【感想・ネタバレ】かたちだけの愛のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年05月30日

ありきたりな言い方しかできないけど、ほんとに本当に、読み応えのあるすごい小説です。
「ドーン」も、宇宙開発から米大統領選まで、すごい壮大な話でありながら、最終的には「愛」のストーリーだったことに驚かされたけど、これはタイトルからしてもちろん「愛」の話です。
「愛とは何か」っていう究極の問いから書かれ...続きを読むた小説なのか、分からないけど、お腹に「ずん」と来る読み応えのある場面が随所に出てくる。

事故の場面、事故にあった女優をたすけた主人公の“相良”が、彼女に会いに行く場面、彼女と体を重ねる場面、「魔性の女」と言われた彼女が縁を切れなかったヤクザな男との対決場面・・・。
あと、いい小説は、脇役のキャラが良い。興奮して自分の言うことに「ええ!ええ!」と相槌を打ちながらしゃべる「曾我」、小さなことでも大きなことでも驚きを「マジっすか」で表現する「緒方くん」。義足を作る装具師の「淡谷大三治(あやわだいさんじ)」。

「かたちのない愛」「かたちだけの愛」「愛のかたち」。
相良を導いた女性が言う、「愛にはかたちも大事ですよ。単なる恋とは違うんですから」。
うーん、深い!!!

平野くんは、たまたま小説家になったけど、もしかしたら宇宙飛行士になっても医者になってもデザイナーになっても一流なんじゃないかな、と思った。

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Posted by ブクログ 2016年12月30日

『一日二四時間の中で、人間が考えられることって、三つしかないと思うんです。ー過去のことか、現在のことか、未来のことか。』

『人はなるほど、たまたまそんなふうに誰かを見ることなど出来ないのだろう。彼の中の何かが、そんなふうに彼女を見させていた。』

『私は、人間のへそ曲がりなんだと思いますね。完璧だ...続きを読むって言われると、完璧じゃないところが気になるじゃないですか。』

『人が一緒の時には、相変わらずの他人行儀だったが、二人きりになると、もう敬語は使わなかった。お互いに、声のトーンが少し低くなり、ゆっくり話すようになって、ささやかな笑いの吐息が、電話をしていると、よく耳に触れた。大げさな相槌も、捻り出したような話題も、自然と必要なくなっていった。』

『恋愛とは、よく言った言葉だと彼は思った。好きという感情に前後があるのならば、なるほど、前半は恋で、後半は愛なのだろう。恋が、刹那的に激しく昂ぶって、相手を求める感情だとするならば、愛は、受け容れられた相手との関係を、永く維持するための感情に違いない。』

『愛とは今、相手に配慮を通じて表現されるよりも、無我夢中に自己満足を通じて表現された方が、遥かに信用出来、真実らしいと感じられるのだった。』

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Posted by ブクログ 2016年09月11日

「分人」という単語が直接出てくるわけではないが、2人の人間がいかにして「分人化」するか(関係を深めていくか)というのが主題となっている。
平野作品の中では読みやすい、爽やかなラブストーリー。
2人の肌と肌(指先)が初めて触れ合う瞬間の描写が秀逸。

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Posted by ブクログ 2016年03月21日

平野先生の作品の中では、「決壊」が一番好きだったが、今日から「かたちだけの愛」が一番好きな作品になった。

「決壊」や「葬送」に比べると話のテンポが早く、物語にどんどん引き込まれ1日で読み終えてしまった。

こんなに美しい小説を読んだことが無い と感じる程、文章が美しい。

「あわや だいさんじ」登...続きを読む場の度にクスっと笑ってしまった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2013年10月03日

 約1年前に、新書「私とは何か」を手にとって以来、ようやく分人小説4部作を読み切った。文庫化を心待ちにしていたこの作品のテーマは、ずばり分人と愛。事故で足を切断した女優と、義肢のデザイナーによる恋愛っていうと、ちょっとアルモドバルのトークトゥハーを連想して「献身」がテーマなのかと先入観を持ったのだが...続きを読む、さすがに平野文学は圧倒的なリアリティー。
 刹那に宿る「恋」を花だとすれば、関係の維持に努める「愛」は果実であり、その狭間にあるセックスは、花が果実になるための季節の変わり目のようなものだという。愛は利他だけでなく利己が必要であり、利己の塊のような存在である三笠を通して相良は、完全な献身にも愛はなく、愛には献身と身勝手という両義的な価値が必要であることを気付く。谷崎の陰翳礼賛を引用し、光と影の絶え間ない反転こそが人間の関係性の本質であると。

