あらすじ
遺伝子組換え作物から再生医療まで、暮らしに深く関わる科学技術の問題にどう向き合うか。哲学、政治学など文系のアプローチを用いて科学を見つめれば、サイエンスの「不確実性」や、テクノロジーに埋め込まれた「政治性」が見えてくる。科学技術と社会がいかに深く作用しあっているかを解き明かし、専門家と素人の知性を架橋するSTS(Science,TechnologyandSociety,科学技術社会論)入門の決定版。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
本書は、科学技術の進歩によって生じた弊害に焦点を当て、原発やBSE問題、公害など様々な問題を見ながら、科学の在り方、政府や専門家任せにせず、自分たちが情報リテラシーを身につけ「科学技術と社会」のこれからを考えるべきだと論じている。
本の構成は、問題提起が明確で、段取りや例示を多用して分かりやすく書かれていた。ある発表会で「研究目的が明確なものはその後の展開も良い」「目的を見れば内容の良し悪しが分かる」と聞いたことを思い出した。
各章末に参考文献が示されているので、次の学びにも役立つ「科学技術と社会」の入門書として読めた。
表題の答えとしては、科学は立場や経済的利潤を先行させがちな政府や専門家だけのものではなく、市民が自分たちの生活から社会的に見て考えるべきだということがメッセージではないかと思う。物事を鵜呑みにする前にまず考えることの重要さを実感できる良書
Posted by ブクログ
著者はもともと物理学を学び、そこから社会学に「文転」した方。科学技術社会論という、ちょっと耳慣れない分野について、丁寧に論を展開されています。
同列で扱われがちな「科学」と「技術」をしっかり定義して使い分けてる時点で、個人的にはけっこう高評価でした。中身も、実例を挙げつつ自分の口調でしっかり論じている印象があります。
3.11前に刊行された本ではあるけど、まるで原発事故後の盲目的な「原発No論」vs「それでも原発必要論」を見透かしたうえで、そういう視点では進展がないよ、と諭しているかのようです。
後半、徳島の吉野川可動堰の建設に関して紹介されているのが、「推進派」でも「反対派」でもなく「疑問派」という立ち位置。
本文から引くと、この疑問派というスタンスには、『可動堰が安全かどうか、必要かどうかではなく、「自分たちで納得して決めたい」という願いと、その結果を「自分たちが下した判断として引き受ける」という覚悟が示されている。』のであり、こうした視点を持つことで『僕たちは倫理や必要性、意味や価値に関わる問いも発することができる。科学技術を前にした時には、そうした問いこそ発しなければならない。なぜならそれらこそ、科学では答えられない、答えてはいけない問いであり、僕たちが答えなければならない問いだからだ。』と論じています。
ページ数はそんなに多くないけど、原発論議にもそういった視点で臨む必要があると感じられる、好い意見を提示した良書だと思います。
Posted by ブクログ
・1960年後半に始まった緑の革命(穀物類、高収量品種の発展途上国導入)後70年から90年までに世界の人口一人当たりの食糧供給量は11%増え、飢餓人口は16%減ったが、中国以外の国では飢餓人口は20%増えている。モノカルチャーによって自給に回らない、高収量発揮のためには初期コストが比較的高い、などが原因。
・1960年代半ば~1990年ごろAIDSの治験は二重盲検法を、他の薬を服用せずに行わなければならなかった。