あらすじ
書楼弔堂電子分冊版、第二十四巻。『書楼弔堂 霜夜』収録の「誕生」をシングルカット。
古今東西の書物が集う墓場にて。
明治の終わり、消えゆくものたちの声が織りなす不滅の物語。
花も盛りの明治40年――高遠彬の紹介で、ひとりの男が書舗「弔堂」を訪れていた。
甲野昇。この名前に憶えがあるものはあるまい。故郷で居場所をなくし、なくしたまま逃げるように東京に出て、印刷造本改良会という会社で漫然と字を書いている。そんな青年である。
出版をめぐる事情は、この数十年で劇的に変わった。鉄道の発展により車内で読書が可能になり、黙読の習慣が生まれた。黙読の定着は読書の愉悦を深くし、読書人口を増やすことに貢献することとなる。本は商材となり、さらに読みやすくどんな文章にもなれる文字を必要とした。どのようにも活きられる文字――活字の誕生である。
そんな活字の種字を作らんと生きる、取り立てて個性もない名もなき男の物語。
夏目漱石、徳富蘇峰、金田一京助、牧野富太郎、そして過去シリーズの主人公も行きかうファン歓喜の最終巻。
残念ですがご所望のご本をお売りすることはできません――。
※本電子書籍は『書楼弔堂 霜夜』の電子分冊になります。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
書楼弔堂シリーズ最終巻。相変わらず京極御大は面白いなー。
主人公が「印刷造本改良会」の一員であり、本という文化の近代化(大衆化)に一躍買った存在という部分は特に気をつけて読みたい。
本が大衆化される以上、生産のためにある種の均一化が必要になる。まぁ主人公が悩んでいたフォントがその1つなんだけど、その均一化と浮世絵がキーになっているのが構成として美しいね。
本も浮世絵も、別にアナタのために生まれたワケではない。
それらの存在から作者が本当に意図したことを完全に受け取ることは不可能だし、その必要もない。本も浮世絵も変わらずそこに在り続けるし、アナタがそこから何かを受け取ることこそが大事なのだな。
そういった人の思いを見出そうとし、自分の人生に奥行きを出すことをこそ、読書の本懐と京極御大は語りたかったと僕は受け取ったかな。
真実はわからないけれど、それもまた本の中に記されている…かもしれない。
Posted by ブクログ
至福の読み心地。
過去に京極夏彦作品を読んだときの、とにかく読みづらかったという印象が強くずっと避けていた。
今回「読者による文学賞スピンオフ」の選考委員となり、担当作品を選ぶにあたって自分が普段読まないものを指名させてもらったが、いやはやこれは面白い!!
「書楼弔堂」…しょろうとむらいどう、と読む。
明治の終わり頃、町外れにある書店はその名のとおり一風変わっている。どう変わっているかはこの本の中でじっくりおいおいと。
書楼弔堂シリーズの完結編。だが、この作品だけでも十分に楽しめたし、ここから遡ってシリーズ前作を読んでいくのもありだなと思った。
「読みたい時に読みたいものが読める、それが何より大事」の言葉が心に響く。
本というものが様々な角度から書かれている。
すべての「本好き」にオススメしたい本。
Posted by ブクログ
数々の有名人が登場したこのシリーズも遂に完結(TдT)しかし、今でもどこかで弔堂は電子書籍やオーディオブックを取り扱っていたりして…(^o^;)いやいや、やはり紙の本のみで店を開けていて欲しい!
