【感想・ネタバレ】働く人のための精神医学のレビュー

あらすじ

厳しい競争と難しくなる対人関係のなか、非正規労働者や働く女性だけでなく、比較的恵まれた大企業の社員や、精神的にタフだと思われていた人までもが、うつや不安障害になって仕事ができなくなるケースが急増している。本書は、働く人がぜひ知っておきたい精神的疾患や心のトラブルについて、そのエッセンスをわかりやすくまとめたもの。人格の土台にかかわる愛着障害や発達障害、パーソナリティ障害から、適応障害、うつ、気分障害、不安障害、アルコール依存症、薬物依存症、摂食障害、統合失調症、睡眠障害まで、病状、診断、治療や克服のポイントを、多くの具体例とともに解説する。

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Posted by ブクログ

人は誰しも悩みを抱えているし、社会人にしろ学生にしろ全てが順風満帆、大成功に向かって安全航行を続けているということは少ない。ちょっとした困りごとは日常茶飯事、時には頭を抱える様な困難に立ち向かわざるを得ない状況に陥る。連続して訪れる小波大波を前にして無事に乗り越えたり、時に諦めて回避したり、一旦港に戻って嵐が過ぎ去るのを待ったりと、生きる事は航海に近いとしばしば感じる。場合によっては航海中にエンジン故障や操舵不能になる事もありパニック状態を引き起こすが、そのような時ほど冷静に修理に時間をかけたり、代替手段を探すためにじっくりと考えたいものだ。だが、ビジネスパーソン、特に管理職ともなると自分ひとりの自由気ままな船旅とは違うから、部下という船員、時には会社という巨大船団の中で足並みを揃えて目的地へ向かわせる必要性に迫られてくる。
管理職なりたての頃は、上からの期待や目標必達の非常なプレッシャー、更には自身の過剰なまでの意気込みが加わって、かなり無理な荒波に正面から直進しようとしていた事を思い出す。当然自分の精神的苦痛だけでなく、チーム全体のモチベーション低下までを引き起こし、部下は休みがちになったり、朝のミーティングに遅刻したり、中には日中も席を外したきり戻ってこない様な状況を作ってしまった事がある。学生時代はテストも満点、学年トップでないと満足出来ない様な完璧主義に陥った事もあり、その頃の様な2、3時間の睡眠しか取れない事も多々あった。
本書は現代社会のビジネスパーソン向けに精神医学の観点から、心が抱える病の原因と対処法について触れている。もしタイムマシーンで過去に遡れるのであれば、前述した様な若い未熟な自分に早く読ませてあげたかった。逆に冷静に当時の自分を振り返る事ができる歳になった今では、本書の内容には大きく頷ける部分が多く(勿論、自分は精神医学者ではないが、原因や事例の一致は自分を含め、周囲にも多く見られる)、非常にためになる知識である。
特に自分が管理職の様な立場、または多くの人を動かす様な立場の方であれば、必ずチームやもう少し大きな組織の中に、類似する行動様式や思考を持つ人がいる事に気付く。
本書はそうした人々への理解と対処をし易くするだけでなく、読者が何らか自身に一致する部分を見つけて早期対処に繋がるものと感じる。自身で解決出来るレベルなら悪化を防ぐ事ができるし、もう少し進んで肉体的・物理的な弊害が出るなら医師に相談するのも良い(私自身も心療内科には世話になった)。更に薬についての正しい知識を備えることは昨今問題視される過剰摂取への自身へのアラートにもなるだろう(進んでキマりたい様なODへは無力かもしれないが)。特にパーソナリティ障害の章は、誰もが何れかのパターンに当てはまりそうで、誠に申し訳ないのだが、読み進めながら周囲の誰かを思い浮かべては、その方へ相対するシーンを想像しシミュレーションしている自分がいた。

全てのビジネスパーソンへ、そして厳しい競争社会に立ち向かおうとする受験生の親たち、より多くの人が読む事で「生きやすい世界」「優しい世界」が作れる気がするのである。

