【感想・ネタバレ】白い部屋で月の歌をのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

表題作について。
この作品のホラー要素はいったいどれか。未練の残った霊たちの醜い執着のありさまか。それを操ろうとする霊能者とその弟の歪んだ心理か。
霊が怖いというよりは、そこまで執着してしまう人間という存在そのものがホラーだと思えてくる。ジュンという主人公が発する違和感の正体が最後でわかるようになっているが、そういう事がある、ということよりも、やはり、そんなことをしてしまうシシィという霊媒師の精神のほうがよほど恐ろしい。
そして、この作品の底に流れる「生きるとはどういうことか」という問いが、もうひとつの「鉄柱(ハガネノミハシラ)」でくっきりと描かれる。
初読の時は、主人公と同じように、「自殺なんて!」とか「死んではいけないのだ」という思いを抱いたのだが、今回読んだときはこの町の風習もそんなに悪くないんじゃないか、と思ってしまった。
「今日はどうする?生きるかい?」と毎日問われるのはしんどいことではあるが、「今日は生きる……ことにするよ」と応えて毎日を生きるのは、実は大事なことのように思う。作品のトーンとしては「しんどいこっちゃで」という嘆息混じりではあったが。

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2012年02月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『白い部屋で月の歌を』『鉄柱(クロガネノミハシラ)』
以外にも、タイトルの方が短編。

巻末に第10回ホラー小説大賞についての批評があって
『姉飼』『相続人』『ぼっけえ きょうてえ』『光 A Light』『蜥蜴』も気になる。。

タイトルの作品のラストの月は、きっと青くて白いのだろうなぁ、と、イメージが浮かぶ。
大どんでん返し、な激しい展開なのに、ラストは静かな余韻が残るというか。。

『鉄柱』は再読すると主人公以外の隣の奥さんや町内会長が気になる。
主人公は…
妻の「こんな静かなところにきても、この病気からは解放されないのね」コレって、主人公の事を指しているのでは??と思ってしまう。

これからの長い人生、主人公はどんな選択をして、どんな終わり方を選ぶのだろう。。。

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2017年11月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【本の内容】
ジュンは霊能力者シシィのもとで除霊のアシスタントをしている。

仕事は霊魂を体内に受け入れること。

彼にとっては霊たちが自分の内側の白い部屋に入ってくるように見えているのだ。

ある日、殺傷沙汰のショックで生きながら霊魂が抜けてしまった少女・エリカを救うことに成功する。

だが、白い部屋でエリカと語ったジュンはその面影に恋をしてしまったのだった…。

斬新な設定を意外なラストまで導き、ヴィジョン豊かな美しい文体で読ませる新感覚ホラーの登場。

第十回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。

[ 目次 ]


[ POP ]
二作とも愛をテーマにしたホラー小説である。

「白い部屋で月の歌を」は、霊能力者の助手が主人公。

地場から引き剥がした不安定な状態の霊をいったん体の中に入れ込むのが彼の仕事だ。

彼の中の霊を導き入れる場所を「白い部屋」と呼ぶ。

彼と霊能力者は、弟子と師匠以上の深い関係にある。

正直言って、こういったストーリーは好みではない。

非現実的な設定を否定するのではないが、胡散臭さが拭えない。

しかし、文章の美しさというか巧さはマイナス要素をカバーして余りある。

「鉄柱」は、左遷により奇妙な風習を持つ田舎町に引っ越して来た夫婦の話。

こういう内容は好きだ。逆に「白い部屋で月の歌を」で受けた文章の美しさは感じられない。

しかし、俗世の中の非現実的な部分がうまく描かれていると思う。

ラスト部分は意表をつき感動的でさえある。

なかなかの読後感が待っている。

[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2014年11月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表題作「白い部屋で月の歌を」、最後はまさかの展開で日本版ピノキオの異常な世界とも言うべき作品。しかしこの思わせぶりな題名はいただけない。
もう一つの短編「鉄柱」は死の選択というテーマ。テーマが重い割に不倫等の下世話な内容もあり読後感は今ひとつ。

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2019年05月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 朱川湊人の出世作。前述の「姉飼」と同じ年に大賞をほぼ「同点」で争ったらしい。はっきり言ってこっちの方が良かった。(作風の好みは「姉飼」の方なんだけど出来が……)   出だしのシーンで「月が啼く」っていうのがとてもいい雰囲気を醸し出している。Coccoの「あなたへの月」にそういうフレーズがあったなあ…などと思いながら読んでいると、いきなりファンタジックでありながらエグいシーンが出てきてどきりとさせる。やや中だるみはするし、ラストのオチは選者も言うとおり「平板」なのだが、全体としてはなかなか良くできた話だと思う。やや荒削りだけど。著者の他の本も読んでみたい。
 もう一つの「鉄柱」も、表題作以上に力作で異常な世界。

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2011年11月18日

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