【感想・ネタバレ】ふたりの読書会 無期受刑者との本をめぐる往復書簡のレビュー

あらすじ

「こんな私でも参加させていただけるような読書会というものはないでしょうか」.きっかけは,翻訳家の元に届いた一通の手紙.便箋の片隅には,検閲済みであることを示す小さな桜の印.端正な文字でびっしりと綴られた深い悔恨の思いと切実な願いから始まった稀有な‘魂の交流’の記録.『読書会という幸福』の思いがけない後日譚.

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Posted by ブクログ

ネタバレ

2人の表現力、言語化力に飲まれてしまう。そして読書会がしたくなる。そんな本だった。

今もふたりの読書会は続いているとのことで、それはなんだかうれしい。
面会できなかったというのは残念だったが、今後刑務所での読書会がもっと広がり、そこで会えればいいな、と少し希望を抱いている。

前作、『読書会という幸福』は読んだことがなく、後からこの本がその本の後日譚ということを知った。

なんとなく気になって読んでいたのだが、
『・・・・・・「わたしがこれまで人を殺さずにいられたのは、本があったから、そして読書会があったからだと言ってもよいかもしれない」という言葉に私は、その場にたたずみ声が出ませんでした。』
という一文で一気に引き込まれた。

また、私も向井さんと同様に、刑務所についてほとんど無知であった。
・暖房がなく冬は霜焼けができるほど寒い
・「懲罰房」でただひたすら座らせる罰がある
・選挙権がない
などなど。
スケジュールも細かく決められているが、時計も持てない。
なんだか人権ってなんだっけ、と考えさせられることだった。

この本の中で、京アニの放火犯が助けられたことに言及する場面がある。
大矢さんの手紙では、
『・・・・・・その揮発性をどこまで理解していたのだろうか。ガソリン=燃えるではなく、その揮発性を。・・・・・・まさかあんなに大きな火災になるとは思っていなかったのではないだろうか。』
とあり、その視点は全くなかった自分を恥じた。

また向井さんの手紙では、
『・・・・・・そして重傷を負った容疑者が、医師や看護師に対して、こんなにも手厚く治療してもらったこと、リハビリや食事も提供してもらっていることに感謝の気持ちを示した、というのです。・・・・・・彼は助けられて良かったのだ、とこのとき強く思いました。』
とあり、なんだか複雑な気持ちになってしまった。
自分も助かってよかったとは思う。なぜなら助からなかったら動機もわからなかったからだ。
でも、被害者や遺族の気持ちを思うと本当にやりきれないのだ。

たびたび大矢さんや向井さんの家庭環境の悪さが書かれることがある。
特に大矢さんの家庭環境は想像を絶するほどだ。
お父さんが猟銃を向けてきたり、包丁で切りつけてきたり・・・・・・。
そんな家族でも愛情を諦めきれていない面がたまに見え、悲しいし辛くなる。
京アニの犯人も家庭環境が悪いことがほのめかされていた。
一般論になってしまうが、やっぱり家庭環境は今後の予後に大きく影響するのだろう。

MIU404の第2話に、会社の専務を殺害し逃亡を図る犯人の話がある。
そこでも犯人の家庭環境の悪さ、会社でのパワハラなどの背景を知って犯人に同情的になった自分がいた。
MIU404の書かれ方にもあるが、なんなら被害者のほうが悪い印象さえあった。
その印象は少し危険だと感じる。
被害者が悪いような切り取られ方をすることは現実でもある。性加害はとくにそうだ。
被害者加害者両方の背景を知ったうえで、それとは切り離して裁く必要があるのだろう。

一方で、大矢さんは取り調べでそういった背景はほとんど聞かれなかったと書いていた。
ただ、加害者にいくら同情的になったところで犯罪は犯罪だ、と考える自分もいる。
正直、私はまだ被害者よりではある。
ただ、加害者の背景も知らないままより、知ったほうがちゃんと相手も人間なのだ、ということが分かる気がする。

大矢さんからの手紙ではなんども「ここで更生をすることの難しさ」が書かれているが、更生ができずに出所してほしくないし、だからこそ更生に力を入れて欲しいと思った。
ただ、そこに税金を使うことへの難しさや反発も感じてしまう。

話は変わるが、この本でうれしいのはたくさんの本が紹介されていることである。

最後のページに紹介した本や向井さんから大矢さんに送った本のブックリストがあり、読者も一部の本はふたりの読書会に参加できるようになっているのだ。
私もふたりの感想を読んで気になった本がいくつかあり、少しずつ読んでみようと思った。

約3年間手紙のやり取りをしているとのことだが、この本ではその一部の1年分の手紙のやり取りがまとめられている。
続きもぜひ刊行していただき、ふたりの読書会に参加させていただきたいと思った。

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2026年08月09日

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