あらすじ
この本はいまも変わりつづけている――帰りたいあの場所へ思いを馳せながら新たな生活をつくりゆくこと。震災後、福島にゆかりをもつ人々の声にひたすら耳を傾け、そこから浮かび上がった7つの語り。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
以前、文芸誌で本書か東北モノローグを読んだ記憶がある。
いま急に読みたくなったのは、震災があった日が近づいていたからか。
地震や津波、液状化、孤立地帯、SOSの文字、遺体安置所、当時の記憶は色濃く残っている。でも、今より知識の少なかった私は原発のことをあまり理解できていなかった。
放射性プルームが降ったこと、そのことを知らずに地域の方は生きるために外出していたこと、食物への影響など、本書を読んで衝撃を受けたことが何個もあった。あまりに無知だった。
永井玲衣さんの解説がまたとても良かった。
歴史的な出来事は教科書に載るけれど、それによって小さい出来事に纏められてしまうことがある。語り手がいるこの作品は、この忘れてはならない出来事を人間の温度を保って伝え続けてくれる。
単行本から文庫化するにあたり、掲載されなかった編があるらしい。その意味では単行本をお勧めするが、この解説は多くの人に読んでほしい。
次は東北モノローグを読もうと思う。
Posted by ブクログ
題名はモノローグとなっていますが、東日本大震災に遭われた方々のインタビュー集です。
淡々と、本当に淡々と、あの日以降の状況が語られています。
本文に著者自身の質問や言葉は全く出てこない聞き書きとなっていますが、こちらがかえって言葉を浮かび上がらせています。単なる事実の記録ではなく、読み手の想像の余地を残しており、それがかえって共感を強いものにしてくれる、そういった本です。
ニュースにはならず、決して表にも出てこないのですが、そこには生活があり、人々の想いがある。一読して、その思いを強くしたのでした。
Posted by ブクログ
著者は福島の被災者たちと対話・傾聴を重ね、本来は対話(ダイアローグ)によるドキュメンタリー作なのでしょうが、著者の発話や問いかけは消され、語り手の独白(モノローグ)の形式をとっています。
会話が消されることで、当事者心理がより深く描写され、揺れる心情や真意をあたかも聴き手に話しているような…実際、私たちは読んでいるというより聴いている印象です。
語り口から人物の輪郭が浮き立たち、表情まで想像できるような錯覚を起こします。どの物語からも、彼女らの悲しみ・苦しみ・無念さは察するに余りあり、被害の凄まじさ・状況の深刻さは想像に余りあります。
語り手が全部女性ということにも意味がある気がします。戦争や災害が語られるとき、大概男性目線で女性の立場が蔑ろにされているケースが多い気がするので…。女性の声は日常生活と密接に関わり、それらをたくさん拾う意義は大きいでしょう。
彼女たちの口調からは、時にたくましさも感じますが、その影にはもちろん難局に向き合った痛み、やるせない思いが表れます。
著者は、そうした逡巡する様子をも語りとし、生身の人として今も暮らす姿を知らしめてくれます。
著者の小説『想像ラジオ』(2013)は、被災地から発信する想像のラジオ番組を通して死者の声に耳を傾けるという内容でしたが、本作は当事者が語ってくれるリアリティーにあふれ、対極にある気がしました。あとがきと永井玲衣さんの解説も心に沁みました。『東北モノローグ』もいつか読んでみたいと思います。