あらすじ
「働いて働いて働いて」の呪縛を解体せよ!
資本主義社会において、資産を持つ者と持たざる者の格差は、いまや目に見えて拡大している。
少子化で労働人口が減少しているにもかかわらず、たくさん働いても賃金は大きく上昇しない。
本来、貨幣は経済を効率よく回すためのツールであり、労働の目的ではない。にもかかわらず、資本主義の論理のなかで、ほとんどの人が「お金を稼ぐために働く」ことに縛られているのが現実だ。
しかし今、少子化の進行に加え、AIやロボット技術の急速な進歩によって、従来の資本主義の仕組みは限界を迎えつつある。
そんな中で、「お金を稼ぐために働く」ことをしなくても、自由に暮らしていける社会はいずれやってくるのか。
生物学者・池田清彦氏が、労働にまつわる歴史や資本主義の構造、ベーシックインカムやMMTといった制度を横断的に読み解きながら、「働くのが当たり前」という常識を根本から問い直す。
・たくさん働いてもたくさん稼げないのが資本主義
・「所得は労働と引き換えでなければならない」というウソ
・それでも「お金を稼ぐために働く」に縛られる理由
・資本主義は「ピンハネ」を前提にしている
・AI化が労働と社会の仕組みを変化させる
・資本主義を維持するための「ベーシックインカム」
・国債をいくら発行しても財政が破綻しない理由
・「少子化危機」は資本主義の理屈にすぎない
・お金を稼ぐ行為から自由になれば、人生はもっと面白くなる
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Posted by ブクログ
ネットで新刊を見ていたのですが、タイトル(人はなぜ働かなくてもいいのか)を見て衝撃を受けて衝動買いしました。手に届いてから、読みかけの本を差し置いて最後まで読んでしまいました。「働いて働いて」の高市首相は凄いなと思って見ていますが「働かなくてもいい」と説いている背景・考え方を知ることができました。
言葉だけは聞いたことのあった「ベーシック・インカム」や「資本主義の限界」も私の中で繋がったように思います。今は1つの時代が変わる時期なのかもしれないと感じました。
以下は気になったポイントです。
・狩りや採集は、あくまでその集団が生き延びるために必要な範囲に留められる、言い換えるなら自分たちが暮らす環境の持続可能性を維持するために、 ブレーキをかけながら生きている。 そんな中では働きすぎるものは集団にとって邪魔な存在である、 あまり働かないことは、それが怠惰だからではなく「働きすぎない」ことこそが生き延びるために重要だからである(p32)
・肝臓の細胞も、目とか皮膚とか他の臓器や器官を作るための遺伝子を持っているが働いているのは 肝臓 を作る 遺伝子だけである。 その他の遺伝子はそこにあるというだけで働いてはいない、他の遺伝子が働かないからこそ 肝臓は健やかに保たれる(p35)
・ ホモサピエンス が意思疎通ができるようになったのは、遺伝子が変わらず 遺伝子を動かす システムが大きく変化して、ほぼ同じ遺伝子でありながら脳に大きな 構造変化が起こったのだろうと考える。 大きな 構造上の変化は遺伝子の突然変異というより、むしろ 遺伝子の発現ををコントロールするシステムが変化することに起因するだろう(p40)
・人口増加の大きな転換点になったと考えられるのが、7万から3万年前に起きたとされる「認知革命」である、 この認知革命という劇的な変化の中核にあったのか「 現実には存在しないもの」 を頭の中で描き、 しかもそれを他人と共有できる力であった。 目の前にいない 存在を信じたり、 起きてもいない出来事を語ったりすることが人間には 可能になった。 その結果 精霊 や神と言った 観念が生まれ、神話や宗教が 形作られていく(p42)
・ 1万年前までには世界中の ほぼ全ての場所に住むようになった人間は、その土地に住む大型動物を次々と狩り尽くしていった、マンモスは数種類が存在していたが 1万年くらいにはその大半が姿を消している(p45)
・三内丸山の 縄文 集落は1700年ほど続いたようだが、結果的には崩壊している。おそらく 主力であった国の収穫が気候の寒冷化によって不安定になってしまい、 500人規模の集落は維持できなくなったのであろう。人々は 少人数で適当な 居住地を探し、より「こじんまり」とした暮らしへと戻っていった可能性が高い(p50)
・農耕は 人間が賢くなった から始めたというより、 それをしないと生きていけない 状況だったことで始まった可能性が高い、つまりオーストラリアで農耕が始まらなかったのは、その土地で狩猟採集生活で十分生きていけたということかもしれない(p51)
・犬が比較的従順で人の指示に敏感なのに対し、猫がどこか気まぐれで「 ツンデレ」なのは出自と関係している、犬はタイリクオオカミの 子孫なので群れで生活し、 リーダーに従うという性質を受け継いでいるが、 猫は リビア 山猫の子孫であり 単独生活者 だからである(p57)
