【感想・ネタバレ】告別のレビュー

あらすじ

告別への予感はその時もう生まれていた筈だ。しかしそれはもっと以前に、もっともっと遠い昔に既に生まれていたのかもしれない――異国で識り合った女・マチルダとの深い愛を諦め妻と2人の娘のいる家庭へ戻った上條慎吾。娘・夏子の自殺、上條の死、二つの死は響き合い世界は暗く展かれてゆく。福永武彦の代表的中篇小説「告別」、「形見分け」を併録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

上条慎吾、というひとを追悼するために書いたのかな、と思うけれど、(モデルがいるのかどうかはわからないけど)そのわりには上条の魅力が伝わってこない。
何かを創り出したくて、できなくて、教師や評論をやっている自分を恥じている。異国で知り合った女性に惹かれ、でも家庭を捨てることはできず、どちらも傷つける。
外では、人たらしだったっぽい。

それと、終始、上条の妻のことが悪し様に書かれているのがとても気になる…

オ前ガソノ時本当ニ欲シカッタモノハ何ダロウ。 平和ナノカ、眠リナノカ、タダオ前ヒトリノ孤独ナノカ。
自死した娘に対しての、上條の呼びかけが、じわじわくる。結局は「孤独」についてのはなしなのかな。

「形見分け」の方がおもしろかった。
海辺の洋館、記憶喪失の画家。
画家とふたりで閉じこもることを選んだ「さっちゃん」。
ミステリになりそうな予感が好き。


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2024年02月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

生と死を語るときにもっとも大事なのは、その語り手が何者であるかがはっきりとしていることなのではないかと思う。大切なことほど誰が言っているのかというのは重要視したい。
「告別」においては生と死に関する思考の中心にいる上条慎吾の存在を掴みきれぬまま読み終えた気がする。だからか書かれている言葉と思想に惹かれそうになっても、あと一歩近づけなかった。

小説の構成も独特だ。上条慎吾とその友人の語りが交互になって上条という人間を描くも、時系列がかなり複雑に行き来しているように思えた。
読んでいていちばん感じたのはこの友人がどれだけ上条慎吾の心から遠いかということで、そのこと自体に、人の心には決して近づけず誰しもが孤独を抱えて生きるというメッセージを受け取れはするのだけど、それ以上の意味を本作からは見出せなかった。この友人は作者自身を投影した者か、もしくは上条慎吾のゴーストと仮定して読んでいけば、物語の視え方が変わるだろうか。
作品としては二作品目の「形見分け」を興味深く読んだけれど、「告別」のほうが作者に近づける作品だという気がした。

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2022年06月12日

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