村社会っぷりにげんなりし、今すぐにでも海外にエクソダスしたい。
そのためにも体脂肪率を下げるべくジムに熱心に通い、狙い通り数字も改善されてきた矢先、あるものを拾い......。
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Posted by ブクログ
体脂肪率の高さから出張を止められたキャリアウーマンが奮闘の中で発見をする
石田夏穂さんの面白さが凝縮された1冊。石田夏穂を知らない人は手っ取り早くこれを読むといいと思います。すごく面白いです。
相変わらず文章がまず面白い。北大路公子のエッセイでも読んでるようです。その上で、「アホかいな」と笑ってしまう謎の、しかして意外に世の中にありそうでもあるルールが設定され、苦闘する中で主人公が社会という総体のもたらす暴力的な眼差しにさらされていく。
それを真っ向から対抗したり批判する社会的な方向性(BUTTERとか)ではなく、辟易しつつもいつの間にか自分もそれを取り込んでしまい、有頂天になった末にうっかりしくじるというこのユーモラスな展開。
こういう話をこの短さでさらっと書けてしまう作者をもう尊敬しちゃいます。本当に面白かった!
Posted by ブクログ
この作者の作品を読むのは初めてだったが、「100分で読める」レーベルとはいえ、文章のテンポの良さが際立っていて、文体も内容も個人的にかなり刺さった。
特に、ユカリが海外志向になったきっかけとして「人びとが人びとに無関心に見えたことに奇妙に慰められた。自分はずっとここにいるべきだとすら感じ、そんな憧憬はいまも変わらない」と語る場面から、この作家とは感覚的に合いそうだと感じた。読んでいて主人公のユカリに共感するところが多く、自分と違う部分についても、それはそれで人としての面白さとして興味深く感じられる。
指輪を盗んでしまう場面から物語が一気に加速していく展開も魅力的だ。まるでジェットコースターのように助走は短いのに、気づけば高いところまで登り詰め、落ちた瞬間から最後まで高速で四方八方へ連れていかれる感覚。外からレールの軌道を見てルートはある程度想像できていたはずなのに、実際に乗ってみると思いがけない方向へ運ばれていく。そんな濃密でエキサイティングな100分だった。
Posted by ブクログ
ちょっと解釈が難しかった。体脂肪率35%を超え、海外出張禁止令が出た主人公。彼女が体脂肪率という外的な評価基準に直面したとき、彼女は内面を変えるのではなく、結婚や子どもといった「物語」を捏造することで自分の価値を補完する。そこには罪悪感や葛藤が見られず、落ちていた指輪さえも平然と利用する冷淡さがある。しかしその冷淡さは、現代社会のある意味、合理性すら感じる。だからこそ彼女は破綻せず、うまくやってのける。この作品の静かな不気味さは、適応できていそうだけど、その適応の仕方が壊れているという点なのかな?⑤
Posted by ブクログ
テーマが斬新で、早く読みたくて仕方なかった作品。
ページも多くないのですぐ読めた!
ダイエットのためのジム通いを始め、何かと出会いがあったりして主人公意識が変わってゆく・・・というお話かと予想していたのですが、いい意味で期待を裏切られました。
冷ややかな悪魔である「結婚指輪」を手に入れてどんどん嘘を重ねていく……現実にいたら最悪だけど、エンタメとしては最高な主人公!
また読み返したいです。
Posted by ブクログ
「わが友、スミス」などの作品よりは、さらっとしてて物語としての厚みはそれほどない。なんか、石田夏穂入門って感じもするけど、いや、なんか、物足りない!って感じでした。
タイトルの冷ややかな悪魔が、何を指しているのかが物語の最後にわかるのは爽快だった。
体脂肪が多い独身中年女の主人公が、その属性を既婚子持ち中年女に変えただけで、周りの反応が変わってそれにのめり込んでドツボにハマっていく様は、読んでてハラハラしたけれど、それ自体にはそれほど共感できないというか、大手商社に勤めてるバリキャリが、結婚していないというだけで、こんなに異物を見るような視線で見られるものなのか?指輪ひとつで本当こんなに変わるのか?という設定自体に疑問を感じてしまう。あまりリアリティを感じない。
石田夏穂は大好きだけど、この作品はいまひとつって感じだな。
Posted by ブクログ
Audibleで楽しみました。
体脂肪率が高いために出張禁止を告げられたユカリ。出張に行くために、窮屈な日本(本社)を抜け出すためにジムに通い始めます。
本社の面倒臭い慣習に心底うんざりしながらも、ユーモラスに語るユカリがなんだか嫌いになれなかった。かなり強めの言葉で皮肉っていたりするのに、ずーんと悲しい気持ちになったりユカリと一緒になって怒ったりする気にはならず、不思議とくすっと笑ってしまう。気が付くと「分かる分かる、そういう人いるよね」と共感し、お互い頑張ろう、と勝手に心の中でユカリと拳を突き合わせたりなどしていた。ユカリが、ジムでたまたま拾った指輪を身につけるまでは。
他人との共通項が生まれたことで馴染みやすさを感じ、ユカリがそれに感動して「既婚者のフリ」にのめり込んでいく様を見ていると、面倒臭い慣習に一番囚われていたのはユカリ本人なのではと思ってしまった。週に何度も顔を合わせる人に対して嘘をどんどん重ねていくユカリを見ていると冷や冷やドキドキして、後半はユカリの語彙を楽しむ余裕がなくなっていました。
物語そのものには個人的に苦手な要素が多かったのですが文章のテンポはとても好きだったので、次に同じ著者の本に触れるときにはAudibleではなく書籍で楽しみたいと思いました。