あらすじ
作家になった原点は『アンネの日記』だった
「作家としての原点に『アンネの日記』があるからこそ、わたしは書き続けられるのだと確信している」--小川洋子
「一生の間に、『アンネの日記』と出会えたことは、本当に幸せ」と語る著者が、この本の魅力をあますところなく紹介する。
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\世界中の学校で必読図書/
「これほどリアルな少女の声が胸に響く文学を他に知らない」(著者)
第二次世界大戦下、ユダヤ人の少女アンネが隠れ家で書いた『アンネの日記』は戦後、大ベストセラーとなり「世界記憶遺産」にも認定。
将来への夢、大人への不満、性への憧れなどが綴られたこの本が、なぜ人々の心をそこまで掴むのか。アンネとの出会いが作家になった原点と語る著者が、その魅力に迫る。
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Posted by ブクログ
アンネの日記について、私が過去に読んだ時の記憶が蘇る。苦しい潜伏生活についての記憶よりも、何か常に希望をもちながら生活をしているアンネの心の中の声が、恋する乙女の想いが、不自由なはずなのに凛とした少女の姿が思いだされる。だからこそ最後の結末が最悪なものだったにも関わらず、ヒトラーのユダヤ人迫害を描いた暗く辛い物語としての記憶になっていないのだと気付かされた。
父としての視点から見たとき、また自分への戒めとしても誕生日に父オットーからアンネにプレゼントされた詩が印象にのこる。
一ここではいちばん年若だが、おまえはもう幼児ではない、しかし人生はきびしいだろう、われわれ年長者が周囲から、あれこれおまえに指図しようとするからね。
自分の欠点は小さく見えるものだ、だから他人の欠点は批判しやすい、他人のそれは二倍にも大きくみえるものだから。どうかわれわれを、おまえの両親を、広い心で見てほしい、これでもおまえを公平に、共感をもって判断しようとしているのだから。(1943年6月13日の日記)
日記から読み取るアンネの成長や葛藤を伝える小川洋子の綺麗な文体による解説が素晴らしい。小川ファンになりそう。
辛く暗い物語になっていないとはいえ、学ぶべきは日常の暮らしが一瞬にして奪われるのが戦争であること。戦争は抽象的な数でなく、1人1人のおもてにあらわれない日記を奪うということ。
東浩紀の「平和と愚かさ」にもあった「抽象化と数値化の暴力」の記述を思い出す。無数の人々が、集団的に、匿名的にゴミのように殺された。ドイツのホロコーストにせよ、日本の731部隊にせよ、、20世紀の大量死の本質は、犠牲者を数に還元し、その生と死から名前と意味を奪うことにある。それゆえ、その記録においてはまず名前(固有性)の回復が重要になる。
まさに、「アンネの日記」は数の暴力に対して意味の回復で抵抗する書物。「世界記憶遺産」たる所以。