あらすじ
10年前、抜刀術・名雲草信流を悲劇が襲った。末の妹・綾が放火により焼死してしまったのだ。犯人は、1年後、別の現場に残された遺留指紋が決め手となって捕まった飯浜幸雄。名雲家長男・修作がつきあっていた奈津の父親だった。修作の父・名雲和也は公判に出廷した飯浜に襲いかかる騒動を起こし、失踪。奈津は母親とともに土地を離れて行ってしまう……。守るべきものは何か? 愛する者との絆の在処を問う感動巨編!
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Posted by ブクログ
裏切らないなぁ、沢木冬吾。この小説も沢木節全開。会話はミニマム、描写はしつこい(笑。書き込みする箇所のメリハリがいちいち俺の好みなんだなぁ。
文庫みっちり700P、なぜか捕らわれの身の主人公が、子供時代に父と祖父から切りつけられるのを避けた追憶を、縛られたまま思い出すという異色のスタート。
そっからの話の転がり方、登場人物の理不尽な不幸、ちんぴらのくそっぷり、悪役のグロいまでの悪さ、警察官たちの苦悩と活躍…、敵役が二転三転し、主人公とともに物語に翻弄される心地よさ(いや主人公はたまったもんじゃないのだが)
そして怒涛の後半。抜刀術VSフェンシングの決闘シーンのすごいこと。だがそんな決闘シーンですら些末なくらいの(贅沢な!)話の転がりっぷり。ハードボイルド
アクションとはかくあるべしというお手本である。
しいて難点をあげるなら、そのボリュームゆえの物語の複雑さ。
登場人物が多く、○○が実は▽▽…みたいなのまで出てくるので、ある程度の登場人物相関図じゃなくても人物紹介は欲しかった。映画化したら、パンフには見開きで相関図が入るだろう。
あくまで些末なことである、そんなことは物語に集中していたら(せざるを得ないのだ)なんとかなる。読むべし沢木冬吾、読むべし「天国の扉」
もうひとつ些末なことを思い出した。サブタイトルの「ノッキン・オン…」はいらんと思う。少々厨二っぽい。