【感想・ネタバレ】沈む日本とカオス化する世界のレビュー

あらすじ

戦後日本モデルの限界と、カオス化する世界秩序の中で、沈まないための「日本再生論」

統治コストを嫌う権力が中産階級を壊し、人を信じる制度は監視へ傾く。役に立たない人を排除する空気のなかで、言葉を失った社会はさらに統治しやすくなる。画面に奪われた身体感覚と共感に寄りかかる政治が「改革」を空洞化させ、単純な物語が人と社会を傷つける。世界では同盟の前提が揺らぎ、安保を他国に委ねてきた日本に選択が迫られる。コモンが痩せた国で、何を守り、どこに居場所をつくるのか。複雑さに耐える知性への招待。

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Posted by ブクログ

いつもながら、内田樹の主張はユニークで虚を突かれる。本書も、どの文章をとっても鋭いな、と感じたし、読んでいて面白かった。
第3章は、「改革と加速主義、単純主義-壊れていく政治と社会」と題された章であり、表題に沿ったいくつかの文章が収載されている。どれも面白い主張なのだが、「複雑さに耐える知性が社会を救う」という文章が面白かった。何かうまくいかないことがあった時に、その原因となるものを単純化した文脈の中で特定し、すべてはそれが悪いという「陰謀論」のような論を展開したりするのが、その典型であると内田樹は主張している。
これは、けっこう日本の中でもあるのではないかと思う。「緊縮財政を主張する財務省が諸悪の根源であり解体しないといけない」「消費税が景気を悪くしているので、消費税は廃止すべき」「失われた30年の中で大部分の期間、政権を握っていた自民党こそ今の日本の低迷の責任を負うべき」「日本の治安は悪化しており、それは移民が増えているから」等々、枚挙に暇がない。
しかし、そんな単純な話があるわけがない。日本の経済成長率が、先進諸国の中で低くあり続けているのは確かであるが、その理由が、財務省、消費税、自民党等のうちの一つの理由であるほど、単純な話であるはずがないのは、少し冷静になれば、直感的に分かると思う。
アベノミクスという経済政策が、かつてあって、日本の経済成長率が低いのはデフレ状態にあるから(同じことを繰り返しているだけであるが)、意図的にインフレ雰囲気をつくる必要があり、物価上昇率目標を2%に設定すべきである。物価を上昇させるためには、マネーサプライを増やす必要があるので、日銀にマネーサプライを増やさせる。さらには、機動的な財政支出を行い、政府支出も増やし、GDPの押し上げも図るという政策がとられた。経済成長率が低いのは、マネーサプライが少ないからという単純な主張がなされ、それに対応する政策がとられた。第二次安倍政権の間、この政策がとられたが、結局のところ、思ったような結果は得られなかった。経済成長率が低いのはお金が足りないから、というような単純な話ではないはずなのに、そう言った方が分かりやすいので、そのような主張がなされ世間的には受け入れられた。今となっては、アベノミクスという政策があったことも忘れ去られており、どこが考え違いだったのかというような検証もなされないまま、政策は「使い捨て」にされていく。政策の理路がはっきりしないため、アベノミクスの何が悪かったのかが検証すら難しい状態を「使い捨て」と私は呼んでいるのであるが、このような物事を単純化した政策が大した理由もなく行われているのではないか、というのが内田樹の主張と理解した。それには賛成する。
先の衆議院選挙では、しかし、そのような単純な政策論争すらなかったような気もする。高市さんを選ぶか、野田さん+斎藤さんを選ぶかという、更に単純化されたイシューが選挙結果を決めたのだと感じる。
どうすれば良いのか、というのは難しいのであるが、内田樹の言うように、こんなに物事を単純化せず、複雑なものは複雑なまま扱うという習慣を持って、モノを考えるということなのだろう。

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2026年03月11日

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