【感想・ネタバレ】終わらざる夏 上のレビュー

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ネタバレ

戦後75年、絶対にしてはいけなかった日米開戦、浅田さんの「終わらざる夏」でそれを実感したかった。終戦間近、岩手県に3枚の赤紙が届く。菊池(東大医学部学生)、片岡(英語翻訳家)、富永熊男(軍曹で戦争の達人)。この3人が根室港から北の孤島・占守島に向う。この3人にはそれぞれの人生があり、家族がいる。赤紙を届ける役人、受け取る家族。「おめでとうございます」「ありがとうございます」。この何とも言えない絶念の挨拶。無数に届く赤紙の数だけ、家族が絶念してしまう。絶対にしてはいけなかった戦争、鎮魂とともに読んでいく。

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2020年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

歴史物は、よく知られた事件に関してはおおむねネタバレである。
現代に生きる我々は、昭和20年の8月15日に、玉音放送で全日本国民に敗戦を知らされるということを知っている。
だから、昭和20年7月などという日付を見れば、ああ、もう少しで終わるのに、と思う。
しかし、当時でももう少しで終わるだろうと予感していた人たちがいたとて、赤紙が来たならば逆らうことはできないのである。
今私たちがこれを読んでどうすることもできない。
しかし、知っておくことくらいは出来る。そして大切だろう。

時に、昭和20年7月。
すでに沖縄は陥落し、軍は本土決戦に向けて最後の「根こそぎ動員」にかかっていた。

プロローグでは、その「動員」の仕組みが描かれる。
今まで、よく知らなかった部分だ。
参謀本部は動員の人数割を決めて下命するだけ。
どこに何人。ここでは具体的な名前は上がらないし、個人の顔は見えない。
それが地元まで下ろされて初めて、人数に合わせて名前が与えられ赤紙が下るのである。
「地元」で、人員を選び出す苦悩。
人口の少ない地方の村ゆえ、名簿のほとんどは顔見知りである。
自分が兵隊に行くより辛い。
戦争が終わったら腹を切って死ぬつもりだ、と村役場の戸籍係兼兵事係。

この「根こそぎ動員」で岩手県から招集された、主要人物となる人たちが、最果ての占守(シュムシュ)島に集結するまでが上巻である。
本土決戦を想定した、人数的にも異常な動員に加え、「特業」動員では単なる頭数合わせではなく、確実に「使える」人物を選定しなければならず、村の兵事係は血眼になって名簿を繰る。
結果、【首を傾げるような招集】となったのは、彼らの持つ『特業』が理由だった。

・片岡直哉(かたおか なおや)は【兵役年限ギリギリの45歳もあとひと月残すのみ。極度の近眼】で、徴兵されたことはない。
東京の出版社で翻訳の仕事に就いていた。『英語に堪能』である。
・菊池忠彦(きくち ただひこ)は【東京帝大医学部に在籍中】だったが、実は岩手医専を出てすでに『医師免許』を持っている。
もう、岩手県は無医村だらけである。
・富永熊男(とみなが くまお)はタクシー運転手。この男だけは歴戦の軍曹で、金鵄勲章を授与されている。ただし、名誉の負傷で【右手の指が三本失われている】。
現在と違い、『運転免許証』を持つ人物は多くはなかった。

皆の来し方が語られ、すっかり感情移入してしまっている。
ここから、誰が生き残り、誰が命を終えるのか・・・
タイトルが示すように、彼らの戦いは、8月15日には終わらないのだろうな。

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2023年07月21日

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浅田次郎はお約束の「鉄道員」とごく一部の短編集を手に取ったほかはあまりこれまで縁のない作家であったのだが、ほかの多くの人と同様、「終戦後に北方領土に取り残された日本軍がいた」という歴史的背景に興味をひかれて読んでみることになった。

北方領土どころか当時の日本領の最北端、カムチャッカ半島のすぐ南、占守島(しゅむしゅとう)の日本軍は終戦の8月15日以降にソ連軍の猛攻を受け、これを撃退しながら、最期は武装解除されたらしい。この部隊に様々な背景を持った(多くは招集された一般市民が)集まってくる経緯が小説の多くの部分を占める。

大本営が策定する何十万人単位の本土決戦計画が各自治体に下達され、県庁、さらには村役場と降りてくる過程で召集令状の宛先となる個人名が特定されていくシーンは綿密な取材を想像させ非常に読ませる。

また、そうした応召兵だけでなく、満州の精鋭部隊も配置転換されてくる。彼らは行き先を知らされない。(激戦の)南方か北方か、まさかとは思うが本土帰還か。戦車がディーゼル型とガソリン型に分けられ、ガソリン型の隊員が「寒さに強いガソリン部隊は南方はない」とひそかに安どするシーン、港で防寒服を返納する命令がなく兵士たちが喜びにどよめくシーンは胸に迫る。

同時に作者は東京の留守を守る家族も丁寧に記述する。調布から京王線で新宿に通勤する人がいる。新宿の伊勢丹はにぎわっている。が、変電所を爆撃された京王線は新宿手前での折り返し運転となり、伊勢丹の壁には機銃掃射の跡が残る。このあたりの描写は「ついこの間の非日常」を読み手に強く意識させる。

