あらすじ
台湾で、「抗日戦争」当時の国民党の前線報告が機密指定から解除された。そこには、「国共合作」したはずの中国共産党による、日本軍との共謀の事実が「これでもか!」というほど報告されている。日本軍の力を使って蔣介石をやっつけ、天下を取ることを目指していた毛沢東戦略が、否定できないほど明確に裏付けられたのだ。本邦初公開の毛沢東・スターリンの往復電報集と併せて、「抗日戦争」の真の姿を描く。
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Posted by ブクログ
西暦200年前後の中国は魏呉蜀の三つの巨大な勢力の力が均衡し(正確に言えば曹操率いる魏の力が突出していたが)、三国間で常に争いが起こっていた。どこか一つの勢力が侵攻を企図すれば、残る二国が手を結び対抗するといった具合に、それぞれの国が自国の存亡をかけて、時に敵対し、時に手を結ぶなど巧みな外交を繰り広げていたのは、三国志などを見た方なら誰もが知るところであろう。正に同書(実際には「三国志演義」であるが)クライマックスとも言える赤壁の戦いでは、強大な義の船団を呉の将軍周瑜と蜀の軍師諸葛亮が手を組み、謀略と火攻めによって撃退するシーンなどは手に汗握りながら見た事を記憶している。
時は20世紀に進み、明治維新以降、国力を蓄えた帝国日本は中国大陸に傀儡国家である満洲国を設立し、関東軍を主体とする大兵力を大陸に駐屯させていた。そして更に中国全土の支配を目論み(実際には広大な中国全土に駐屯し、全てを支配できるような兵力が日本に無いから、行き詰まった状態であったが)、中国の軍事力と激しくぶつかり合っていた。その中国には蒋介石率いる国民党軍、毛沢東率いる共産党の中共軍の二大勢力が存在していたが、二勢力は中国国内の覇権を争っており、対外的には日本を相手にしながら、国内的には内戦状態にあった。これが今も続く中国の「国内問題」につながっている。
現在もなお続くこの国内問題の中で、日本は高市政権の台湾有事発言などもあり、いつも以上に緊張感が溢れる時期に入ったが、その様な中で、かつての日中間の戦争時代における軍事機密文書が次々と公開されていく。その中にはこれまで公には知られていなかった、日本、中国共産党、国民党各勢力の関係性に新たな事実を見出せる内容が含まれている。特に毛沢東が日本と緊密に連携しながら国民党と戦っていた事については、筆者が以前に書いた書籍の内容を更に裏付けるものとなった様だ。前述した様に、それぞれ敵対する三つの勢力の争いが(不謹慎であるが)一番スリリングな展開になる。公式な歴史としては、二度の国共合作を経て、中国国内が外敵日本を撃退するという流れではあるが、実態としてどうであったのか。毛沢東率いる中共軍は我々が知る以上に賢く立ち振る舞っていた様だ。表向き国民党と連携する時期があっても、一貫して共産党の未来を考え続けた毛沢東。721に見られる7割は共産党の強化のため(2割が対国民党、残る1割が対日)であるから、そのためであれば、味方を欺き、敵と手を組むことなど当たり前のことなのだ。
本書はそうした中共軍、毛沢東の考え方を裏付ける戦場での動きを、その際に用いられた電文などで裏付け証明していく様な内容となっている。戦場での動きを時系列にわかりやすく挿絵イメージを用いて解説するなど、かなりわかりやすく記載されている。そしてその三勢力の関係性をさらに複雑にするソ連(スターリン)の動きや、アメリカの動き。歴史としてみても面白いし、三国志の様なものをイメージした読み物としても面白い。