あらすじ
『これは、私の独り言だと思って聞いてください。どうかこれは、記録に一切残さないでほしい。どうか、墓まで持っていってください。そのテープも……』戦艦「大和」はなぜ沖縄へ向かったのか。なぜ沈まねばならなかったのか。「一億総特攻の魁」をめぐる「嘘」とは何か。真相を知るのは、戦艦大和研究の第一人者として知られる原勝洋氏。そして筆者の下には、原さんから譲り受けた1971年のカセットテープがあった。
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Posted by ブクログ
戦艦大和は大日本帝国海軍の象徴であり、当時の世界最大の戦艦だ(超弩級戦艦)。史上最大の46センチ砲を三連装三基九門搭載し、その主砲から繰り出される弾は重さは1.5トン(乗用車程度の重さ)、飛距離は42キロ先まで届く設計である(実際は30キロ程度)。これは東京駅から戸塚までの距離に相当し、発射から着弾までに90秒かかると言われる。大きさについては、全長263メートル、最大幅40メートル、艦橋の高さは艦底から50メートル近くあったそうである(設計図が失われたため正確な数字はわからない)。その大和が太平洋戦争終盤に沖縄に向けた海上特攻にて沈没した事についてはよく知られている。多くの本では、大和の所属する第二艦隊司令長官である伊藤 整一中将に対して、中央からの作戦伝達を担った草鹿龍之介中将が語った言葉「一億総特攻の魁となって欲しい」、そしてそれに対する伊藤中将の返信「それなら分かった」というやりとり。あまりに有名なこのシーンであるが、そのやり取りが実際にどうであったか。いまその真実を知る関係者はもう居ない。だが戦史研究の第一人者である原勝洋氏が戦後に当時の関係者に行ったインタビューと、その実録テープが残っていたことから、本書に話が繋がっていく。原勝洋氏の後継者である筆者池田 遼太氏は以前にも「山本五十六、最期の15日間」を書いているが、本書は師である原氏から託された大量のインタビューテープと、原氏との約束の中から生まれた一冊である。原氏が生前墓の中まで持っていくとしていた戦艦大和海上特攻の真実について、原が亡くなった今、筆者が原の想いを担い代弁していくものとなっている。
話はよく知られる大和戦績に触れ、終盤は神重徳が立案して、強行したと言われる海上特攻の話が中心となっている。神の作戦は無謀かつ片道燃料しか搭載を許可しなかった事から、生還を期さないまさしく特攻であったのだが、そこに話が至る経緯については、関連書籍などから知る事の出来る話は前述した様なものだ。伊藤整一中将が一億総特攻の先駆けとなったという件である。ここでは通常、神重徳の強行や伊藤整一の美談だけが語り継がれている。確かにその側面はある意味正しかったと言える。当時の日本に残された国力や大半の艦船を失いなす術の無くなった海軍の力を冷静に見た時、大和をむざむざ残したまま「負ける」事は許されない。既に特攻以外に取れる選択肢はなく、誰も代案を考えることが出来ない。一方的に神重徳だけを悪役にして全ての責任をなすりつける事は出来ない。その辺りの本当の経緯を知るためには、当時の状況を多角的に分析する必要があるし、生き残った関係者様々な意見を総合して考えるべきである。
本書は原が残したインタビューテープをくまなく調べ、原から後継者として想いを託された筆者が、戦後の美談になった大和の最後について、その真実に近寄ろうとするものである。戦史業書や大和に関する多くの書籍では見られない真実に迫ろうとする筆者の気迫や強い気持ちが伝わってくる内容となっており、まもなく終戦記念日を迎えるこの時期に読んでおきたい一冊だ。