あらすじ
いま25~35歳の世代は、戦後最長の不況期に社会人となり、正社員になれなかった人も多い。最底辺の労働者として、あるいは時代の先駆者として、新たな生き方を模索する彼らを「ロストジェネレーション」と名付け、現状や本音、将来像、社会への影響に迫る。朝日新聞連載をもとに再構成し、大幅加筆。彼らの行く末が、日本社会の運命を決める。
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Posted by ブクログ
はやりの格差社会論を世代を軸にした切り口でみせようという試みだが、成功・失敗が相半ばしているように思う。
成功しているところとしては、従来の格差社会論にありがちな中流・下流や正社員・非正規といった不毛な階級間闘争にいたずらに陥ることを回避できている点。また就職氷河期にたまたま遭遇してしまった、という誰の目にも明らかな事実を議論の起点とすることで、「格差は本当にあるのか」等という冗長な議論をかすませることができている点。
失敗していると感じるのは、「IT起業家」や「脱官僚エリート」から所謂ワーキングプア層まで満遍なく取り上げることで逆に「ロスト・ジェネレーション」という世代の核がぼやけてしまっている点。一部の起業家や社会的企業・NPOなどに関わる人たちをモデルに、「失われた十年に翻弄されることで国家や社会等に依存することなく、自分自身のみを頼みとして生きることを選択した世代」などとする安直な「括り」はひたすらうそ臭く感じてしまう。様々な日本社会の変動はあるにせよ、「ロスト・ジェネレーション」の中でも最大のボリュームゾーンはいまだ所謂「正社員」層であることに違いは無いのだ。
世代論としてはそうしたポジティブな価値を打ち出したい気持ちはわかるが、いかにも朝日のエリート記者が優等生的にまとめた「作文」という印象が強く、どうにも実感が沸かないのである。