あらすじ
絵画を見るとき、私たちはどれだけその作品のことをきちんと見ているだろうか。あらゆる美術作品にそれらしい説明を加えてみせる図像学(イコノグラフィー)は、一見作品を丁寧に読み解いているようで、実は紋切り型の解釈に押し込め、通り一遍の主題に還元しているだけではないか。本書では、「細部」に着目したアプローチでフランス美術史学の新たな地平を開いた著者が、ベラスケス《ラス・メニーナス》、フランチェスコ・デル・コッサ《受胎告知》、ティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》などの名画を意外な着眼点から読み解いていく。絵画を見ることの真の魅力をユーモアたっぷりに伝える好著。
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Posted by ブクログ
これは面白い!
本書は、美術史家の著者が、名画の「細部」にこだわりにこだわり、その意味するところは何なのかを自在に論じたエッセイ風の論考である。
具体的には、ティントレット《ウルカヌスに見つかったマルスとウェヌス》、フランチェスコ・デル・コッサ《受胎告知》、ブリューゲル《東方三賢王の礼拝》、ティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》、ベラスケス《ラス・メニーナス》の五作品と、あわせてマグダラのマリアの髪はなぜ長いかを論じた一編の計6編の論考が収録されている。
例えば《受胎告知》では、絵の縁をカタツムリがツノを出して歩いているのが紹介され、このような神聖な場面でなぜカタツムリが登場しているのか、それは何を含意しているのかが考察され、《東方三賢王の礼拝》では、バルタザールやメルキオールがややコミカルに描かれているのに対し、黒人のガスパールは堂々と威厳をもって佇まいで画面右端に立ち、強い眼差しで何かを見ているのだが、その描き方は何を意味しているのかが順々と検討されていく。また《ウルビーノのヴィーナス》では、マネの《オランピア》と対比させながら、その画面構成の革新性を鮮やかに解き明かしていく。
これまで自分が、名画と言われるものを、素通りに近い形で絵を見てたきたのかをまざまざと思い知らされてしまった。
本文は、書簡体、対話調、独白形式と様々だが、全体に軽いタッチで論じられていて、訳文もかなりくだけているので、とても読みやすい。ただ、最後の《ラス・メニーナス(女官たち)》は、フーコーの議論も取り上げられているのだが、論旨が良く分からなかったのが残念。