【感想・ネタバレ】大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

<概要>

『知的複眼思考法』で有名な(少なくとも個人的には…)苅谷剛彦氏の著書。
日本に特有な「大衆教育社会」が成立した経緯及び生み出される問題、隠されている問題を検討する。「大衆教育社会」の特徴は以下の三つである。
①教育が量的に十分供給されており、国民に広く行きわたっている。
②学校における成績によってエリートが選抜され、エリートがその後の人生において非エリートに対する相対的な優位に立てることが社会的にある程度認められており(メリトクラシーの大衆化)
③エリート層はあくまで「学歴エリート」であり、独自の文化を持たず大衆に基盤を置いている。

まず日本における教育機会に関する検討が行われる。戦後に関しては親の経済力が子供の教育機会に如実に表れる傾向があった。経済成長を経てこの傾向が希薄化された後も、親の階層(学歴・職業)によって子どもの教育機会は強い影響を受けたが、この相関関係は大きな社会問題としては取り上げられなかった。
この要因として筆者は、以下の二つを指摘する。
第一に国民に根付いた学歴社会観であり、「誰でも学校で成功すれば成り上がることができる」と思われたために、学校教育が階層に関して中立的とみなされたことである。
第二に、生徒の受ける差別感をなくすために日教組が唱えた「能力平等論」であり、これは学力差を(出身階層にも由来する)能力差としては見ず、高い学力を努力の成果だと捉えるものである。
しかしこのように形成された「大衆教育社会」も近年(本書の出版は95年)揺らぎ始め、教育に全てを求めるのではなく教育に「できないこと」を検討すべきである。

<所感>

極めて雑な概要でまとめてごめんなさい。所感は以下の三つ。
①能力の平等を日教組が主張したことが、表面的な平等感を作り出し社会階層と教育機会の問題を隠蔽した、という部分の議論展開は面白かった。理想理念が日教組にとってより深刻で重大そうな問題を隠蔽したと。

②エリート層と非エリート層の間に文化的・精神的な隔絶がないことが労使協調に寄与した、というのは興味深く、新しい観点を得られた。

③大学に進学した際のことを回顧すると周りの友人の出身社会階層がかなり限定されていたことが思い出される。多くの友人は、親が有名企業勤務のサラリーマンだったり、公務員だったりする場合が多くて、ブルーカラーが少なかったため、個人的な経験からも筆者の主張は実感できる。
加えて地方格差が酷いと受験期には思っていたので、筆者の議論に何か付け足すとしたらその辺かと。

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2012年12月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
本書は、欧米との比較もまじえ、教育が社会の形成にどのような影響を与えたかを分析する。

[ 目次 ]
第1章 大衆教育社会のどこが問題か
第2章 消えた階層問題
第3章 「階層と教育」問題の底流
第4章 大衆教育社会と学歴主義
第5章 「能力主義的差別教育」のパラドクス
終章 大衆教育社会のゆらぎ

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年03月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

現在の大衆社会的な教育がいかにしてできたのか。
日本の戦後の社会の流れ、日本の特徴について、多数の学術的データも使いつつ、述べたもの。
おもしろい本ではあるが、さすがに15年以上経ってしまうと少し古いのではと感じてしまう。

今や過去のものとなりつつあるが、日本の教育の問題点について、深く考察を行いしるしている。どの子も同じように平等な機会をとしたばかりに多様性を打ち消す方向にそれが表れてしまった。
としている。

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2011年11月03日

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