あらすじ
アパートの一室。男は、全身を切り刻まれ、鮮血に染まっていた――。きっかけは、バブル崩壊後のバンコク赴任だった。炎熱の街で、美しい妻は精神が崩壊し、去った。会社を辞め、男の中に堅く封印していた「心の闇」が暴れ出す。売春斡旋、転生ビジネス。堕ちていく男の魂は行き場を求めて彷徨する。松本清張賞受賞作家が生きる意味を真正面から問う衝撃作!
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Posted by ブクログ
バンコクを舞台にした人間模様を背景に、一人の男の葛藤を描いた作品。明野照葉、得意の家族愛や泥臭さについても触れている。
面白かった。
さて前提知識
小乗仏教:悟りの川を自ら泳いで渡って彼岸に辿り着いた者だけが救われるとい思想
大乗仏教:みんなでいっしょに船に乗り彼岸という悟りの岸に渡りましょう的思想
タイは、小乗仏教
タイ人気質を表す言葉にサヴァイとサヌックがある。サヴァイは、OK、fineというニュアンス。サヌックは、funといった面白さ。これにマイ・ペン・ライ(Dont mind) を加えると三拍子揃った感じ。これで日本のビジネスマンは胃を悪くする。
3つのセリフが印象的だ。
死にたい病を克服するには、それが実は生きていたい病だと知った上で、いつ死んでも構うものかと開き直ること。そうすれば、一日一日は貴重で価値あるものになり、おのずと充実し輝いてくる。
生きる死ぬは自分で考えることではないでしょうが。だって、生まれてきたときだって自分で考えて生まれてきたわけではないでしょう。そういうことは人間が考えることではないんだよ。
Posted by ブクログ
再読。
タイのバンコク、アパートの一室。
男は、全身を切り刻まれ、鮮血に染まっていた。
子どもの炉から優秀で、バブル崩壊後に会社の命によりバンコク赴任した男の転落。
バンコクを味わいたくて読んだが、それよりも過去を引き摺らないで生きる、心に突き刺さる内容だった。
2017.7.26
バンコクで沈没している人々の生活を読みたくて再読。
面白かった。
バンコクに滞在しその日暮らしのシュウ、周りの日本人のようにタイの気風に溶け込めず、かといって日本に帰ることもできない。
前回ほど怖いとは思わなかった。
心の闇を抱え、流されるままの人生。
シュウの奥底にある本質、人となりが興味深かった。
2010.11.3
怖かった〜
この作家、こういうものも書けるとは凄い。
タイのバンコク、裏社会に目をつけられたら、どうやっても逃れられないのか・・・。