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Posted by ブクログ
現代でも様々な作品で登場するアテネやゼウス、ポセイドンなどの神話世界の人物や、セイレーン、サイクロップス、スキュラなどの怪物が紀元前の世界ではどのように扱われているかを知れる。
物語の展開力も凄い。どんどん気になってページが進む。紀元前の時代の作品だと少しなめていた自分が愚かだった。
上巻では苦難が続く話がメインで、後半での逆転劇に期待してしまう。
Posted by ブクログ
『イリアス』と並ぶホメロスの大叙事詩。上巻ではテレマコスの旅立ちからオデュッセウスの漂流譚まで(第一歌~第十二歌)を収録する。
本筋であるオデュッセウスの漂流譚だけでなく、「ヘパイストスによるアレス・アプロディテ捕縛」等といったギリシャ神話の有名なエピソードも収められている為、神話好きにもそれ以外の人にも楽しめる。ただ、一般的な小説の文体とは違う叙事詩の文体や、漂流譚に入るまでに長い前半部がある事から、読み通すのは少し苦痛かもしれない。
ちなみに、最も印象に残ったのは第十一歌、生きながら冥府へ下ったオデュッセウスが母アンティクレイアと対話する場面。「わたしの甘美の命を奪ったのは奪ったのは他でもない、名も高きオデュッセウスよ、そなたの明知、そなたの孝心を偲びつつ、帰って来ぬそなたを待ち侘びる辛い気持ちだったのだよ。」(p286)この言葉を聞いたオデュッセウスが母を掻き抱こうとするも、亡霊である母を抱く事は叶わない。あまりにも哀しい。
Posted by ブクログ
非常に精巧な叙事詩です。
そして何より、古代ギリシア文明の時点で文学作品が果たすべき課題が完遂されていることが分かります。ニーチェが『悲劇の誕生』にてギリシアの時代に立ち返るべきと主張したのは、ゲーテの古典復興の理念に通じるものがありますし、ギリシア文明に完成した明確な美的基準がルネサンスにおける芸術復興の兆しともなったのです。
ホメロスが『オデュッセイア』で成したことは、古典の価値観の成立でもあり、数々のギリシア神話を叙事詩に集成したことです。ちょうど『旧約聖書』が数ある記述を用いて書かれたように、ホメロスを通してギリシア神話が集成されたと結論づけられます。
ギリシアの叙事詩は常に新しく、また精緻に造られています。聖書同様、常に手元に置いて読み返すことが習慣になると、レオナルドを繰り返し鑑賞するとき、あるいは黒澤明を鑑賞するときと同じく無限と無数の味わいが広がることでしょう。
「古典」について知りたい場合はシェイクスピアももちろんなのですが、それ以前のホメロス、あるいはギリシア悲劇をご覧になってはいかがでしょうか。
Posted by ブクログ
血なまぐさい戦争英雄譚だった「イリアス」とはうってかわって、戦後のオデュッセウスが散々苦労して国へ帰る冒険譚。様々な民族や怪物、海の難所を超えて最終的に部下たち全員と船を失うことになるまでを語っている。イリアスはひたすら英雄たちが戦いあって臓物やら脳、脳髄やら飛び散りまくっていたが、こちらではそういった現実的なグロ描写はかなり抑えられてファンタジー的な趣が強い。もともと神たちが人間に話しかけ、力を貸したり罰したりという世界観がベースにあるから、ファンタジーな怪物もそんなに違和感なく地続きに受け止められているのだろうか。
オデュッセウスが知恵や工夫で怪物たちに立ち向かうのも面白いのだが、長年に渡って主不在の実家を荒らしている求婚者たちにどう落とし前をつけさせるのかとか、今後同時並行している息子テレマコスの旅で青年の成長が見られそうなので下巻が楽しみ。