【感想・ネタバレ】百年の憂鬱のレビュー

あらすじ

物書き業のかたわらに週一回、ゲイバーを経営している義明。作家としてはすでに書きたいテーマを書き尽くしてしまった感を覚え、気鬱な日々を過ごしていた彼の前に、弱冠二十歳のハーフの美少年、ユアンが現われる。自分への無垢な好意に、暗い情動を突き動かされる義明。当然のように二人は関係を持つ。突然の僥倖に淫する義明だったが、彼には長年のパートナーがいた。
27年の年の差を埋めるように、すべてを欲しがるユアンと、そんな恋愛感情は長くは続かないことを知っている義明。若者のストレートな純愛と老獪な中年の恋愛は当然激しくぶつかり合う。
「どうやったって過去は手に入れることはできないよ」
「いや、俺は全部欲しい」
お互い傷つけ合い、貪り合うような恋。そしてついに終止符が訪れる──。

「これが男と女だったら、そこまで互いを追いつめたりしない気がするわ」(本文より)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

<あらすじ>
作家業のかたわらゲイバーを経営する義明は、長年のパートナーがいながら、二十歳の美少年ユアンと関係をもつ。義明はユアンの純粋な愛情を狡猾に受け流しながら自らの渇きをいやすが、関係は少しずつ破綻してゆく。

<感想>
野村佐紀子さんによる表紙写真のまっすぐな瞳の少年が、ユアンのイメージに重なる。ゲイの恋愛が描かれている本作だが、生々しい描写は一切なく、恬淡としていて的を射た心理描写でさらりと読める。

恋愛の機微を知り尽くした中年の暗い情欲と、すべてを欲しがる少年の純粋な愛情。どちらにも共感できる。しかし自分は後者寄りの性格なのもあって、義明の老獪さはやっぱり汚いと思える。最後に形勢逆転したとき義明ははじめて恋に落ちたのか、それともようやく恋だと気付いたのか見極めがたいが、恋のまえに無力と化す人間の憐れさと愛おしさに胸がつまった。

タイトルの「百年」は、ゲイコミュニティの先駆者・松川老人が生きた百年でもあろうし、半世紀かけて培った理性が粉砕されて新たな半世紀を迎えようとする義明の百年かもしれない。再読すれば新たな発見がありそうだ。

ところで、本書の奥付には書誌情報に加えて、装丁や組版の情報が記されている。書影はご自由にお使いください、と記載してあるのもうれしい配慮だと思う。

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2013年01月03日

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