あらすじ
逆境のなかでは、人生を物語ることが救いになる?
介護していた母への自殺幇助容疑で捕まった光莉。
奪われた青春を取り戻す、彼女の再生の物語。
悲劇的に描かれがちなヤングケアラーの作品に反旗を翻した
『救われてんじゃねえよ』でデビューした著者、初の長編!
幼少期から十年間、学校にもほとんど通わず、北九州市の自宅で難病の母親をほぼ一人で介護してきた光莉。彼女は母の首吊り自殺を幇助した疑いで逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けてしまう。拘置所を出たあとは、叔母に引き取られて上京。二十歳の彼女は介護施設で働きながら中学の勉強をやり直すなど、青春を取り戻そうともがくなか、作家の日比谷と出会う。そして、自身の体験を小説にするよう勧められるのだが……。
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Posted by ブクログ
「人生を語ることは、救いになるのだろうか。」
読み終えたあと、そんな問いが心に残った一冊。
主人公・光莉は、幼い頃から難病の母を介護し続けたヤングケアラー。
青春を犠牲にし、母のためだけに生きてきた彼女は、母の自殺幇助容疑で逮捕されてしまう。
これは、壮絶な介護の物語であり、罪を背負った一人の女性が、自分の人生を取り戻していく再生の物語。
修学旅行にも行けない。
就職も諦める。
そんな介護が「日常」だった光莉の姿に、胸が締めつけられた。
『この事件は、誰が悪かったのだろう?』
介護から逃げず、最後まで母と向き合い続けた光莉だからこそ、その問いに簡単な答えは見つからない。
それでも、作家・日比谷との出会いをきっかけに、自らの体験を小説として綴り、自分自身と向き合っていく姿に大きな希望を感じた。
過去は消えない。
それでも、人は前を向いて生きていける。
ラストは涙があふれ、光莉のこれからの人生を心から応援したくなった。
ヤングケアラーの現実と、「物語ること」の持つ力について深く考えさせられる1冊でした。
Posted by ブクログ
一つ一つ紡ぐ言葉が、切なくて淋しくてやるせないのだけれど、でも透明感があって、主人公の根底にある無垢さや、会話のやりとりがふふっと笑えて、とっても好きだった。
物語を書くことで、救われていくその過程を見守れて、ちょっとこちらも救われる。
Posted by ブクログ
書評をみて読んでみた。聞いたことのない作家なだし、記述もリアルなので、この小説もしかして自伝的?と思ったけど、そういうのではないらしい。
ヤングケアラーによる自殺幇助罪で執行猶予が付いた主人公の、魂の救済に至る日々の物語という、予想外に重い話でどう着地するのかと思いながら読んだ。10年間自分の生活を犠牲にして難病で希死念慮のある母親を看護した20歳そこそこの娘に、「人殺し」と言う人が本当にいるんだろうか。更正協力事業所で真面目に働く職員に暴言を吐いて辞めさせるとか、そこまで世間の風は冷たいのだろうか。悲劇性を盛り上げて小説を面白くするためのエピソードとばかり片付けられない時代なのかもしれない。
親身な保護司の存在、母娘を見捨てて家を出た父、彼女を支え庇護する先輩作家など、登場人物もこの作品に深まりと彩りを添えていて、最後まで興味深く読んだ。
Posted by ブクログ
ヤングケアラーだった20歳の光莉。執行猶予付きの自殺幇助罪から保護観察になり、それからの日々がえがかれた小説。初読みの上村裕香さんの文章にひきこまれました。
主人公の光莉が背負ったものの大きさが、後から追うようにやってきては彼女の気持ちを落としていきます。どんな形であれ、身内をなくすということはそれを受け入れるまでにどれだけの気持ちの逡巡があるのかと、改めて感じました。
