あらすじ
生まれるより先に死んでしまった子に名前などつけてはいけない――なにげない日常の隙間に口を開けている闇。それを偶然、覗いてしまった人々のとまどいと恐怖。日本の土俗的な物語に宿る残酷と悲しみが、現代に甦る。闇、前世、道理、因果。近づいてくる身の粟立つような恐怖と、包み込む慈愛の光。時空を超え女たちの命を描ききる。泉鏡花文学賞受賞の傑作短篇集。連続ドラマ原作。
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Posted by ブクログ
ホラー短編集のようでいて、独特の情緒が溢れている作品集。
表題『かなたの子』は失った子を追い求める女の柔らかな狂気が描かれていますが、どの物語にも生死の微妙な境目のようなものが根底にあるようです。
少しずつ狂っていく人々が淡々と描かれているから怖い。
どのタイミングで世界がズレたのかが分からないのが怖いのです。
静かに消されていく真実、心の中から自ら消していく真実。それらは全く消えたのではなく、背後から少しずつ忍び寄ってくる。
その確かな罪の意識に、人々は耐えることができない、そんな物語。
Posted by ブクログ
因習という言葉が、物語の底から響いてくる。
生まれなかった子供に会えるという「くけど」に、向かう女の話し。時代設定が現代だったり、明治~昭和初期のような感じがしたりします。
Posted by ブクログ
他人と他人の輪郭がなくなって孫と子、親、が全て1人の人間、または人類全てで1人の人間であるように感じられる作品たちだった。これは、10年経ったら、感じ方が変わりそうな本。今の私にはまだ咀嚼できていない気がする。1個目の話は、閉所恐怖症でなくてもしんどすぎました。
Posted by ブクログ
出会うべき大事なものを探し求めて彷徨うこと、そしてそれをせずにはいられない本能のようなものを感じた。
生きている自分と、今までに生きて死んでいった数々の命が繋がる。ひとりきりで生きて死ぬのではないのかもしれないと思えてくる。幾度となく繰り返され繋がれてきた命のサイクルの中に、私たちは永遠に生きている。
最後は、あなたを誰も責めはしないと言われているようで、大きく包まれるような安堵を覚えた。