【感想・ネタバレ】残光のなかで 山田稔作品選のレビュー

あらすじ

ゾラを偲ぶ旅で出会った老文学者の孤独な姿を描いた「残光のなかで」、パリの街とそこで勁くつましく暮らす人々をやさしく見つめる「メルシー」「シネマ支配人」等、フランス滞在に材を求めた作品群に、記憶のあわいの中でゆらめく生の光景を追った「糺の森」「リサ伯母さん」等、8篇を収録。ユーモアとペーソスの滲む澄明な文体で、ひそやかで端正な世界を創り出した山田稔の精選作品集。

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Posted by ブクログ

柔らかく優しい文章で心に沁みる短編8選です。

著者は元京大教授でフランス文学者です。パリには3度都合3年以上滞在し滞在時の小説(散文)の著書が多く出版されて居ります。

この小説は文章が柔らかく読む者にすっと入って来るギラギラした飾り立てのない簡素で優しい調子が全編共に感じられます。

”残光のなかで”:モンマルトルの墓地にゾラの墓を訪ね守衛に墓の場所を尋ねると彼はバカンスに出ているとの粋な返事に著者は愉快で爽快な気分に浸る。

”メルシー”:コーマルタン街のアパートに滞在している間毎朝フランスパンを近所のパン屋へ買いに出掛けるがそこの女将が馴染み客になっているのに挨拶もしてくれない無愛想さに腹を立てる。
たった一言のメルシーを聞きたい為に悶々とする孤独な日本人の気持ち。

”糺の森”:軍需工場でたまたま同じ作業担当となった女性”ネズミ”を思い続けるが終戦と共にそれぞれの生活で音信不通に、再び糺の森で偶然の再会をする。そんな30年以上も前の淡い記憶を50歳になった自分は診療所で治療を受けながら目を閉じネズミを思い出す。

どの編でも時間・場所・人物・風景がはっきりと目に浮かび静かに語りかけてくる作品です。

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2021年05月03日

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