あらすじ
母を亡くした岸本聡里は、父の再婚相手とうまくいかず不登校になっていたところを、祖母・チドリに引き取られた。ずっとかわいがっていた犬や、祖母の家のペットたちとのふれあいから、少しずつ生きる気力を取り戻し、獣医師を目指すようになる。北海道の大学に入学し、「動物を診る」ことの厳しさにくじけそうになる聡里を励ましてくれたのは、友人たちや、動物たちだった――。少女が大きく成長していく姿を描いた感動作!
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Posted by ブクログ
心が揺さぶられる大変優れた小説でした。
物語は主人公の聡里(さとり)が獣医学を学ぶために北海道の大学に、付き添いの祖母と共に到着する場面から始まります。
山場は入学して間もなく訪れます。
聡里は入寮してすぐに、同室者の綾華から、理由もわからないまま嫌われていることに気づきました。
ある日、そのことで二人は対峙し、聡里は自分が嫌われる理由を知ることになります。けれど、その理由となった「ある物」に、これまで誰にも語ることのなかった、他人には計り知れぬ背景があることが聡里の口から説明されます。
ここで私たち読者は、孤独で凄惨な時期を過ごしてきた、聡里の人生の一端を知ることになります。
そしてそのことを知った綾華の態度がここから一変し、聡里との友情が育まれてゆき、お互いの存在が大学生活の大切なものとなっていきます。
聡里の大学生活は、学業の厳しさと経済的な制約もあり、決して華やかなものではなく、登場人物もかなり限られているせいか、ある意味淡々としています。
けれど、私の胸が締め付けられ涙があふれる場面が何度かあり、聡里に感情移入している自分に気づきます。
この物語を通じて自分のことを本当に思ってくれる人の存在がどれだけ生きる力になるのか、人と交わり他人の人生の歩みや考え方を知ることがどれだけ自分の生き方に彩を与え、心を育ててくれるかを知らされました。
そして今の自分の悩み苦しみも、聡里に比べたら大したことないと思うし、聡里のように心優しい人間でいたいと思わされました。
偶然ですが、聡里が学んだ大学には、私の家族や友人に縁が深く、個人的に思い入れがあります。
あの人は、こういう環境で学んでいたんだなあ、とかね。
私自身は住んだことはありませんし、遠くはなれた場所に暮らしていますが、何度か訪れた江別、野幌といった地名は親しみがあり、青春時代の一端を織りなす場所でもあります。
そういう意味でも、読んでよかったなあと思う小説でした。