あらすじ
有能な公務員探偵はオフタイムも大忙し! 「市民サーヴィス課臨時出張所」で、市民の相談に乗る腕貫着用の男。明晰な推理力を持つ彼のもとへは、業務時間外も不可思議な出来事が持ち込まれる。レストランに押し入った強盗の本当の目的は? 撮った覚えのない、想い人とのツーショット写真が見つかった? 女教師が生前に引き出した五千万円の行方は? “腕貫男”のグルメなプライベートにも迫る連作ミステリ6編。
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Posted by ブクログ
腕貫探偵シリーズ第二弾。今回は勤務時間外の腕貫さん。グルメなんですね〜。そのグルメぶりで趣味を同じくする女子大生から「だーりん」と呼ばれているとは。最終章では腕貫さんは登場も謎解きもせず、お店の予約だけ、その女子大生が謎解きのヒントを与える活躍。今回は事件の真相が苦いものが多かった。
Posted by ブクログ
ここまで来ると好みの問題でしかないと思うけど、私はやっぱりこの雰囲気好き。
しかも前作より面白いかも。前作読んで高まっていた期待に見事に応えてくれて満足。
一応短編集。
初編では腕貫さんは割と謎な人物で、ともすれば悩みを抱えてる人だけに見える妖怪(!)なのかな、くらいに思ってたけど、今作は全部腕貫さんの勤務時間外にもたらされた相談事になってる(だから「残業中」ね)。
確かに毎回受付時間に来るクライアントの話にしていたらワンパターンというかマンネリ化してたかも。
お、今回はこういう趣向か!と思いながら、一方で腕貫さんのプライベートが描かれることで謎めいた部分がなくなって世界観が壊れるんじゃないかとの危惧もあった。
でも、相談したことない女子大生に「易者」と思われるくらいには認知されてることが分かったり、意外にグルメな一面が見れたりして、これはこれで楽しかった。
あと、おんなじ登場人物が出てきたり、事件が全部櫃洗市で起こってるもんだから、レストランとかホテルとか何度も同じ施設が出てきたりして、もう事件は知ってる街で起こってるような気分になる。そうやって読者は作品の世界に引き込まれちゃうんだよね。うまいなぁ。
んで、ミステリの部分もしっかりしてると思う。こんなの分かりっこないってレビューもあるけど(そしてそれは否定はしない)、その分腕貫さんの鮮やかな推理力が映えるというか。
そしてなにより「軽い」ので、自分の精神状態を気にせず読めるのも魅力だな(シリアスな話は読む方も体力使うからね)。
Posted by ブクログ
腕貫探偵、2冊目。
前回とは印象がガラリと変わったような。
気のせいか?
「体験の後」は、まずはイントロ。
「雪のなかの、ひとりとふたり」で、
ユリエの雰囲気が、
やっぱり私のお気に入り登場人物に。
「夢の通い路」とか、終盤が好きだなー。
「青い空が落ちる」も、「流血ロミオ」も、
不思議と読後感は悪くないのが特徴か?
「人生、いろいろ。」…うーん、微妙だけど、
全体的に、やっぱり好きな作家さんの本でした(^^♪
Posted by ブクログ
西澤保彦による安楽椅子探偵ものの第二弾。
本作では「残業中」というタイトルがつけられているが、どちらかというとプライベートな時間帯に相談を受ける、というスタイルで、前作のように誰かが相談にやって来て、物語のあらましが語られるスタイルではない。最終話に至っては腕貫さんの登場すらないなど、一風変わっている。
事件のあらましは相談者あるいは事件の当事者の目線から語られ、そこに読者に対するウソは含まれていないあたりは前作同様良心的なミステリである。
結末もなんともやり切れないものから、思わずクスリとしてしまうものまで取り揃えられており、読後感としても悪くない。
相変わらず腕貫さんは何者かわからないが、相当なグルメであることが本作で明かされる。が、プライベートな部分も描いている本作でもわかるのはその程度という謎っぷりが続編への期待を嫌が応にも高めていく。
Posted by ブクログ
シリーズ2作目
残業中!というより、腕貫さんのプライベートな時間にまで相談者続出。
看板下げていないのにな。
腕貫さんが意外にも食事にはこだわりがあり、美味しいものを堪能しながら事件を解いていく。
本当にこんな料理あるのかなあ。とにかく美味しそう!
