あらすじ
私は「さようならアルルカン」と書いて、真琴のくつ箱にそっと入れた。小学六年の時から、ずっと見つめてきた彼女は、今やジョークを言い、皆を笑わせ、自らにnot to beを命ずる道化師(アルルカン)になっていた。アウトサイダーであった真琴。他人のぬれぎぬを我が事のように怒った真琴。私の憧れは裏切られ、もはや私の知っている真琴ではなくなっていた。真琴の変化は、果たして成長なのだろうか。 【目次】さようならアルルカン/アリスに接吻を/妹/誘惑は赤いバラ/あとがき――連想風に――
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Posted by ブクログ
何度読んでも打ちのめされる。特に表題作「さようならアルルカン」と「妹」は私にとって痛いほどの真実。そして自分の幼児性と立ち向かわざるを得なくなる「アリスに接吻を」と「誘惑は赤いバラ」も珠玉。主人公を"あなた"とする文章を初めて読んだ。
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実家の片付けをしていたら氷室冴子作品をゴッソリ発掘。
四半世紀ぶりに再読してみました。
初版は昭和54(1979)年!40年も前とは。。
最初期の四短編を収録。表題作は作者が大学3年時に書いた「小説ジュニア(雑誌コバルトの前身)」の公募作品。
表題作は自意識過剰で、周囲に持て余されがちな文化系少女たちの葛藤と矜持を描く。
二篇目「アリスに接吻を」は14歳という、大人でも子どもでもない年代の少女心理を、珍しい二人称で描いた作品。語り手は大人になった本人かな?
三篇目「妹」は、母を亡くし、歌人の父、美しい姉と暮らす少女の物語。古式ゆかしい少女小説の佇まい。妹属性へのこだわりは氷室作品の重要なファクターですね。
ラスト「誘惑は赤いバラ」は、中高一貫校に通う少女が主人公。異性よりも親友との時間が大切、それでも異性は気になって、、みたいなテンポの良い語り口で展開される物語。
内省的な前三作と比べると、元気なストーリーで、後々の「白書」シリーズや「雑居時代」に繋がっていく感じ。
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高校生の時に読みました。
表題作と「妹」は厳しく、せつないストーリーでした。
特に「妹」はきつくて、涙なしには読めなかった記憶があります。願っても願っても愛を与えられず、すれ違う……。
このあたりの描写は、同作者の「シンデレラ迷宮」や「ヤマトタケル」と共通するものを感じます。特に救いのなさに関しては、「ヤマトタケル」の方が共通項が多いかな?
「妹」は印象強い話でしたし、何度も読み返したので、本を手放した今もストーリーはしっかりと覚えています。表題作よりも、私はこちらが好きでした。
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表題作の、ぐさぐさくるやりとりがたまりません。
正反対のようで、お互いを分かっている、というとこがツボ。これ一本で長編書いてくれても…、似たような作品はあるのでしょうか。
Posted by ブクログ
1977年、第10回「小説ジュニア」青春小説新人賞佳作入選作。
「さようならアルルカン」
ラノベの片鱗はちっともなく、少女向けの純文系。
まわりの人とあわせるために道化役(アルルカン)の仮面をつけてしまう女の子二人の話。
そうなの。
女の子って、どこか自分を演じてる、ってとこあるよね。(のりピーはいきすぎとして)
それも大人になっていく過程で。とても無理をしている形で。
それを楽に、自然体になっていけば、立派な大人ってとこかな。
繊細な少女の心を描いた、素晴らしい作品。
「アリスに接吻を」
鏡に見とれる女の子。子どもから大人への体の変化、心の変化。
自分が子どもと見られるもどかしさ。かといって大人になるのも不安。
親せきのお姉さんは結婚し、クラスメートは教室でキスをして。
自分は、兄の友達からからかわれている、という状態。
すごいね。こういうことってあるよね。
「妹」
これは、、、すごいダークでした。
なんか救いがなくて、氷室先生もコメントに困ったのか、あとがきでも触れておらず。。。
姉に対する屈折した気持ち、父からの愛情がないと思ってしまう気持ち。
これも、多少なりともあるよね。少女視点の家族の物語。
「誘惑は赤いバラ」
幼なじみの女の子同士が仲良すぎて、自立したほうがいいんじゃないか?って話。
男の子と付き合うのはしんどくて、女の子同士のほうが気楽で楽しいよね、でもそれじゃ大人になれないんじゃないか?ってこと。
無理矢理お酒を飲んだり、男の子と付き合ったりする、友達の女の子がよかった。
高校生のBFの試合を見に行って、お姉さんたちにからかわれてシュンとなるところも。
みずみずしい青春だなあ。
Posted by ブクログ
氷室先生の作品は結構読んでるのに、これは未読だった。なんで、今まで出会えてなかったんだろう、と後悔。4編を収録した、初期の短編集。どの物語も、「少女」というものの本質を鋭く突いている、と思う。書かれてから30年近く時が流れているけれど、古さはない。