あらすじ
「隠喩と神話は人を殺す」.ソンタグ(1933-2004)は,結核と癌というふたつの病いをとりまくテクストを読み解き,病いに付与される過剰な「意味」がいかに人びとを支配してきたか,その暴力的なありかたを見事に解体してみせた.エイズという「伝染病」の分析とともに,今なお鮮烈な「反解釈」実践の書.(解説=都甲幸治)
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
過剰に意味をあたえすぎることへの警鐘はさまざまな物語に見られる気がするけれども、そのことを病の主題から掘り下げてくれている。女性のファッションの価値観がロマン主義的な結核のイメージに由来するという指摘が面白く、しかしともすれば効率性重視の資本主義社会でロマン主義的な二項対立を打ち立てかねない我が身を顧みたりもした。「隠喩としての病い」で語られた、病の恐ろしさを悪に投影したのが逆投影されて病が悪の比喩になり、それが「侵入」のような語彙で語られて外部や敵を作り出すことが、「エイズとその隠喩」では愛国心・排外主義の話にも繋がり、コロナ禍から連綿と続く現在に思いを馳せる。核戦争などに加わってエイズが喚起した終末のイメージは、コントロールしがたい不安に抵抗する手段であり、(現実と枝分かれした)シミュレーションとしての現実・イメージによって現実を保証せざるをえないわれわれのために、未来に投射されたイメージとして、現実の出来事を保証する。病に限らず、受け容れがたい現実に対して過剰な意味づけや物語化をしてしまいがちだけれども、そういう欲望に自覚的でなければならないと思った。
Posted by ブクログ
新しいことは言っていないが、病に関する隠喩(というよりイメージな感じはした)がセクシュアリティなどと同様、言説により色濃く作られていることが分かる。(特に結核と癌の比較が鮮やか)
政治的言説に病が利用されてきたというのもよく分かったが、都甲が解説でも言っていた通り、結核のイメージを作り上げたのはロマン主義で、立ち向かうべき悪が権力だけではないのがややこしいところな気がする。
Posted by ブクログ
病気が他所からもたらされるもの、内ではない自分たちでないものというイメージから外来性、軍事的な比喩としての侵略(p84〜)、神罰、そして病気の被害者=当事者に付与されるスティグマなどの様々な隠喩は国、社会、共同体のどのレベルでも行われる。
それらは医学的な判断を歪め、対象の格下げから結核に見られるようなロマン化・美的価値の付与にいたるまで、きわめて恣意的な意味を病に与える。
(悲しむこと、つまり無力であることは、p44)
(罪人や貧民と結びつけられる病気に対する処方としては、中流階級の価値観を、つまり規則正しい生活習慣、生産活動、感情の自制などを身につけることが必ず勧められた。p173)
(それは病気の人々を排除し、烙印を押すにあたって、過剰動員をかけ、過剰描写をし、しかも強力に貢献するのである。p221)