物語終盤では、鉄道員さながらのファンタジーめいた展開が「さあここで泣いてください」とばかりに展開し、そういうのはちょっと、という人もいそうだ。というか私もその一人だったのだが、それでも作者の思い、メッセージは強く訴えかけてくる。浅田次郎は集英社の「戦争×文学」の編纂を担っている。「記録」ではない「記憶」を残そうという意思はこの小説にも強く表れているように思う。

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2019年01月03日

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ネタバレ

暗い内容で気が滅入り、読む終えるまでに何ヶ月もかかってしまった。
入れ替わり立ち代わりそれぞれの立場の人間が語り手となっていく手法だったが、読みづらいと感じたときもあった。
占守島の戦いのことは全く知らず、たまたま聞いていたラジオ番組のゲストが著者で本書の紹介をしていたため、手に取った。
日本でこの戦いの知名度は低いが、教科書に載せても良いのではないだろうか。

結末は救いがなく、心が重くなった。
生き残った人々はシベリアに送られ、無事に帰国できたかどうか胸が痛い。
娯楽のための読書はすばらしいが、ときどき本書のようなジャンルを読むことは大事なことなのかもしれない。

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2018年03月07日

Posted by ブクログ

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この話は、第二次世界大戦末期の最北の島「占守島」の話。

いろいろな立場の人が出てきます。
東京でこの戦争の作戦をまとめている軍人、
東京で働いていて召集されるはずがない45歳の翻訳家、
そして焼け野原に唯一残った近代的なアパートに暮らす妻
父の召集を知り疎開先から脱走した息子と
道を共にした女の子
二人の疎開先の先生。
二人と夢を介して出会ったロシア兵。
何度も召集されてその度に話を盛り立てられて金鵄勲章をもらった指のない軍人、
召集される人々のため病気を偽って申告し続けた医者、
体が小さくて戦車に乗れない少年兵とそれを教育する老兵、
大本営から終戦の際に立ち回るために占守島にやってきた参謀

などなど

本当にたくさんの人が登場する。

そして最後にはそのほとんどが死んでしまいます。
その死はなんだかとてもあっけない。



終わらざる夏を読んで、
一番に思ったことは
信じていること、想ったことに関わらず
運命が定められた人生が
あの時代にはいくつもあった、ということ。
日本だけじゃない。ロシアだけでもない。
たぶん、戦下ではみんなそう。

戦う理由がわからない。
でも戦わなくては殺されてしまう。
そうお互いが思いあって
言葉を交わしてわかり合う暇もなく殺しあう。

銃を撃つそれぞれの個人は、
相手に家族があることも、ましてや命があることも
お互いにわかっているのに、
戦局のために戦う、殺しあう。

何でもあって安全で自由な現代を
あの戦争で死んだ人たちに見せてあげたい。
この時代に生まれついていれば、
きっとあなたも選ぶことができただろうね。
そして本来はあなたもそうあっていいはずだった。
言葉が通じていれば、わかりあって
殺しあう必要なんて何もなかったはずなんだ。


よく、お国のためにって戦って死んで行く日本兵の映画があるよね。
でも、それは洗脳されていたわけではなく、
心の中にある生きることへの気持ちを
お国のためって言葉で押し隠すために
誰かが言い始めて、広まったんじゃないかなと思った。
何かのためにという理由がないと戦えなくて死ねないから。
命を投げ打って戦えないから。


本の中で、このあとの世界では
人々は戦争なんて愚かな行為はしないだろう。
この戦争でそのことを知るんだと書いてあったの。
きっとあの戦争に関わった人は
一人の例外もなくそれを望んだんだろうな。
こんなことはもう世の中から消える、
そのために今自分は死ぬんだと思って
たくさんの日本人や敵国の人々が死んだんだと思う。
それなら無駄ではないって。

でも、まだしてるよね。
もうすぐ70年になろうとしてるのに
今も地球上には戦争がある。
くだらないね。
愚かだ。


国防軍の話。
自衛隊は盾だと思うのです。
自衛隊の任務は戦うことじゃなくて
「守ること」

災害から人を守る
隣国の脅威から人を守る
もしものときに、攻撃から国民を守る

戦いを仕掛けられないというのは
日本が第二次世界大戦から得た宝物だと思う。
おかげで日本には戦争がないし
たぶんこれからもない。
日本人は戦争が勝っても負けても失うものしかないことを知ってるから。
戦う術がないというのは、それだけで平和への一歩を進んでることになるよね。
今の日本なら、戦後日本がしてきた世界貢献のことを考えたら
戦わない日本に対して戦争を仕掛けた国は
世界から孤立するだろうなと思う。

あの頃の日本とは違うから。
戦後、日本は武力で権力を得るのではなく
優しさで心からの信頼を得る方法を選んだ。

外国の人は決まっていうよね。
日本人はみんな優しいって。




終戦のエンペラー見ようと思います。
今年は終わらざる夏をきっかけに
終戦について考える夏にしよう。

#ブログのコピー

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2016年04月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

終戦近くに訳あって召集された人たちが今後どうなっていくのか期待。

序章は参謀が苦慮しながら動員計画を作るところからはじまり、その計画に応じ召集する人物を決める担当、赤紙を届ける配達人とそれぞれの苦労を描いた後に、赤紙により呼び出された片岡、菊地軍医、鬼熊と共にシュムシュ島へ向かう。

当事者それぞれを描くとによりこの戦争に対して誰もが疑問を抱きながら生きていたことが伝わる構成。
さすが浅田次郎!

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2021年12月26日

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