今回は腕貫さんを「だーりん」なんて呼ぶ男前の美女まで現れて、最後は腕貫さんの代わりに謎を解いたり。
登場人物の名前が読みやすくなってるし、腕貫さんも親しみ易くなってる。
トラットリア「てあとろ」で急に起きた強盗立て籠もり事件「体験の後」
偶然撮った写真にはあるはずのない事件の車が写っていた。「雪のなかの、ひとりとふたり」
記憶に全くない、学生時代の憧れの彼女とのツーショット写真の謎。「夢の通い路」
突然死した老女の預金から消えた五千万円の行方。「青い空が落ちる」
真夜中に殺された二人の女子高生には何が起きた?「流血ロミオ」
しつこい恋人の殺人計画が失敗。同じ時間に実家に泥棒が?「人生、いろいろ」
皮肉な感じやちょっとロマンチックな感じがやはりクィンぽいなあ。
ユリエさん、かっこいい。
続きをまだまだ読んでみたいシリーズ。
Posted by ブクログ
あー、よかった。
登場人物の名前が普通だった。
覚えやすい。
残業というよりはサービス残業だな。
女子大生達が面白かった。
「青い空がおちる」がよかったなぁ。
まぁ、私にも捨ててもいいようなお金が
5千万ほどあったら、誰かにあげてみて
観察日記でもつけてみたい。
どうなるだろう・・・
Posted by ブクログ
〇 概要
櫃洗市を舞台として,安楽椅子探偵「腕抜探偵」が活躍するシリーズ第2弾。今回も,市民サーヴィス課にいろいろな相談が持ちかけられる…と思いきや,「腕抜探偵」がプライベートで事件に巻き込まれたり,そもそも出張していて,物語に登場しなかったり。腕抜探偵とその愉快な仲間たちが活躍するキャラクター小説というべきか。
〇 総合評価
1作目同様,ミステリとしてのデキはそれほどよくない。しかし,それぞれの話は意外性のあるオチがあり,話としては1作目よりはるかに面白い。ユリエという名キャラクターも登場しており,キャラクターの魅力も含め,話に深みがある。1作目は,腕抜探偵が最後に真相をほのめかすという形にとらわれすぎていて,話全体の足かせになっていたような印象まである。「青い空が落ちる」などは,そのミステリアスな謎とブラックなテイストが重なって,かなりの名作,傑作だと思う。櫃洗市という都市への愛着も高まっており,シリーズとして結構楽しめそう。
〇 体験の後
櫃洗市にある「てあとろ」というカフェレストランに強盗が押し入る。客を人質として,店の改装資金を奪い取ろうとする,もと店員が犯人の様子であった。改装資金は家においてあるという店長の話を聞いて,一味の一人が店長の家に向かうが,犯行がばれ,警察がやってくる。そこで,店に客としてやってきていた「腕抜探偵」が,知り合いの刑事に「殺人事件が起こったのですね」と聞き,さらに「犯人は、ここにいます」と告げる。事件の真相は,壮大なアリバイ造りだった。人質を証人として,店員が娘の敵の高校教師を殺害する時間のアリバイを作ろうとしていたのである。伏線などはほとんどなく,本格ミステリとして真相を推理するのは不可能だと思うが,話の展開としては意外性もあり面白かった。そして,この話が,「腕抜探偵」屈指の名キャラクター「ユリエ」が登場する話となる。
〇 雪のなかの,ひとりとふたり
ユリエが「腕抜探偵」にバレンタインチョコを渡そうと,「腕抜探偵」の居場所を探す。「囲炉裏亭」という料理店で「腕抜探偵」に出会うことに成功する。ユリエは,自分のマンションに止まっていた車を見て,同じマンションに住んでいた「江尻」氏が妻を殺人して自首した事件の供述にウソがあったのではないかと不思議に思い,「腕抜探偵」相談をする。腕抜探偵は,江尻夫人が愛人のA子さんを殺害し,夫と心中偽装をさせようとしていたのではないかと推理する。計画は失敗し,愛人は自分の家まで帰り着いて事故死。車の中で目を覚ました江尻氏は,自分のせいで妻と愛人を死なせてしまったことを悔いて,警察に出頭したのではないかという。ユリエは,何より,愛人のA子が死ぬ前にひどい食事をしていたと思われることに同情するのであった。
〇 夢の通い路
