あらすじ
失われたディオニュソス的なものを求めて
「ディオニュソス的とは何か? それが問題なのだ。その答えがここにある。」
悲劇を死に導いたソクラテス以降の理性的、アポロン的なものへと傾いていくヨーロッパを鋭く批判する、ニーチェ哲学の起原。それは、彼の処女作にして「最大の問題作」の一つであった。古代ギリシアから当時のドイツにいたるまで、音楽や宗教に関する様々な論の飛躍を繰り返すその筆致は、論理よりもパトスにまかせて書き上げられた、ある種の迷宮のように思われる。ニーチェはそこに「アポロン的なるものとディオニュソス的なるものとの相剋」という迷宮脱出の糸口を読者に提示し、古代ギリシア悲劇に、理性と恍惚の融合として芸術の極致を見出すのだった。一九七九年刊『ニーチェ全集』より、新たに納富信留(東京大学大学院教授)の解説を加えた、「白水社のニーチェ・コレクション」第二弾。
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Posted by ブクログ
『悲劇の誕生』というと岩波文庫のものが最も読まれていると思いますが、再読したいと思うぐらいに気に入ったら、絶対こっちを読んだ方が良いと思います。
訳者(浅井真男)あとがき、解説(納富信留)ともに超コンパクトだけど、なかなか良いです。
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ニーチェは若い頃に代表作を訳も分からずひと通り読んだものの、何度も読みたくなるのは、この『悲劇の誕生』だったりします。
最初の著書にはその後の全てが詰め込まれているから…ではなく、まだ、やぶれかぶれじゃない感じのニーチェに会えるので。
超人思想も良いけど、その前段階で格闘する本書のニーチェが僕は特に好きです。
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ダイモンの「最善のことは、⋯⋯生まれなかったこと、存在しないこと、無であることだ。⋯⋯次善のことは早く死ぬことだ。」という言葉は、まるで反出生主義的の起源みたいに聞こえます。
この絶望を克服するのがギリシア悲劇で、その起源を探究するのが『悲劇の誕生』の目的といいます。
かの有名な「アポロ的/ディオニソス的」という構図(二元論ではないです)も、その目的から要請されたもの。
ところで、本書の解説でもそれとなく書かれているように、「起源の探究」はそもそも不可能で、悲劇の「再誕生」(ワーグナー等)への期待に支えられた試みにしかなり得ません。
果たしてニーチェはそれを自覚していたのか、していなかったのか、気になるところです。