これまでの生い立ちで自己肯定感が低く、なんでも否定から入ってしまっていた彼女を気持ちの底から引き上げてくれる人の存在。仕事とはいえ親身に考えてくれる人の存在。そして同じ身内として気持ちを分け合えることができる存在。周囲にいた人たちが、光莉を底から徐々に引き上げていってくれている感じがしました。
難しいテーマですが、綺麗事だけではすませず、色々と考えさせられました。それだけではなく肩の力を抜ける場面もあり、緩急いい感じの小説でした。
小説とまではいかないけれど、書くことで心の整理がつくことはあると改めて思いました。とてもいい作品でした。
Posted by ブクログ
懲役二年、執行猶予四年。
罪状 【自殺幇助罪】
二十歳の若市光莉は、母親の自殺を幇助した疑いで執行猶予つきの判決を受ける。
光莉が九歳の時、母親が難病を発症。
翌年に父親が失踪し、そこから十年、光莉は一人で母親の介護をしていた。
介護ヘルパーを拒む母親と過ごした十年間。学校にもろくに通えず、光莉の生活の全ては母のためにあった。
母親に「殺してほしいの」と言われたあの日。
その日のことが思い出せない。
母が死ぬ間際、わたしを振り向いて言った言葉はなんだったんだろう-。
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姉の死を受け入れられない叔母との同居。
どこまでも追いかけてくるマスコミや 世間の目。
私は「母親を見殺しにした加害者」か。
幼くして「介護する身になった被害者」か。
他人が語る私の物語に、私の「ほんとう」はどこにもない。
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そんなある日、デビュー作が「元ヤングケアラーの実体験」」として話題作となった若い小説家・日比谷ヒビと出会う。
日比谷は、光莉に小説を書くことを勧める。
『自分の体験を物語ることで回復する、生きられる』
書くことで自分だけの「ほんとう」を見つける。周りが勝手に作り上げた光莉の人生ではなく。
そうして光莉は自分の人生を、失った青春を生き直す。
光莉は「自分の物語」を紡ぐために父親を探し、また母親の最期の言葉を思い出そうとする。
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なんて人生を背負わされているんだ光莉よ…。
思春期の大切な時間を、難病の母親の介護に奪われた光莉は 二十歳という年齢よりもだいぶ幼く、また喜怒哀楽も上手くだせないかんじ。
そんな光莉が、日比谷と出会い、元教師という保護司と出会い、職場となる介護施設で揉まれ、
一生懸命に自分の人生を取り戻そうとする姿は健気です。
だいぶヘビーな内容とはうらはらに、日比谷との会話は年相応にポップで それほど落ち込まずに読めちゃいます。
でもね、やっぱり 父親にちゃんと気持ちをぶつけた時とかさ
母親の最期の言葉を思い出せた時はさ
胸がぐーーーーーーーーーってなったよね。
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作者の上村さん、主人公の光莉よりも 日比谷というキャラが先に出来上がったそうです。
ご自身がデビュー作『救われてんじゃねえよ』で(読んだよー)「ヤングケアラー当事者の実体験」ということが注目されたことに後ろめたさを感じていたそう。
みんなが認める(?)ような、光莉のような壮絶な介護はしてはいない。でもケアには様々な形がある。
その苦しさは誰かが決めるものではない。
よし、自分で語ろう!そして自分で癒そう!
