あらすじ
日本宗教の常識を覆した浄土宗開祖・法然とは何者なのか。父の殺害事件、亡き母への思慕、叡山後の足跡――。ゆかりの地をめぐる綿密なフィールドワークで、隠された真実と浄土思想の真意を導き出す!
※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
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Posted by ブクログ
梅原さんの著作を見かけるとつい買ってしまいます。相当な梅原信者だとこの頃思うようになりました。
仏教の宗派や僧の名前はたくさんあるし何がどう違うんだろう?と思うくらいであまりきちんと調べたことも考えたこともなかったのです。仏教に特に関心があるわけではないのですが一生をかけて熱心に極楽往生の道を研究し、勉強し衆生を救おうとした一人の人間の物語として読んでもとても面白いと思います。
人一人の思想の変化を見るとき、その人の過去があり、歴史がありその人物の考えが作られていくということがよくわかります。
現地の言い伝えや伝承などから読み説かれていく法然の幼少の姿は推理小説を読んでいるように面白かったです。
ただ、浄土宗の教えだと確かに怠惰で堕落した私なぞはこの世を真摯に生きることなくただ念仏を唱えれば極楽に行けるんだ、くらいの軽い気持ちに陥りそうです…
Posted by ブクログ
「浄土仏教の思想」シリーズ(講談社)の一冊として刊行された本の文庫版。著者独自の視点から、法然の生涯と思想を論じています。
上巻では、法然の生い立ちから、師の叡空を批判して独自の思想的立場を確立しつつある時期までを扱っています。
例によって著者は、田村円澄に代表されるアカデミズムの通説に反旗を翻し、三田全信による伝記資料の研究に依拠しつつ、法然の出家の謎に迫っていきます。通説では、法然が9歳のときに父の漆間時国が殺害され、その後に法然が出家したと考えられてきました。これに対して著者は、弟子の源智が残したとされる『法然上人伝記 附一期物語』(通称『醍醐本』)を重視して、父の殺害が起こったのは法然の出家後だったとする立場をとります。押領使として秩序を乱す武士や盗賊と実力でわたりあってきた時国は、みずからの死もけっして遠いことではないと少年の日の法然に語り、そのことが彼の深いところにある厭世観につながっているのではないかと著者は推測します。
さらに著者は、法然と師・叡空の論争の中で、とくに「戒」をめぐる立場の違いに注目しています。著者は義山の解説に依拠しながら、法然は心を重視する叡空の「観心戒」の立場に反対して、「体」および「行為」を重視する考えを打ち出したという見方を示しています。