・日本は1873年(明治6年)の地租改正によって、「年貢米による納税」から 「通貨による納税」へと転換が行われた、この時から米ではなくお金で税を払うことが国民に義務付けられた、この納税手段の変更により、人間が「何のために働くか」という前提条件を決定的に変えることになった(p65)
・ 資本主義の目的は、生産そのものよりも「 利潤の獲得とその最大化」が設定されている。 何を提供したかより、どれだけの利潤を得たか、どれだけそれを最大化した のかの方に価値がある(p78)
・ 経済成長というのは 単に 努力の問題ではなく、 未開拓の 市場がどれだけ残っているかに左右される、 日本では作る人も買う人も自然に増え続けるという前提はもはや過去のものになった(p82)
・経営者に対する評価軸が売上より株価ということになれば、利益を 設備投資や賃金に回して市場を拡大するよりも、 自社株買い や配当の増加によって 株主価値を高めることが優先されるのは自然なことである。 その理屈で考えるならば 社内に留保したり 金融資産として運用する方針をとるほうが合理的である(p85)
・そもそも「 持続可能な開発」という言葉自体に矛盾がある、「持続可能」とは均衡や維持を意味するが、「開発」は 拡張 や 膨張を意味する。成長を前提とした拡大型経済の 枠組みのままで 持続可能性を実現するなんてことはほとんど不可能な話である(p90)
・十分に報われないことが分かっていても、人がたくさん働くことをやめないのは、単に経済構造の問題だけではなく、長い歴史の中で内面化 された価値観に強く 拘束されているからなのかもしれない(p96)
・以前は、働く者と買う者が 別の階層に属していた、そういう社会であれば 人件費の削減はひたすら利益を膨らます方に働いたに違いない、ところが 現代の資本主義社会ではそうはいかない、 なぜなら 労働者は同時に消費者でもあるからである。 AI によって 労働者が不要になると、無職の人が国中に溢れるようになり、 商品を買う 力が失われていく。 商品の供給能力が高まる一方で 需要は 縮んでいく。 どれだけ大量にしかも 安く 生産できたとしても、それを変える人がいないという状況が生まれる。 これは資本主義にとって致命的である、 なぜなら 資本主義というものは「物を作る」仕組みなどではなく 、あくまでも「作ったものを売ることで 利潤を得る」仕組み だからである。ものが売れなければ当然 利潤は生まれない、 だから 拡大も再投資も成立しない。 つまり、 お金が回らなくなれば資本主義は破綻してしまう(p98)
・資本主義を維持するためには「 働かなくても最低限の 購買力が維持される仕組み」を考える方が合理的である、人を「お金を稼ぐために働く」ことによって駆り立ててきた 資本主義を維持するために「働かなくてもお金が得られる」という制度を導入するというのは何とも皮肉な話であるが、 これは AI 化がもたらす新しい生産構造に適用するための新たな システムの構築 だと見ることができる(p99)
・ ベーシックインカム というのは弱者救済の制度だと思われがちだが、 実は資本主義という枠組みの中で失業した人にとっても、 利潤を追求する側にとっても十分に合理的な制度である。 AI 化がどんどん進み 労働力が不要になって失業者が増大すれば、購買力は激減する ならば、ベーシックインカムを導入 せざるを得ない 未来は必ず来ると思われる(p102)
・1%のインフレが起こると貨幣の価値は1%下がる、1億円持ってた人は1000万円の損失である、 一方 300万円を持っていた場合は 購買力は297万円であり 3万円の損失に過ぎない、 そこにベーシックインカムとして50万円が支給されると合計347万円の購買力を持つことになり、ベーシックインカムによって生じた インフレによる損失はベーシックインカムによって補填される。 1億円持っていた人は50万円が加わったとしても9950万円の購買力となり 50万円分のマイナスとなる(p106)
・ベーシックインカムを導入するのであれば配ったお金が市場で 使われなければ意味がない、 溜め込んだり株に投資したり借金の返済に使ったりすると経済は回らない。 従って ベーシックインカムで支給された家の7割は消費に回す、といった条件を設けることが大事である(p106)
・ 経済は突き詰めれば「どれだけものやサービスを生み出せるか=供給」という生産力と「 それを買おうとする力= 需要」との関係で動いている(p116)需要が供給能力を超えた時にインフレが起きる、 デフレが起こるのは需要に対して供給が多すぎた時である(p117)
・ スリランカの財政 破綻は、1)外貨建て債務を抱えていたこと、2) 生産力を大きく上回る通貨を発行し インフレを制御できなかったこと、に起因している(p123)
2026年4月29日読破
2026年4月29日作成