Posted by ブクログ
大好きなシリーズの最終巻。この世界の空気に浸るのが大好きだった。超然とした世界に行ける気がした。
「いつまでも変わらないのはまやかし」、「同じ状態を維持するためには常に変わっていないといけない」…その通りではあるけど、それこそ寂寥感で胸がいっぱい。やはりさみしい。
Posted by ブクログ
フォントをつくる話はとても興味深かった。
「読みやすくどんな文章にもなれる文字」「どのようにも活きられる文字」
それは語り手とリンクしていて、
だから、最後に弔堂が渡した「一冊」がとてもよかった。
今までの語り手のその後がわかったのもよかったな。特に高遠さん…ちゃんと働いてる…
Posted by ブクログ
シリーズ物の良さで、今までの登場人物たちがたくさん出てきて嬉しかった。弔堂第一部完みたいな終わりだったけど、続いて欲しいな。
古書店って作家さんからすると自分の作品が新品で買ってもらえないとか印税が入らないとか色々問題があるだろうに、それでもその役割についてここまで好意的に書くのは流石だと思う
Posted by ブクログ
あー、もう龍典さんには会えないのだろうか。貴殿をはじめ、弔堂をめぐる人人には様様な真髄を伝えてもらった。今回は、初代迷える凡人高遠彬の下で働く名もなき青年甲野昇が書楼を訪ねる。確かに書籍の活字は時代を経て妙な個性がなくなり、読みやすくなった。地道な改良が続けられているんだね。紙質に然り。汎用性と永続性のせめぎ合い。「同じ状態を維持するためには常に変わっていなければいけない」か。天馬さん、凄い成長した。弥蔵さん、おからだ大切に。貴方の頑固ぶり好きでした。鶴田くん、弔堂なくなっても休み処茶屋が続きますように。
Posted by ブクログ
子どもの頃からずっと本が好きで読書が趣味で生きてきた人間として、なんだか胸が熱くなる巻だった。当たり前のように本が読める環境にあったのは、先人たちの作り上げてくれたものがあったからなんだなぁと思って。偶々、「舟を編む」も読んだところだったから、今もなお、たゆまぬ努力をしてる人がいると思うとさらにありがたく思える。
自分も一生、本に関わって生きていきたいなぁ。
Posted by ブクログ
印刷造本改良會で活字を作ろうとする甲野昇を狂言回しに、書籍に関連したエピソードが語られる。
お馴染みの弔堂と休み処の面々、印刷造本改良會での高遠彰ら、そして夏目漱石、岡倉天心、田中稲城、牧野富太郎、金田一京助らとの会話のうちに話が展開していき、天馬塔子も加わってシリーズ完結編を迎える。
本の中に記されていること、いないこと。
そういえば掲載図版の情報はあるものの、参考文献は掲げられておらず、実在の個人・団体等とは無関係のフィクションだという断りが書かれている。史実を重ねて読みたくなるが、そこも踏まえたエンターテインメントとして楽しむ、いやどんな読み方をするのも自由か。
25-10
Posted by ブクログ
シリーズ第四弾。
古今東西の書物が集う、“書物の墓場”〈書楼弔堂〉を巡る“探書”譚、連作六話が収録されております。
朝(破曉)→昼(炎昼)→夕(待宵)を経て、ついに夜(霜夜)という事で、お気に入りだったこのシリーズも本作で完結との事で寂しい限りですね・・。
本巻は、信州から上京して〈印刷造本改良会〉という会社で活字の創作をしている甲野さんを主役として、彼が各話で〈弔堂〉を訪れるたびに遭遇する、歴史上の人物と〈弔堂〉主人との問答を通して、自身が作る「活字」というものに向き合っていく流れなのですが、とりわけ「出版」に関する談義が多かったこともあって、本好き・・いえ、本が"大好き"な私としては非常に興味深く読ませて頂きました。
本そのものが希少だった時代から、市井に書物が広がりだし、活字・印刷・製本技術や流通の発展によって本が手に取りやすくなり読書人口も増えてきて・・という本を巡るあらゆる繋がりを思うと、今自分が気軽に読書を楽しめている環境に、先人たちの貢献があったのだなぁ・・と感謝が湧いてきますね。
登場したお歴々も、夏目漱石をはじめ、金田一京助、牧野富太郎・・等々豪華でしたし、シリーズ一作目に登場の高遠さんをはじめ、各巻の主役の皆さまも登場するという、まさにフィナーレに相応しい内容でございました。
因みに、キャラということでは、甲野さんの下宿の"元浪花節語り"の親爺さんがいい味出ていて、個人的に好きでしたね。
(京極さんの文体って、歯切れのいい江戸弁と相性バッチリだと思うんです~)
という訳で、本好きなら一度は訪れてみたい〈書楼弔堂〉という、夢の書物蔵(ご主人は"墓場"というておりますが)を舞台とした「深イイ話」を堪能させて頂きました。