 僕は、ずっと分人主義的な考えでは、同時にいろいろな人を愛することを肯定してしまうのではないかと疑問だったのだが、それにもしっかりと答えを出してくれる。愛とは、相手の存在が自らを愛させてくれることだからだ。だから、一生をかけて一人の人を愛し続けるということは、一回しかない自分の人生を一生かけて愛し続けることに他ならないのだ。

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Posted by ブクログ 2013年09月25日

芥川賞作家・平野啓一郎氏による初めての恋愛小説です。『日蝕』や『葬送』などの重厚な作品を書くというイメージが強い方だったので、最初は正直面食らいました。

この記事を書く際にはじめて知ったのですが、この本は平野啓一郎氏にとって初めての恋愛小説だったのですね。物語は交通事故によって左足を切断するという...続きを読む重傷を負った『美脚の女王』の異名をとる女優の叶世久美子と、離婚を経験し、デザイナーとしての仕事は順調なものの、心にどこか空白の部分を持ったデザイナーの相良郁哉が中心となって物語が進んでいきます。

さいしょは作中にちりばめられているiPod nanoやWikipediaやグーグルやユーチューブというまさに現代を象徴するキーワードに正直面食らいましたが、この作家は古典を多く描いてきて、つい最近もオスカー・ワイルドの「サロメ」を彼が翻訳を書いているはずなのにこのシフトチェンジはすごいなとさえ思いました。で、話を戻すと、映像化は困難ですが、山あり谷ありの王道的な恋愛小説で、最後まで一気に読み終えてしまいました。

相良と叶世の二人の展開も魅力的ですが脇を固める人間もまた個性的なキャラクターが多くて、相良の母親のような役どころを演じる原田紫づ香と叶世のマネージャーを務める曾我もまた、人間味のあふれるキャラクターで、特にマネージャーで彼女が所属する事務所の社長である曾我には叶世久美子を育てる、という身のささげ方には
『こういう生き方もあるのか!!』
という驚きがありました。

義足が完成して、叶世と相良はファッションショーに赴く、というのがこの作品のハイライトですが、結末は自身で確認いただくとして、もう一度、人を愛してみようか…。この本は僕にそんなことを思わせてくれました。本当に久しぶりの恋愛小説を読んでそんなことを思いました。

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Posted by ブクログ 2024年04月08日

平野作品は「分人」という概念でよく言われますが、この概念を特に持ち出さなくても、愛することに揺れ動く主人公の気持ちや考えが丁寧に描き出されています
無理のない、時にハラハラさせるストーリー展開で、ページがどんどん進みます
悲惨な事故に遭った女性が、愛されることでそれを乗り越えていく・・・純粋な気持ち...続きを読むでラストでは涙が溢れました

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Posted by ブクログ 2024年03月29日

ー それで、いつの間にか、こう思うようになってた。愛って、もっと偶然的で、選ばれる人間に優劣があるわけでもなければ、選ぶ人間が賢かったり、愚かだったりするわけでもない。ただたまたま、誰かと誰かが出会って、うまくいったり、いかかったりするだけだってね。

そう思えば、俺の家族は、誰も傷つかずに済む。組...続きを読むみ合わせの不幸だったって。―けど、そんなのが愛なんだろうか?別れた俺の妻が、ど うしても我慢できなかったのは、俺のそういう考えだった。なぜわたしと結婚したのって、よく訊かれたけど、あの頃は、今みたいなことが自分の中で整理できてなかったから、きちんと答えられなかった。……悪いことしたよ、彼女にも。ー