そう思ったそう。
私は難病に絶望することも、介護に疲れて人生を投げたしたくなったこともないから わからないけど でも、光莉の母親も 父親も どちらの行動も理解できん!! ってこれも、外野の勝手な思いかな。
Posted by ブクログ
ナラティブ、ストーリーと物語、自分の物語を自分自身で書くこと。大人になった主人公の言葉どおり「大人たちが逃げたから、逃げる選択肢のないたった10歳の子どもの自分が背負うしかなかった」のであり、冒頭の事件につながってしまった。
でも大人だから正しい行動ができる、なんて幻想だもんな。みんながみんな、いつでも、正しい行動ができるとは限らない、と大人の私は知っている。そしてそれはたぶんそのまま「逃げる」という選択肢につながる。それを持っている大人と、そうでない子どもの違いって本当に大きい。
この本を私が「当事者の作者が語る本だから(だから読む価値がある)」と、すでにフィルターをかけて見ようとする私がいる。でもそうやって出版されているからこそ手に取ったのだから、それもまた私の出会い方、見方、受け取り方。これからの私の力となり、考えを深めてくれ、私の周りの世界を少しでも照らせるように、この読書体験を思い出したいと思う。
Posted by ブクログ
母が難病になり、父が出て行ってから10歳だった光莉は、学校にもほとんど通わずにひとりで母を介護してきた。
光莉が、母の首吊り自殺を幇助した疑いで逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けてしまう。
拘置所を出た後、叔母に引き取られた光莉は、作家の日比谷と出会い、小説を書くように勧められるが…。
ヤングケアラーは、どうしてもひとりで全てを背負い込んでしまい、身動き取れない状態になってしまう…誰かが気づいて無理にでも力を貸さなければ最悪の結果になってしまうのだが、光莉の場合も犯した罪の後、どうしたらいいかわからない状態になっていたのを見抜いて声を掛けたのが日比谷だった。
彼女もまた書くことで、救われたのではないかと感じた。
同じように光莉にも自らの言葉で書いてほしいと思ったのだろう。
書くことで許されるなら…と思ったのか、書くことで自身が見えてくると思ったのか、それとも母の思いを振り返りたかったのか…
それとも真実を書きたいと思ったからなのか…
介護している頃の話よりもその後の自分の生き方の正解を見つけていくような話に思えた。
Posted by ブクログ
ヤングケアラーの主人公が、10年に渡り介護をしてきた母親の自殺幇助をするという重い話で物語が始まる。ただの暗い話ではなく、そして、無理矢理ハッピーエンドで終える話でもない、読み応えのある小説だった。
Posted by ブクログ
書店で偶然目に留まり、作者の第一作『救われてんじゃねえよ』が記憶に残っていたので購入
読んでよかった
『救わてれんじゃねえよ』の時にも思ったけど、読ませる力がある
作者なりに小説や物語について表現したのが本作だろう
物語ることでの癒し、カウンターとしての物語
今後もこの作者の作品は読みたい
Posted by ブクログ
ヤングケアラーの話。出だしから暗くて、文章もまどろっこしくてなかなか読み進めない。日比谷が登場してからは大分スピード感が出て面白くなってきたけど、やはり文章に馴染めない。
閉鎖的で逃げ場のない状況で「なぜ助けを求めなかったのか」と言われても、「視野が狭かったから」というのはその通りだろうなと。自ら求めていかないと手を差し伸べてもらえない世の中仕組みは果たしてそれでいいのかという気はするけど。
保護司の宮本のような人が、幼い光莉の近くにいたら違う世界線があったのかもと思うと胸が痛む。
小説は書くべきものを持つ人が書ものというのは納得。技術や手法だけじゃないんだよね。
Posted by ブクログ
SL 2026.8.12-2026.8.15
ヤングケアラーというより毒親じゃない?
自分のエゴで娘をがんじがらめに縛り付けていた母の最後の言葉を思い出して許し、ひとつも介護を手伝ってくれなかったわりに光莉を散々責めた叔母とは最後には和解し、10歳の光莉に全てを押し付けて自分だけ新しい家族で幸せになっている父親を探し出しても一度会って満足し。
日比谷ともつながっているようないないような関係で、それも受け入れて。
ラストは前を向けるようになっているけど、10歳からの光莉にまわりの大人たちは皆んな謝れ!と思った。
Posted by ブクログ
若い注目の書き手さんということで読んでみました。うん、帯に窪美澄さんがコメント寄せるのも納得。あまりにも壮絶な主人公の境遇が、読んでいてつらく苦しいけど惹き込まれて一気読みでした。主人公のこれからの人生が少しでも良いものになるようにと祈らずにはいられない。