またいつか、〈弔堂〉の主・龍典さんや、撓(しほる)くんに再会できたらよいな・・と思いつつ本書を閉じた次第です・・今までありがとうございました。
Posted by ブクログ
時代劇みたいにストーリーのパターンがあるので安心して読めます。今後のマンネリ化は否めないのでちょうど良い塩梅でシリーズ終了できて良かった。途中の本にまつわる蘊蓄が好きです。
Posted by ブクログ
ものすんごく面白かった、面白かったが、、
これでおしまい(号泣)。悲しい。
京極先生、、長らく続いていたシリーズを次々と畳んで
どないするん?新シリーズ開始してくれるんだとありがたいが、、
ていうか、弔堂めちゃ好きだったのに、、(涙)
最終巻は、本そのものの在り方を考えさせられる。
『本好きの下剋上』的な面白さもあり
いつものごとく歴史蘊蓄も大変キラキラ
有名人も多数出てきてアガる。
夏目漱石、徳富蘇峰、金田一京助、
牧野富太郎、そして過去シリーズの主人公たち
あの有名人たちが全員弔堂に通っていた(笑)
黙読、それは
脳内を旅するファンタジー
私などからすると、
ほぼ100%識字率も
黙読も物心ついたころからの”常識”であるが
明治時代というと、男子で50%超、女子30%ぐらい
寺子屋での音読
「し〜のたまはく〜〜〜」のイメージ。
そんなどころか、
私の親世代でも、字が読み書きできない人は結構居たらしい。
今の代書屋とか右筆というと、
ややこしい作法の公文書作成とかする人という感あるが、
文字を代わりに書くという職業が成り立っていたんである。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンの自動手記人形を思い出してしまうが(笑)
話はめちゃくそそれたが、
本書では、出版事情が劇的に変化した時代。
鉄道の発展で、移動中の読書が可能になり、黙読の習慣が生まれ、
黙読の定着は、読書の愉悦を深くし、読書人口の増加に貢献する。
本ビジネスが生まれる。
日本活版印刷へ移行していく時期。
そう、活版印刷は1400年代にできたが、
日本での活版印刷は、文字数の多さと、くずし字が活版印刷では不可能なことから
発明された当時は入ってこれず、
文章まるごと彫るスタイルの凸木版が主流であった。
※活版邦文字が全くなかったわけではない、家茂の頃には一応できていた。
ただし、一般的に商材になるものではなく、アカデミックなものに限られた。
これをなんとかするのが、
活版に向く日本語の”フォント”、活字の発明なのである。
その活字を作ろうとする男と
サポートの弔堂、弔堂で出会う人々、
京極節の会話で進んでいく話。
これが今生のお別れに御座います。大変、お世話になりました。
Posted by ブクログ
古今東西のあらゆる書物が揃う怪しい書店「弔堂」。ホラー系と思いきや特に事件も大きな展開もなく、店を訪ねて来る客に「この一冊」を薦める店の主人。客は幕末維新の生き残りや若き日の文豪など教科書に出て来る歴史上の人物ばかり。幽霊の話、浄瑠璃と浪花節の話、複製の話、活字の話などなど。京極ワールドにハマりました。
Posted by ブクログ
終わってしまった…切ない。
あのままお店があっても戦禍に巻き込まれていたと思うと、これでよかったのかもね。
そして北のどこへ向かったのか気になるところ。
今回も豪華でしたねー!!!
ビッグネームばかり。夏目先生、岡倉先生をはじめ、いままでの錚々たるメンバーのお名前も拝見して嬉しい限り。
本を売れません。とお話ししている弔堂様のお話、とても沁みました。
いやはや、でもあれだな。寒い時期に読めばよかったなぁー。
Posted by ブクログ
このシリーズの閉じ方好き。
人情話になっているけど、それを押し出してこず本と繋がりを絡ませて壮大な人間物語になっている。
さすが京極さん。
2906冊
今年134冊目
Posted by ブクログ
シリーズ最終巻。明治時代の15年間における本と人の出会いの集大成でした。
変わりゆく時代の中で、本に魅せられた人々が徐々に内省しながら道を拓いていきます。
今回の語り手は活字を作る青年。代々の語り手も登場して最終巻に相応しい内容でした。
本が作られていく過程を事細かに説明し、現代に繋がっていく様子がわかります。あまり意識したことないところへのこだわりが書籍の発展に大きく貢献し、誰でも不自由なく読書ができる時代に受け継がれていくことを感じました。
Posted by ブクログ