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2023年11月26日

Posted by ブクログ

職場に潜んでいるいろんなパーソナリティの人、精神病未満の人を思い浮かべながら読みました。
精神病が増えてるのは、核家族化、夫婦共働きによる、母親と乳児の仕事での一時的な離別が多いに関係してる可能性があるというのが興味深い。子供の安全基地を幼少期から与えておかないと不安定な子供になる。自分の辛い幼少期を思い出した。

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2024年12月07日

Posted by ブクログ

これで精神科の勉強ができた。今年は岡田尊司先生の本で精神科の勉強をしようと決めた。とても分かりやすいし、文章も読みやすい。著名人の事例が出てくるのも関心をひきやすい。うろ覚えだった知識の補強もできた。

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2023年01月15日

Posted by ブクログ

 働く人のために知っていて欲しい精神疾患、その知識や対処についてまとめています。医療従事者や労務担当には、各疾患を掘り下げてケースも掲載されており、知識を深める点でちょうど良いのかも知れませんが、そうでない人にはやや難しく感じられる内容です。それぐらい細かくフォローされています。
 最終章の睡眠障害については、比較的わかりやすい内容ではないかと思います。

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2022年02月14日

Posted by ブクログ

働いてる人に知っておきたい精神疾患や心のトラブルについての知識や対処法について書かれていていて参考になった。

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2013年05月28日

Posted by ブクログ

‟働く人のための“とあるが、それに限らない。というよりもこれは良い意味ではなく、どちらかというと、もっと“働く人”に特化して欲しかったくらいだ・・と書きながら気づき、反省したが、恐らく全てが“働く人”であった。母子の愛着の話を働く人と全然関係ないじゃん!と思ってはいけない。母は働いているのだ。子供たちの症例についても、これは働きながらケアしなければいけない‟働く人目線“であって・・と、そう思って読み始めよう。

― たとえば、アメリカでADHD(注意欠陥/多動性障害)の診断を受けた子どもの数は、日本の児童の有病率の約二倍、児童全体の一割近くに達しようとしている。ADHDとは、落ち着きがなく、不注意で、衝動的な傾向を特徴とする代表的な発達障害の一つだが、一割もの子どもが、先天的な脳機能の障害をもつというのは、何かおかしくないだろうか。そのことに関連するが、ADHDのリスク遺伝子として知られるドーパミンD4受容体の遺伝子多型は、一般人口の一割くらいに見られる。この遺伝子タイプをもつ人では、新しいものに対する好奇心が強く、活動性が高い。過去に大移動を行った民族では、このタイプの人の割合が高い。つまり、ADHDになりやすい遺伝子タイプは、動乱の時代を生き延びるのに有利だった可能性を示している。だとすると、この遺伝子をもつことは、けっして「欠陥」なのではなく、むしろ有利な「特性」だったと考えられる。少数派のタイプを、平均的なグループを基準に、「欠陥」とか「障害」と見なすことの危険性が危惧される。

上記は非常に良く分かる。何もかも「標準から逸脱するものは異常」とするのはおかしい。標準的な精神状態の物差しは、却って人を追い込んでいく。

― ここまで、さまざまな精神的な疾患を見てきたが、すべての精神疾患のなかで、もっとも頻度の高いものというと、それは睡眠障害、いわゆる不眠症ということになる。睡眠の悩みを抱える人は、全人口の二割とも三割とも言われる。睡眠時間は、喫煙や運動、血圧やコレステロールといった主な生活習慣病の原因よりも、死亡率と強い関連を示す。良い睡眠がとれるかどうかは、健康維持と長寿にとっても、とても大切なのである。ことにストレスの多い現代人にとって、いかに良い睡眠をとるかということは、心身の健康を維持するうえで、必須のサバイバル技術ともなっている。

だとしたら、2~3割もいる睡眠障害は「異常」ではないのではと思いたくなるが、やはり、これが「死亡率」と関連するようになると、精神的な疾患とすべきなのかもしれない。パーソナリティ障害や鬱病なども「生きにくさ」と突き合わせて考えるべきか。人間が社会に合わせるのではなく、社会が人間に適合してくれれば良いのだが。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

管理職の基礎知識として必要なので読んでみた。
かなりの数の病名と症状、事例が載っていて参考になるけど、そんなに詳細な薬の説明はいらないなと思う。
これだけあると自分もどれかに当たるのではと心配になったり…

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2014年01月18日

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