【感想・ネタバレ】AIと生きる 対話から始まる成長の物語のレビュー

あらすじ

本書は、AIの技術解説書ではありません。高校二年生のテトラが、友人や先輩、そしてAIとの対話を重ねながら、AIと人間の付き合い方を探り、自らの生き方を選択していく青春教養小説です。

専門的な予備知識は必要ありません。物語を読み進めるうちに、現代を生きるために不可欠な「AIリテラシー」と「考える姿勢」が、自然と身につきます。

◆物語を通じて、こんな「問い」に答えるヒントが見つかります◆
Q. AIに聞いても「正論」ばかり。どうしたら納得できる回答がもらえる?
→ 中学生・ユーリの疑問から学ぶ、AIへの「質問力」と学びの本質

Q. AIが文章を書ける時代、人間が書くことに意味はあるの?
→ 才媛・ミルカさんが語る「創造性は選択に宿る」という視点

Q. 自分の考えを、うまく言葉にできない
→ AIを「壁打ち相手」に、思考を整理するプロセス

Q. AIがミスをしてトラブル発生。責任を取るのは誰?
→ 天才プログラマー・リサが直面した事件と「責任」の所在

Q. AIの進化で、私のなりたい職業はなくなるの?
→ 予測不能な未来を、不安ではなく「動的に」捉えるヒント

◆あらすじ◆
言葉が大好きな高校二年生のテトラは、放課後の図書室で、数学が得意な「先輩」や、憧れの「ミルカさん」と過ごす時間を大切にしています。
勉強でも悩みでもAIに相談する日々。でも、急速に進化するAIが変えていく未来への不安も隠せません。

中学生のユーリやノナ、リサといった仲間たちとの交流、そして先輩への淡い恋心。
便利な回答に頼るのではなく、自ら考え、悩み、選ぶこと。
揺れ動く感情の中でテトラが見つけたのは、AIには決して生成できない「私だけの言葉」でした。

※カバー画像が異なる場合があります。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

もしも自分が生まれた時、最初からインターネットがあったら、最初からスマートフォンがあったら、SNSがあったら、そんなことを時々考えるようになった。それはもしも自分が生まれた時、最初からAIがあったらということを考え、新しいテクノロジーが自分の生き方や考え方に大きな影響を与えてきたであろうことを強く実感するようになったからだ。

時々、久しぶりに実家に住む両親と話していて、何か調べ物をするとき、自分がインターネットで検索をして調べていたとき、両親は辞書で調べようとしていた。誰かに連絡を取ろうとするとき自分がSNSのメッセージを使っているとき、両親は電話を使おうとしていた。何かを達成するために利用する手段にこういった違いが生まれるのは単純にその手段が身のまわりにあったか、なかったかだけによることが多い。
そしてAI。これを手段として利用するかどうかにも、それをどう使うか、どうとらえるかについても人によって差がある。

数学ガール AIと生きる、はこれまで本編で登場した人物たちが、それぞれどのようにAIと接し、利用し、AIに対してどのような考え方を持っているか、そこに違いがありとても興味深い話となっている。特に中学生や高校生がこれらに対してどのような思いを持つのか、また使う以前に両親から利用を禁止されているような様子も描かれ、半ばスマートフォンやSNSと同じくその危険性の側面が強調されていることもわかる。ただそれが危険であるという判断は大人側の曖昧な主観に基づくものとなっている。

先生から課題の提出で「AIを使ったら減点」と言われたとき、「減点されてもいいならAIを使っていいこと?」ととまどうテトラの様子は滑稽でありとても重要な課題を大人(先生)の側に投げかけている。
AIを有用なツールとして使いこなせるようになるには大人でなければいけないのか、大人であれば使いこなせると言えるのか、子どもは使ってはいけないのか、使っていいとしたらどういう条件で、どういう目的で許容されるのか、SNSに対して明確な指針を出せていないのと同様に、いやそれ以上にAI利用のそれはまだまだ定まっていない。

テトラは高校2年生だから、進路に思い悩むシーンもよく描かれる。大学に進学したいという思いはあるものの、理系に進むか、文系に進むか決めかねている。大人になってどんなことをしたいか具体的に思い描けず、また自分の能力がどちらに向いているのか、理系に進むことができるのか明確な答えがないからだ。これはAIがある時代もないときも同じような悩みだ。
そのことについてAIさんにきいてみても、とてもフラットに客観的な答えしかAIは返してくれない。質問の仕方によって自分の思いにある程度あわせてAIさんは答えてくれるが、それは適切なアドバイスと言えるのか、感覚的に何か違うということをテトラは感じ取っている。逆にAIから答えられない問いを投げかけられることもある。

先輩のことが大好きなテトラ。先輩がミルカさんに好意を持っていることも知っている。ただ気持ちを伝えたかったテトラはその思いをAIさんに伝えながらある日、先輩に渡す手紙を書き始める。そして手紙を先輩に渡すことを『決めた』。

テトラはただ先輩に手紙を渡すはずだった。そこにしたためられた思いが伝われればいい、そう思っていた。
でもテトラは先輩を前にして手紙を読んでもらう前に「あたしは、あなたが、大好きです!」と言ってしまう。
テトラはAIさんとのやりとりでこんな伝え方をしたらいいというアドバイスはもらっていないし、こんな風に伝えたいとも考えていなかった。でも先輩を前にしてその時、そのように伝えたのだった。これが人間というものだということを鮮やかに描ききっていて、AIと人間の違いを明るく描写しきっている。そこには希望さえ感じられる。

この物語は数学ガール本編を多く読んでいれば読んでいるほど、それぞれの人物のAIへの向き合い方、考え方に共感できると思う。単にAIとの向き合い方を知るためにあるのではなく、それは人それぞれに違うし、違っていいということ、そしてそれが変わっていくであろうことをとてもわかりやすく伝えてくれる。

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2026年03月28日

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