主人公が本当の愛の形に触れていく物語なのに、なんでタイトルが『かたちだけの愛』なんだろう?そこだけがいまいち理解できず腑に落ちない。

「かたちだけの愛」で簡単にやり過ごそうとしてきた主人公が、本当の愛を見つめ直す過程を描いているのからなのかなぁ〜。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年11月15日

⚫︎受け取ったメッセージ、感想
印象的なフレーズは、
「自分勝手に、自分の欲するまま見せること
 =遠慮のなさで愛を示す事」。
自分では思い至らず、ハッとさせられた。
遠慮する、気を遣うというのは、
時にその距離を見せつけられているようで
寂しい時もある。
どうしても欲しい!と激しく求める潔さの美し...続きを読む
みたいなものもあるよなぁと思った。



⚫︎あらすじ(本概要より転載)
事故による大怪我で片足を失った女優と、その義足を作ることになったデザイナー。しだいに心を通わせていく二人の前に立ちはだかる絶望、誤解、嫉妬…。愛に傷ついた彼らが見つけた愛のかたちとは?「分人」という概念で「愛」をとらえ直した、平野文学の結晶!

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Posted by ブクログ 2023年08月09日

愛するってなんだろうと深く考えさせられた。
他の誰といる時の自分よりも好きで、そんな自分を愛せる。そういう相手を見つけるといいのかもしれないと思った。
愛って深い。

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Posted by ブクログ 2023年02月05日

読みやすい恋愛小説。
最後の愛についての考察、わたしもそうなのではないかと最近考えていた。
自分のままでいられ、くつろげる、自分を含めたその空間と時間もまるごと好きでいられる。
そうできる相手に出会い、同じでいられることは紛れもなく幸せだと思う。

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Posted by ブクログ 2022年08月28日

読み出したら止まらない、平野啓一郎作品。話の展開は他の作品に比べて平坦ではあったが、描写が本当に秀逸である。人物像もさることながら、京大出身の男性に何故このようにファッションのことが手に取るように書けるのだろうか?(完全に偏見であり、決めつけであり、昨今のジェンダー問題に抵触しそうであるが)と驚きと...続きを読む同時に、才能のある作家はどんなことを書かせても一流であると感じずにはいられない。

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Posted by ブクログ 2022年02月17日

事故で片脚を失った女優と義足デザイナーの間に生まれた愛を描く

設定も登場人物もそこまで好きになれなかったけど(それも計算のうちかも)、はっとさせられる表現に出会えるから平野さんの本はやめられない

話としてはシンプルだけど繊細な心理・情景描写でドラマの中に入り込んだ気分になれる

✏技能とは、何で...続きを読むあれ、その人の時間の使い方の果実である
✏愛とは、相手の存在が自らを愛させてくれること
✏ひとは純粋な欲望だけでなく、純粋な思いやり、つまりは親切だけでも交われるが、それを愛と錯覚し続けるには少々繊細すぎる

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Posted by ブクログ 2020年04月06日

作中で相良は2人に自分のマイナスな過去・生い立ちを話している。マイナスな過去・生い立ちを話すのはとても勇気のいることだし、本当に仲を深めたいと思った人にしか自分は話せない。
話しても良いと思うような人と出会えることは幸せだと思う。

「私とは何か」で好きな考え方の一つである、
「誰といるときの分人が...続きを読む好きなのか」をテーマにしてたのも良かった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年06月19日

義足を作るということを通して、仕事とは、価値を生み出すとはということを問いかけてくる。自分自身でも良くわからない、処理できない気持ちにじっくり向き合って整理していく過程が印象的だった。
最後に希望が持てて良かった、

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Posted by ブクログ 2018年02月04日

作者の恋愛観には、そうだよなあと共感できるところが多かった。分人主義を恋愛の形から理解するにはもってこいの一冊。

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Posted by ブクログ 2023年11月01日

多弁は織り込み済みなのでしょうが、饒舌は冗漫に通じます。語り過ぎは面白くないし、小学生の作文みたい。
知的な平野さんなんで、意図するところかもですが、やっぱり不作かな。
「よくやく」ではなく「ようやく」(405p)でしょうね。
校正もちゃんとできてないし。

