あらすじ
生と死、そして性愛――人生を謳いあげる至高の短編小説集
【誰だって、人に知られたくない秘密がある。】
「過ぎてみれば、全部、どうってことなかった」
こんなに心を震わす小説が、他にあるだろうか――?
孤独、死、性愛と情熱、そして嫉妬……
人に悟られたくない、繊細な心の機微を見事に描く極上の短編小説集。
【解説・小川洋子】
老いを感じながら山裾で暮らす童話作家の72歳の雪代。庭を訪れた植木屋の若者から、還暦過ぎの風俗嬢への一途な恋心を聞き嫉妬するが…(表題作)。自分の夫と一緒に死んだ女に、線香をあげる妻が放つ不穏な空気(「喪中の客」)。
誰しも運命に逆らえず秘密を抱えて生きていく。
短編の名手・小池真理子が放つ、至高の7編。
〈あの人に抱いた、言葉にできない想い――〉
・いつものように彼女に請われても、彼は化粧をしようとしなかった。(「アネモネ」)
・ある日、朽ち果てて使われなくなった玄関のブザーが鳴った…(「喪中」の客)
・若かったおばの白いふくらはぎと甘ったるい声が、彼女の遺骨を抱いて蘇る(「ミソサザイ」)
・40歳の時に恋をした相手は、大学生。旅館で親子と間違われて…(「微笑み」)
単行本 2023年6月 文藝春秋刊
文庫版 2026年4月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
読み終わって思ったことは、小池真理子さんのファンであれば、この一冊は読まなくてはならないと云う程に秀作だった。
7編の短編集なのだが、どの物語もジワジワと胸に迫ってくる内容だった。
小池真理子さんが各短編に込めた主人公たちの心の迷いが、とても繊細に綴られている。
酸いも甘いも知り抜いた年配の方々ほど、登場人物たちの心の内の機微が理解できるのではないかと思った。
人は生きている限り、何かしら人には決して言えないような悩みや迷いを抱えていると思うが、歳を重ねるにつけ心の内には変化が生じるようだ。
そんな繊細な心の内を、分かりやすい丁寧な言葉で小池さんは綴られている。
7編中、私が特に印象深かった物語は「夜に庭」と「日暮のあと」だった。
どちらも人生で宿命的に背負ってきた重荷を、あるきっかけで重荷から自らを解放する年配の女性の物語だ。
この物語の婦人たちの気持ちを思うと、泣けた。
きっと若い時に呼んでも理解できなかっただろう。
人生の終焉が見えてきた時、人は何気に素直になるのではないだろうか。
迷いも悩みも、ましてや恋さえも、何となく達観したというのか余裕を持てるというのか、客観的な受け止め方をして寛大な気持ちで接するのだと思う。
余裕を持ちつつ、前向きな気持ちで晩期を迎えることができれば理想だ。
表紙の黒猫さんは、日暮れのあとにやってくる明日を見つめているようだ。
それにしても小池真理子さんは、短編の魔術師のような作品を生み出してくれる。
Posted by ブクログ
さすがの小池真理子。
私が一番怖かったのは「喪中の客」怖いよ~!
久しぶりに読み終わって「こっわっ!」っと思った。
なんでこんなに怖いのか。服装の描写から表情の描写からくる怖さ。
とにかく「こっわっ!」なのだ。
この人の作品には匂いがあるのだよ。
それが活字から立ち上るのだよ。
「匂い」が「活字」からだよ。そんなことがあるはずないじゃないか。
でも立ち上るのだよ。「匂い」が。
そこが小池真理子の凄いところ。
好きなところ。
Posted by ブクログ
特別な笑顔を持つ青年 いつかまた、会えるでしょう。必ず会えるでしょう。百年後、千年後になるのかもしれないけど必ず
はやくおばあさんになりたいと言う老いた風俗嬢
の話にふれ、主人公は老いに対する考えを見直す
Posted by ブクログ
昔は嬉しかった自分の誕生日が嬉しくない。老いていくことがこわい。最近そんなことを考えるようになってきました。
大樹の言葉が優しいです。
過ぎてみればどうってことなかった、楽しかったと思える日が私にも来るだろうか。楽になれるならおばあさんになるのも悪くないかもと少しだけ思いました。
もっと年を重ねてからもう一度読みたいと思います。
Posted by ブクログ
性、死、老い、孤独、短編だけどとても深い。なんとも言えない感覚。20代と還暦を迎えた女性の恋、壊れたはずのブザー。行間が狭くてなんだか読みにくいかな?と思ったけど、読み出すとよう止まらない。 引き込まれる。特に喪中の客はぞっとした。