あらすじ
時は貞観八年(866)。海神の生贄となる定めの少女・由良はある日、海賊に襲われた商人船から巨大な櫃が海に投げ出されるのを目撃する。船長の赤名が拾い上げると、縛られた謎の男が入っており……。新羅と内々に交易を行い財を成す商人、京での争いに敗れ大宰府に赴任する不遇の官人、銭と欲の坩堝の海で逞しく生きる海賊、そして――。複雑なしがらみによって生じた危険な渦に、いつしか由良は巻き込まれていく。
金銀財宝が集まってきた博多の海、そして西国の島々を舞台に直木賞作家が描く、壮大でスリリングな歴史長篇!
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Posted by ブクログ
生きる意味も何も知らない由良の、成長物語。
由良は巫女船にいる。嵐になったら海に放り込まれる人柱を売る舟で、由良は見た目の問題なのか一向に売れない。賊に襲われた船から櫃が流れてきて、中に人が入っていた。新羅で瓦職人をやっていたらしい。名を安曇福雄といい、巫女として売られることにしたらしくいつく。
女の客がやってきて由良をもらうという。由良を買った人は真平と名乗った。どうやら太宰府の官の者で、巫女船を取り締まるつもりのようだ。太宰府に連れて行かれた。寺に閉じ込められる。新任の少弐元利麻呂を迎えに行き、真平が捉えようとするが、元利麻呂は海に飛び込んだ。太宰府に帰る。真平の主の安貞は肥後国司として赴任していく。
由良は真平の女嬬となった。元利麻呂は宗継という海賊に助けられていた。真平と取引して、由良は宗継の船を見張りにいくことになる。宗継たちが平戸の高島の郷にたどり着くと、郷は賊に襲われて、皆殺しされていた。そしてその賊はどうやら安曇福雄を攫った人たちらしい。そして巫女船は誰かによって燃やされて沈められていた。
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海に生きる人間の死生観が通底している本。陸に生きる自分のほのかなそれに対する憧れに対して、かけられる言葉にうならされる。人物が皆魅力的で惹き込まれた。
Posted by ブクログ
平安時代前期、応天門の変があった貞観8年(866年)、那ノ津(博多)から値嘉ノ浦(五島列島近海)にかけての海や島々を舞台に、一人の謎の男をめぐって、海賊、商人、官人たちが関わり合い、壮絶な争いを繰り広げる物語。
物語のナビゲーターのような役を務めるのが、10代の少女・由良。彼女は物心ついた頃には、巫女船に囚われ、いずれ生贄として、海神に捧げられる運命にあった。
ある時、彼女が目撃したのは、海賊に襲われた商人船から海に投げ出された巨大な櫃。
巫女船の船長である赤名の号令で引き揚げられた櫃から救い出された福雄という若者が、物語のカギとなり、争いの端緒となる。
福雄の行方を血眼になって探す新羅商人と前の隠岐国司、その影響で自らのねぐらである高島の郷を壊滅させられ、復讐を誓う海賊の頭目・宗継。
由良は、太宰府庁の少弐・在原安貞を慕い、新しい少弐・元利麻呂を亡き者にしようとする元女官・伴真平に引き取られるが、元利麻呂を救った宗継の海賊船に乗って、行動を共にすることになる。
主・安貞を思う真平、頭目・宗継の右腕として、宗継のためだけに生きる年麻呂、真平に助け出されながら赤名とともに過ごした船上での暮らしに戻りたい由良、駆け落ちした遊女・香久女と僧・元昌、横死した兄のために、上役だった国司を訴え出た福雄。
本作は、激しいアクション活劇、ミステリーの色彩も強いが、こういった人間関係、これと決めた大切な人への熱情がテーマとして伝わってくる作品でもある。
形は違えど、誰かを大切に思ったり、何かを願うことには、大変な痛みを伴う。
そのことを、成長する由良の感性の中に表現する手法で、読み手に訴えた作品といえる。