【感想・ネタバレ】空の地経学戦略 日本の経済安全保障と航空サプライチェーンのレビュー

あらすじ

「空を制する者は、世界を制す」――。

現代社会に不可欠な半導体とその製造装置、
ノートPCやスマートフォン、医薬品・ワクチンなど貴重な戦略物資は、
どれも航空機で運ばれている。
そしていま、地政学リスクの高まりによって、空の覇権争いは激しさを増している。
本書は、世界の「空のつながり」を、複雑ネットワーク分析の手法を用いて可視化し、
地政学と経済安全保障を掛け合わせた「地経学」の視点から、
アメリカ、中国、ヨーロッパ、ロシア、インド、中東、ASEAN、中南米諸国など
主要各国の動向を解説する。

「陸」と「海」が中心だった防衛・安全保障の議論に新たな視座を導入し、
政策決定者、企業経営層から注目される最新研究を書籍化。
航空機・航空管制の発達の歴史や、知られざる航空輸送システムの全貌も解説する。

【目次】
プロローグ
第1章 空の地経学とは――空の覇権が経済を動かす
・エアパワーから見る日本の防衛・安全保障
・航空輸送と経済安全保障

第2章 知られざる空の舞台裏――航空輸送システムの全貌
・航空輸送の成り立ち
・空の交通整理と空港のキャパシティ
・航空機はどのように飛ばすのか
・「空の安全」が脅かされるとどうなるのか

第3章 「空のネットワーク」を読み解く――米・中・日の戦略構造
・2019年から2023年にかけて何があったのか
・航空ネットワークから見る国際構造の変化
・台湾有事の空をシミュレーションする

第4章 多極化する空の秩序
・再編される空の中核――欧州・中東・ASEAN
・浮上する新たな国々――航空ネットワークの新地図

第5章 航空サプライチェーンを強靭化する国家・企業戦略
・日本の航空サプライチェーンの課題は何か
・航空力で日本を強くする――経済と国家安全保障の未来図
エピローグ/あとがき
資料編
用語集/空港重要度の比較ランキング/参考文献

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Posted by ブクログ

航空業界の本というと、運航や空港、航空会社の経営など個別テーマを扱うものが多いが、本書はそれらを超えて、「航空ネットワークが国際政治・経済安全保障・産業競争力にどのような影響を与えるのか」という視点から体系的に論じている点が新鮮だった。

ウクライナ情勢や国際情勢の変化によって世界の航空ネットワークがどのように変化し、その結果として各国・各空港の役割がどう変わっているのかが、データやネットワーク分析を交えて分かりやすく説明されている。単なる時事解説ではなく、長期的な視点から航空政策を考える材料を与えてくれる。

専門書としての内容は充実しているが、文章は平易で読みやすく、航空関係者だけでなく、経済安全保障やインフラ政策に関心のある読者にもおすすめできる。

「空」を国家戦略の視点からここまで体系的に論じた日本語の書籍は非常に少なく、航空の見方が変わる一冊だった。航空業界に携わる人はもちろん、政策立案や社会インフラに関心のある方にもぜひ読んでほしい。

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2026年08月06日

Posted by ブクログ

空からみた地経学、という新たな視点の一冊。
筆者の専門とする航空ネットワークの解析から、コロナ禍前後の航空ネットワークの盛衰が明らかになる。中東勢の台頭やコロナ禍をきっかけとした欧州大空港の凋落、しかしながらその欧州の中でもヒースローが勢いを取り戻している姿がそれぞれ興味深い。
またコロナ禍にも関わらず、ウクライナ戦争勃発直前にロシア航空ネットワークが一時的に繁栄したのをデータから明らかにしているが、これは危機を予見するという意味からも大変貴重な教訓を含んでいるのではないか。
惜しむべくは、ネットワークの解析から明らかになった事象に対し、安全保障や国際政治、経済学といった視点からの考察をより踏み込んで行っていれば、さらに地経学としての深みが出たのではないだろうか。
例えば、
◯欧州大空港凋落の原因はシェアの食い合いとし、EUの合意形成の遅さと戦略不在を挙げていたが、では具体的にEUを離脱した英国の国家戦略がEUのそれと具体的にどのように違ったのか。それを踏まえ我が国はどのような戦略を持つべきなのか。
◯台湾有事の際は「仁川」が日本の出入り口になる、というが紛争の烈度が低ければ(台北FIRが閉鎖されただけなら)回避経路で対応できないのだろうか。また逆に米軍が介入するような高烈度の紛争になってしまったら、東アジアの空全体が動きを止めてしまうのではないか。
◯羽田国際化により成田からの撤退が相次ぎ、ネットワークとして貨客の動きが分離してしまったことにより結節点としての日本の航空力の地位低下がある。では、羽田成田の両首都圏空港はあるべく「強靭な」ネットワークにおいてどのような関係性であるべきなのか。また本邦航空会社はそこにどのような経済合理性を見出すべきなのだろうか。
もちろんこれは筆者一人の力で解決するべき問題ではなく、我が国が多様な知恵を集めながら形成すべき国家戦略なのだろう。
その礎となるべく、これからはぜひ他分野の知見も巻き込みながら、我が国で空の地経学が発展していってもらいたい。本書がその端緒となることを願う。

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2026年09月17日

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