あらすじ
消費者の「認識」を変えることが
“売れる”“選ばれる”商品をつくるカギ
驚き 象徴 現象 納得
4つの要素を駆使して
商品やブランドの市場価値を高める!
多くの企業が「認知度を上げれば売れる」と信じ、商品やブランドの認知度向上のために毎年莫大な広告費を投じています。マーケティングにおける「認知度」とは、商品名やブランド名を見聞きしたことがあるか尋ねた際に「知っている」と答える人の割合を指します。しかし、この数値は必ずしも売上とは比例しないという現実があります。調査会社YouGovが米国で実施した調査“Most persuasive brands 2025”によると、食品カテゴリーでは調査対象者からの認知度が60%を示しているのに対し、購入意向を示す人はわずか3%であるとの結果が報告されています。
本書の著者は、約30年にわたりマーケティング・PRの現場で数多くのブランド再生やヒット商品の創出に携わってきました。実際に企業のマーケティング担当者の多くは認知度向上を目指してPR施策を依頼することが多いですが、売上を伸ばすために最も重要なのは消費者の「認知」を高めることではなく「認識」を変えることだと著者は主張します。これは、消費者のなかで固定化されてしまっている商品への認識にまったく新しい認識を意図的に上乗せして提示することで、「知ってはいるけど欲しくはないもの」を「欲しいもの」に変える手法ともいえます。
とはいえ、人の認識を変えることは簡単なことではありません。そこで本書では、認識転換の具体的な考え方と戦略の立て方を、「驚き」「象徴」「現象」「納得」という4つの要素にまとめ、著者が携わってきた数々の実例とともに体系的にまとめています。認知を追い続けるマーケティングから抜け出し、自社商品のヒットを目指すすべてのマーケティング担当者にとって、目から鱗の一冊です。
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Posted by ブクログ
「誰に届けるか」ではなく、「どんな状況で思い出されるべきか」。
マーケティングの議論では、共通言語として「AIDMA」や「AISAS」といったプロセスモデルに頼りがちです。しかし、それに縛られすぎると「ファネルのどの段階を手厚くするか」という“直線的な強化”の議論に終始してしまうことに、以前から違和感がありました。本書を読んで、そのモヤモヤが見事に晴れました。
従来のプロセスモデルが「認知から購買までの動線」を整理するのに対し、本書が設計の対象にしているのは、その手前にある「顧客の頭の中の前提(=認識)」です。
「知っているのに買われない」という課題を、単なる“認知不足”ではなく、“顧客の中の期待値が固定化され、購買状況と結びついていないから”だと捉え直す。この視点の転換により、議論の方向性が大きく変わりました。
STP分析が「誰に・何者として届けるか」という地図作りだとすれば、本書は「顧客の世界観の中で固定化された意味をほどき、組み替える作業」と言えます。競争軸をずらすブルーオーシャン戦略にも通じますが、それを抽象論で終わらせず、「驚き・象徴・現象・納得」という要素に分解し、現場で使える“作業レベル”に落とし込んでいる点が非常に実践的です。
また、個人的に最も刺さったのは、AIDMAの「M(Memory)」を、単なる『記憶』ではなく『想起』として捉え直している点です。「買う瞬間に思い出されなければ、存在しないのと同じ」。だからこそ、CEP(カテゴリー・エントリー・ポイント=思い出される入口)を増やし、顧客の想起集合に入り直す。これは既存のファネル改善の延長ではなく、根本的な「入口の再設計」だと感じました。
今後実務で試したいのは、AIDMAを捨てるのではなく、その位置づけを変えることです。
まずはAIDMAやジャーニーマップで「どこが詰まっているか」を診断する。しかし、その解決策は直線の強化に求めるのではなく、「認識の転換(意味の組み替え)」と「CEP(想起の入口)」から逆算して設計する。「誰に届けるか」だけでなく、「どんな状況で思い出されるべきか」を起点に企画をつくる。そんな新しいアプローチに挑戦したくなる一冊でした。