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Posted by ブクログ 2022年10月04日

平野さんの本も三冊目。

前回読んだ本が結構私の中ではSF的だったので
今回は、普通な設定(そうでもないけど)で良かった。

形だけの愛というか、女の、女優のプライドというか理解できないけど、いろんなことを足し算したりしながらする恋愛っていうのは、やっぱりなんだかね~と思いながら聞いた本だった。

...続きを読む面白かったけど展開はかなりゆっくり。

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Posted by ブクログ 2020年08月22日

愛する女性の元カレの遍歴に対する考え方のくだりが共感できた
自分より年上の男女の官能シーンだからか、何か気持ちの悪いものを感じた
本当の愛ってなんなんだろう
なんだかんだ、好きという感情の裏には計算的なものや汚さを感じざるを得ない
資本主義やSNSの普及による弊害なのかな

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Posted by ブクログ 2020年06月05日

恋愛物が苦手なのだが、「マチネの終わりに」が良かったので読んでみた。

タイトルが「かたちだけの愛」とあるので、結局最後別れてしまう話かと思っていたが、どうもタイトルの「かたち」は義足という形あるものをめぐる「愛のかたち」についてを示しているような気がする。

この作品はプロダクト・デザイナー相良郁...続きを読む哉は、雨の日に職場の近くで起こった交通事故で女優・叶世久美子を助けるが、片足を切断してしまう。偶然にも相良と過去取引がある病院に入院し、病院経営者・原田紫づ香から、久美子の従来の概念を覆すような義足のデザインの依頼を受け、義足制作の中で恋愛に進展するという内容。

実は、久美子の相良への態度や会話が駆け引きの恋愛のように感じられ、久美子をあまり好きにはなれなかった。
好きになった人に自分の気持ちを素直に伝えることができない不器用さというより自分のために何もかも投げ出してくれる人か否かを測っているように常に感じる。確かに、事故により突然、昨日の自分とは異なり障害者になり、今まで憧れの目で見られていたのが一転し、哀れみの目で見られるようになるのだから、この駆け引きの態度が事故以降であれば、致し方ないことではある。が、以前からではないかと思ってしまう。こう感じることも久美子を好きではないからであろう。

また相良にしても、久美子と自分の母とを重ねている理由をわかっているのに、久美子を愛することができるのは、少年時代に叶わなかった母への、母からの愛からなのではないだろうか。

片足を失った久美子と、相良が制作する義足で繋がった愛のように感じ、儚く感じる。このふたりが同じ思いで互いを必要とするのであればそれも愛かと考えてしまう。私には少し重かった。

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Posted by ブクログ 2014年11月08日

穏やかだったり、ゴツゴツしたり激流だったりと色々な流れで読めた。表現も美しく、全て映像となって心に残りました。
ただ、分人や愛の形についての説明のような所が引っかかりました。
あえてしっかり書いて伝えたかったのか。
何となく読者の心に伝わる方が私は良かったと思いました。

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Posted by ブクログ 2014年05月24日

難しくてよくわからなかった。。。
愛なのか、打算なのか、同情なのか。。。
どういう愛を語りたかったのか、私には難しくて理解できなかった。

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Posted by ブクログ 2014年05月24日

とても、きれいな恋愛小説。
それは薄っぺらいとかいう意味ではなく、嫉妬や執着心や憎悪や混沌、醜悪…そういった人の卑しい部分を描きつつ、それさえも凌駕する美しさが混在している…ということ。谷崎潤一郎氏の小説やラヴェルの曲、最後はパリの街並み…とまるで映画を見ているかのような感覚で読み進められた。文字を...続きを読む読んでいるのに、それとは別の視覚や聴覚を刺激されるような感覚は、なんかノスタルジーとワクワクを同時に味わうような不思議さでもあったなぁ…。
平野さんの提唱する『分人』の考えもちりばめられ、家族との顔、仕事の顔、恋人との顔、昔の恋人との顔…と様々な関わりに悩みモヤモヤを抱えて生きる様には共感を覚えた。
平野さんの小説は、わりとさらっと読めるのにジワジワと心に沁みて離れない。相良の母の納骨のシーンでは、なぜか涙がこぼれた。

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