あらすじ
母を亡くした岸本聡里は、父の再婚相手とうまくいかず不登校になっていたところを、祖母・チドリに引き取られた。ずっとかわいがっていた犬や、祖母の家のペットたちとのふれあいから、少しずつ生きる気力を取り戻し、獣医師を目指すようになる。北海道の大学に入学し、「動物を診る」ことの厳しさにくじけそうになる聡里を励ましてくれたのは、友人たちや、動物たちだった――。少女が大きく成長していく姿を描いた感動作!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ステップファミリーで不登校、ネグレクト状態の少女が、祖母に助け出される。その状態からは考えられないけれども、努力して諦めないで、、でも逃げたりもするけれど、獣医師になるまでのストーリー。涙なくして読めません。
人間を診る医師よりも、獣医師の方が、動物の数だけ学ぶことがあって、伴侶動物、産業動物等、飼い方?によっても考え方が違う。難しいし、奥が深いと感心しきり。そんな獣医師の世界が垣間見れたことも面白かったです。
Posted by ブクログ
心が揺さぶられる大変優れた小説でした。
物語は主人公の聡里(さとり)が獣医学を学ぶために北海道の大学に、付き添いの祖母と共に到着する場面から始まります。
山場は入学して間もなく訪れます。
聡里は入寮してすぐに、同室者の綾華から、理由もわからないまま嫌われていることに気づきました。
ある日、そのことで二人は対峙し、聡里は自分が嫌われる理由を知ることになります。けれど、その理由となった「ある物」に、これまで誰にも語ることのなかった、他人には計り知れぬ背景があることが聡里の口から説明されます。
ここで私たち読者は、孤独で凄惨な時期を過ごしてきた、聡里の人生の一端を知ることになります。
そしてそのことを知った綾華の態度がここから一変し、聡里との友情が育まれてゆき、お互いの存在が大学生活の大切なものとなっていきます。
聡里の大学生活は、学業の厳しさと経済的な制約もあり、決して華やかなものではなく、登場人物もかなり限られているせいか、ある意味淡々としています。
けれど、胸が締め付けられ涙があふれる場面が何度かあり、いつの間にか聡里に感情移入していました。
この物語を通じて自分のことを本当に思ってくれる人の存在がどれだけ生きる力になるのか、人と交わり他人の人生の歩みや考え方を知ることがどれだけ自分の生き方に彩を与え、心を育ててくれるかを知らされました。
そして今の自分の悩み苦しみも、聡里に比べたら大したことないと思うし、聡里のように心優しい人間でいたいと思わされました。
残雪君という鳥好きの同級生が教えてくれたいくつかのこともおもしろかったです。
「鳥は羽の模様で互いを見分けている。空を飛びながら自分と同種の羽の模様を見分けてつがいになる」ということ。
真偽のほどはわかりませんが、人間もそうやって惹かれあっているのかもしれないなと思いました。
偶然ですが、聡里が学んだ実在する大学には、私の周囲に縁の深い人が多く、個人的に思い入れがあります。
私自身は遠くはなれた場所に暮らしていますが、小説の中に出てくる江別、野幌といった場所には何度か訪れたことがあり、親しみがあります。
青春時代の一端を織りなす場所ともいえる場所です。
そういう意味でも、読んでよかったなあと思う小説でした。
Posted by ブクログ
◼️ 藤岡陽子「リラの花咲くけものみち」
ドラマシーズン2あるそうで嬉しい。獣医を目指す女性・聡里の北海道での奮闘・成長。
藤岡陽子氏は「手のひらの音符」が少しチクチクする感触だったのでやや暗い物語を書く人なのかも、というイメージがあった。ドラマを先に観て、SNSのやりとりでお互い「ドラマを観て椋鳩十「大造じいさんとガン」という作品が残雪という登場人物の名前の由来になっているから読んでみた、という話で盛り上がり、原作もぜひ読んで、と薦められていた。帯でドラマのシーズン2があると知り、楽しみにしている。
岸本聡里は小学生の頃実の母親を亡くし、継母が愛犬を嫌い処分するのを恐れて不登校に。15歳で祖母チドリの家に引き取られる。祖母の勧めで北海道・江別にある北農大の獣医学部に進学する。憧れを実らせた形だったが、実習期間の馬の出産で母馬を救うためのショッキングな措置にパニックを起こし、大学をやめる気持ちで東京のチドリのもとへ帰ってしまうー。
聡里は山田杏奈、最初はソリが合わなかったが後に親友となる綾華に當真あみ、同期で鳥の研究に入れ込む残雪が萩原利久、先輩で初恋の人・一馬は佐藤寛太、その恋人に石橋静河、チドリは風吹ジュン。それぞれ想像しながら読んだ。北の大地に若く爽やかなキャストは好感度大。
正直を言うと・・主人公の不幸な家庭環境、というのは最近の小説で多いなあ、軽いなあという感覚を持っている。しかし重要な意味を持つチドリとの関係性は、優しさと厳しさが相まって微笑ましく、そして哀しく、リアルさもある。
北海道の、本州とはまったく違った土地柄と、牛や馬などの大動物を育てる農家の環境、伴侶動物とされるペットへの人間の接し方を丹念に描き、その中で成長していく聡里。様々な考え方や態度、立場が盛り込まれている。知的好奇心が刺激され、思い入れも入り、北への憧れもあり、読み込んでしまう。
説得力のあるベースを積み重ねていて、主人公が自分の道を定める場面では、分かっていたけどやっぱり感動した。チドリや綾華、残雪ら心を許せる友人たちとの会話も軽妙でいて温かく、各シーンも絵が浮かぶように書かれてもいて、工夫を感じる。
口数も少なく、引っ込み思案、頼りなかった聡里の、本当の意味での"巣立ち"。読む大人はアオハル時代の自分を回顧し、大人への階段を昇る自分の姿、将来へ踏み出した時のことを思い出すのか。北の大地への憧れと、動物たちの息吹、生きる熱と死、溌剌とした若者たち。多くの要素が魅力的な小説世界を組み上げている。
ラスト、6年後のエピローグ。読後感が良い。ドラマは原作から少し飛躍しているようだが、それでも楽しみだ。小説も2をぜひ書いてほしい。