主人公は藤木美智夫。父の遺品を整理しているときに見つけた,高校時代の春日部梨紗と二人で映っている写真を見つけるが,そのような写真を撮った記憶がない。高校時代の友人「大江」に電話をして聞くと,藤木が頼んで撮影したものだという。仕事で,高校時代を過ごした櫃洗市を訪れ,春日部梨沙本人に会うが,思い出せない。そこで,「腕抜探偵」にそのことを相談する。「腕抜探偵」は,大江と藤木の母が不倫をしており,そのことを明らかにするために藤木が家に火を付けたのではないかと推理する。そして,そのショックで記憶を失い,写真は記念のために撮っておいたものだという。ストーリーはなかななビター。ちょっとした伏線もあるが,腕抜探偵の推理の根拠は乏しく,やはり推理というより想像という感じ。
〇 青い空が落ちる
松嶋充子という元教師が病死する。事件性はなかったが,死の前に5000万円もの大金が引き出されていた。詐欺の被害にでもあったのではないか?民生委員から警察に捜査の依頼がされる。捜査の中で,5000万円は趣味のために使うと言っていたという証言が得られる。警察の水谷川は,高校時代の恩師ということもあって個人的に捜査を行う。捜査の結果,松島は生前,ギャンブルに狂って兄を失い,賠償などでひどい思いをしたとか,修道女のような生活をしているなどの話を聞く。しかし,5000万円の謎を解けない。そこで,「腕抜探偵」に相談する。腕抜探偵は,5000万円は,社会科の教員に渡されているのではないか,と推理する。松嶋は,5000万円を受けとった男が,道を踏み外すか,踏みとどまるかを見たかったのではないかと。その後,櫃洗高校から,比留間という社会科教師が急に退職するという。半年後,比留間はホームレスとなり,障害事件の容疑者として逮捕される。松嶋は,5000万円を渡した比留間が,高く飛び上がるか,落ちるか,結果を知らないからこそ,見たかったのだと…。これはなかなかの傑作。ミステリではないが,謎となんとも言えない解決が印象に残る。
〇 流血ロミオ
菅谷直紀が隣に住む蒲原真美子と窓越しにコミュニケーションを取っていた。それまでにはなかったことだが,真美子は直紀を窓越しに部屋に迎え入れる。しかし,翌朝,真美子の部屋で真美子の絞殺死体と直紀が頭を殴打され,倒れているところを発見される。さらに,真美子の叔父である小杉輝男が交通事故で死んでおり,真美子の友人の和久井貴恵はひき逃げされて死んでいた。ここまで関連する人の死が重なるのか。真美子の家庭教師をしていた江梨子は,偶然ユリエと知り合いになり,ユリエを通じて,腕抜探偵にこのことを相談する。腕抜探偵の推理は,貴恵をひき殺してしまったのは直紀だという。真美子は,直紀の好意を利用し,先輩の家のパーティに行くために,直紀に叔父の車を無免許運転させ,その結果貴恵をひき殺してしまった。直紀は真美子の部屋に戻り,真美子を殺してしまう。しかし,真美子の反撃に合い,頭を打ち,記憶を失う。真美子に好意を抱いていた輝男は,真美子たちの犯行をごまかそうとして事故にあったというもの。推理ではなく想像,妄想という感じだが,話全体はかなりブラックで好み。
〇 人生,いろいろ
井原健介は,占部珠美と協力して,同棲している木戸佐和子を殺害しようとする。殺害は失敗し,珠美と佐和子の二人が鉢合わせし,修羅場となるが,その後、珠美も佐和子も健介から距離を置く。そして,健介の実家には,同じ日に泥棒が入っていた。泥棒は,家族では健介しかその存在を知らなかった祖母のタンス預金の3000万円のお金を盗んでいた。健介はひょんなことからユリエにこの話をする。ユリエは,祖母のタンス預金を盗んだのは健介の知人だと言う。健介は,実は,珠美と佐和子が手を組んで,3000万円を盗むためのアリバイ工作として佐和子の殺害騒ぎを起こしたのではないかという事実に思いいたる。二人に1500万円ずつ渡して,手を切れたと思えばいいか…と健介が思っている最中に起こる,偽札騒ぎ。祖母に確認すると3000万円は,祖父が作った偽札だったというオチ。話としては面白いが,腕抜探偵は登場しないし,これもミステリとはいいがたい。とはいえ,これはなかなか面白かった。