【感想・ネタバレ】東アジア経済戦略 : 文明の中の経済という視点からのレビュー

あらすじ

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ベトナム、ラオス支援に深く関わる日本のアジア学研究の泰斗が描き出す日本のアジア支援の道筋。「正義は常に我にあり」と信じ込むアメリカ・中国という二大文明の狭間で、日本はどのように振る舞うべきか。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

本書は、アメリカナイズドされた新古典派経済学に対して、日本自体の文明の復権をすることによってその地位を保つべきだと論じたものである。

筆者によれば地域には地域ごとのインフォーマルな文化・慣習がそれらを形成する土台になっている。このようなインフォーマルなものは世界共通ではありえない。従って、「市場経済」という画一的イデオロギーでもって、世界を一つに統合することはできないのである。経済の効率化には人間の組織化が必要だ。だが、その組織化には地域ごとの慣習や文化という影響が非常に強い。このように考えると、確かに市場経済イデオロギーは世界を統一できないという筆者の主張は正当性をもっているといえる。

このようなインフォーマルな文化・慣習はやがて文明として顕在化してくる。筆者によれば上記で述べたような市場経済イデオロギーは、アメリカによる「個人主義的・マニフェスト的思想」に支えられているものである。また、中国を例にとってもこの議論が可能であろう。例えば多くの多国籍企業は中国に対して、WTOレジームへの本格的参入を求めている。なぜなら、近代法に基づいた所有権の確立は、安定した企業活動に不可欠だからである。しかしながら、このような考え方は所詮「法」といった単純化された観点からしか中国を俯瞰していない点で不十分である。中国にはヒトとヒトのネットワークの中に埋め込まれた信頼関係が経済の基盤になっているため、上記のような市場経済イデオロギーのみで中国を判断するのは尚早であるというのが筆者の主張である。

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2012年01月17日

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