あらすじ
父の仇を十二年間追う侍と、仇の息子。
交わらないはずの二人を繋ぐのは、“侍”の矜持。
直木賞作家が初めて挑んだ、武家小説。
仇討ちとは、いったい何なのだ――。
十二年前に父が殺され、以来、仇討のために諸国を巡る清史郎。しかし、仇の手掛かりは見つからない。病死した母の弔いに故郷・安良藩に戻った清史郎は、ある少年を助け、彼に剣の手ほどきをすることに。しかしその少年・隼人は、仇の息子だった。出会うべきではなかったと思いつつ、見限ることのできない感情のもつれ。仇の行方、そして藩内政治――。清史郎が最後に下した決断とは。
江戸時代を生きる「人」を描いた、傑作ドラマ。
感情タグBEST3
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ラストまでつながる構成が緻密
ただ、主人公の父を殺した仇は切腹していたのだから、仇が残した遺書だけを隠せば、主人公は12年間も相手の存在しない敵討ちに無駄な年月を過ごさなくてよかったのではないか。
文体が美しい
Posted by ブクログ
主人公・多賀清史郎は、父・織部が斬られてから十二年間、仇を求めて諸国を巡ります。しかし手掛かりは得られないまま、病死した母を弔うため故郷へ戻ります。
そこで出会ったのは、父の仇・渡辺幸太夫の息子・隼人でした。正体を隠したまま剣術を教えるうちに、清史郎は隼人を「仇の息子」ではなく、一人の少年として見つめるようになります。
読み始めは仇討ちの物語だと思っていました。しかし、この作品が描いているのはそうではありませんでした。
父が斬られた理由を知ったとき、私は「本当に命を奪うほどのことだったのだろうか」と疑問を抱きました。また、藩の事情によって真実を知らされず、12年間も放浪することになった清史郎の苦しさが胸に迫りました。
印象に残ったのは、「変わらぬ者なぞどこにもいないのかもしれぬな」という言葉です。年月は人を変え、自分自身も変えていきます。その変化を受け入れることは簡単ではありません。しかし、人は変わることができるからこそ、父の代から続く憎しみを次の世代へ受け継がない選択もできるのではないかと感じました。
清史郎が最後に下した決断には、正直、私は賛成できませんでした。それでも、人にはそれぞれ譲れない思いや生き方があります。その選択を尊重したいと思わせてくれる作品でした。
仇討ちを描きながら、問いかけているのは、人は過去とどう向き合い、変化を受け入れ、憎しみをどこで手放すのかということではないかと思いました。
人は変わることができるからこそ、憎しみの連鎖も断ち切ることができるのではないか。そんな希望を感じさせてくれる一冊でした。
Posted by ブクログ
時代小説が今、楽しい
なぜだろう…たぶん…人っていつの時もあまり変わらない、って思えたり、暮らしって同じなんだな、って思えたり…古の人達とどこか繋がっている感覚が面白いのかもしれない
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仇討ちという使命を帯びて国許を離れ12年もの間、仇を探し回った清史郎だが、いざ故郷に帰ってみるとそこに待っていた「真実」とは…
仇の子供達、昔の想い人、旧友、恩師…
共に過ごした時間が様々な色を成して清史郎を包み込む…秘め事が明かされる…果たして清史郎の答えは?
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人間ドラマでもあり、謎解きでもある
ミステリーとしても上質だと思う
そして、つくづく主人仕えの武士も勤め人となんら変わりない…組織の歯車として日々、あくせくと働き意に沿わぬ事に苦心しストレスに苛まれ、清濁合わせ飲むことを「仕方なし」とする諦観…
清廉潔白に生きようとする清史郎を「青臭い」「大人になれ」と揶揄するも、本当はそんな人間が羨ましいのだろう…もしも、自我を通そうとするならば、それなりの代償を払わなければならなくなるから
それに比べて、「女性」のなんと逞しいこと!
愛人を堂々と囲い、その世話をさせる夫をもつ商家の女将…テキパキと仕事をやりくりし、清史郎に助け舟をだし、歯に衣着せぬ物言いに恩着せがましい気配などなく、全くもってイケメン!自分のことは自分で決める、そのキップの良さたるや…ジクジクと煮え切らない男性どもを颯爽と置き去りにする感じ…
ご立派で、胸がすく!
そして、清史郎の想い人であった早苗
「烈女」と評される彼女の肝の座った言質!
政だ、お家だ、と走り回る男性陣に振り回されるのはごめん被る、知りたい事、知らなければならない事は自分で成す、という決意
その行動力と物怖じしない度胸の良さ!
藩のため、政のため、主人のため、と、自分の理を犠牲にして本意ならざる人生を歩むことを余儀なくされる男性人に対し、この女性陣の自由奔放さが対照的に描かれていて…なんとも…
「男って可哀想」とか「男って不器用」とか…確かにそういう事もあるけれど、個人的にはそんな男性陣が悲しくなるほどに、なんだか愛おしい
どちらがより過酷かとか、正しいとかではない
漢には漢の、女には女の、それぞれの修羅があり、闘い方がある、という話し
翻弄されながらも、心の中で泣いて、怒って、迷って、、、命までも捧げてしまうような不器用さ、生真面目さ…それらがなぜか悲しいくらい愛おしい
道理や忠義、誇り…
清濁合わせ飲むことで果たして人はどんな答えをだすのか…清史郎の答えは…この時代にしては「理想」すぎて…
できれば、その後を見てみたい
清史郎が江戸かどこかで健やかに生きていることを願ってしまうと同時に、郷里に残った人達もまた幸せであってほしい、とも思う
清史郎の12年が無駄ではなく、この答えに行き着くための長い旅路だったのだ、と思えたことで報われるだろうし、仇の子供と結んだ絆が、この先、蕾となり花を咲かせ実りとなって、また再会できたらどんなに幸せか…そんな未来を待ってしまう
とにかく、丁寧に描かれた秀逸な一冊でした