ストーリーとしても面白かったのに加えて、明治期の製本における様々な苦労・工夫(活字の事、紙の事など)についても、垣間見る事が出来て良かった。読書する時にいちいち気にはしてないけど、活字の漢字の横棒一本一本に拘っていた人がかつて実際にいたんだろうと思うと、凄い事だと思う(気にせず読書できるような字体こそが活字としては理想的なんだろうから、それでいいんだろうと思うが)。本の形態・普及の形式も、今後変わっていくのかもしれないけど、紙の本も残っていて欲しいと思った。
今回で書楼弔堂のシリーズが完結。時間があればまた破暁から読み返したいとも思うけど、1冊がそれなりなボリュームでもあるから、実際むずかしいのだろう。
Posted by ブクログ
本 本 本 本 本 本 本 本 本 本
言葉 言葉 言葉 言葉 言葉 言葉 言葉
人がいて
言葉ができて
文字ができた
紙ができて
墨と筆ができた
そして本があらわれた
今 言葉は 電子の波に 揺蕩い始めている
「本」の形か好きなのだけれど
紙は、本は、言葉は、どこへいくのだろう
Posted by ブクログ
シリーズ最終巻。
今回の語り手は活字のデザインをする青年で、彼の目を通して本の物理的な側面や流通などの変遷が語られる。本といえば内容についてばかり考えがちだが、本を作り人々の手に届ける過程に携わる人々の思いや苦労について考えさせられた。過去の語り手たちのその後も描かれていて、シリーズ最終巻にふさわしい終わり方。
Posted by ブクログ
シリーズ4作目で最終巻(前3作未読)。
明治40年代、店主が書物の墓場と呼ぶ書楼弔堂が舞台。
信州から印刷造本改良會に入った甲野昇は店主の教えも受け活字用の種字作りに従事する。
夏目漱石、徳富蘇峰、金田一京助、牧野富太郎なども登場し、作者の本や制作物に対する思い、蘊蓄に溢れた6篇。
御一新後、本/書物の出版・流通の仕組みが整ったことから弔堂はその役目を終え、明治20年代の初巻から10年余り語り継いだ本シリーズも終焉を迎える。
出版元HPの作者と書体設計士鳥海氏との対談も興味深い。
Posted by ブクログ
破曉、炎昼、待宵と続いて最終巻の霜夜。全巻読んでいたのに朝昼夕夜の構成だったと初めて気づきました。フィナーレらしく、今まで出てきた人が次々と現れたのは嬉しかった。時代がどんどん変わって、書物を取り巻く環境もいつのまにか出会うものから選べるようになっていた。そして弔堂の火事。そもそもこの世の人なのか分からない主人が北の方へ旅立ったということは、またどこかの本でふらっと現れるのかもしれない。
Posted by ブクログ
本好きにとって、今編は大変勉強になりました。
そして、活字、書のみならず、芸術の変遷が上手く弔堂と絡みなにか大切なものを気付かされた思いでした。
これでシリーズは完結なのか、現代編や未来の話が形を変えて作られるのでしょうか?
京極さんの創作を楽しみにしたいと思います。
Posted by ブクログ
各回が当時の様子なはずなのに、今の世相にも通じるものばかりで悪い意味で時代は巡るんだなと思った。
とはいえ自分で本を選んで読める時代、それはとても良い時代。
幸せな風景で終わったのにどこか寂しさを感じるのが弔堂だなぁ。
Posted by ブクログ
終わっちゃうかぁ。そうよね。
でも、もうすこし、この世界に浸っていたかったな。
モノクロの画像や史上に残されたエピソードくらいでしか知らなかった明治期の名士たちに、色が声が魂が吹き込まれ、いま、まさに隣で喋っているような、そんな世界が味わえるのが、この作品の良き点の一つ。
毎巻変わる主人公たちが、変動最中の日本で、静かに右往左往しながら腹を決めていく様を見届けていけるのも良き点。
そしてやはり、本好きなら一度は辿り着きたい、あの簾をめくって薄暗がりに入って息を呑んで見上げてみたい、叶うことなら自分の一冊は何なのか試しに聴いてみたい。
Posted by ブクログ
いつからこのシリーズを読んでいたのか…
開いてみて『あーこんな感じ』だった。
淡々と会話によって主人公が悟っていくことで話が進み、『憑き物』が落ちる。
京極堂は落とすが、こちらは代謝するように落ちるイメージ。
Posted by ブクログ
弔堂シリーズ最終巻、らしいです。
身もふたもない言い方をすると、これまで通り、という感じでしょうか。弔堂に訪れた主人公が行き会った人と会話しつつ、実はあの著名人でした、と。そのあたりの流れはもともとそんなに好きでもなかったので「ふーん」くらいの感想しかないのですが、今作の主人公甲野氏は「活字」を生み出そうとしているわけでそのあたりが一番興味深かったです。今では当たり前すぎて空気のようにしか思ってなかった活字がこうして生み出されたのか、とその生み出す葛藤とかそういうものが。
物語を楽しむうえで「面白さ」よりも「興味深さ」が上回るシリーズでしたね。