あらすじ
注目度ナンバー1の著者による少年小説の傑作! 「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」──家にも学校にも居場所が見つけられない小学生の慎一と春也は、ヤドカリを神様に見立てた願い事遊びを考え出す。100円欲しい、いじめっ子をこらしめるなどの他愛ない儀式は、いつしかより切実な願いへと変わり、子供たちのやり場のない「祈り」が周囲の大人に、そして彼ら自身に暗い刃を向ける……。鎌倉の風や潮のにおいまで感じさせる瑞々しい筆致で描かれ、少年たちのひと夏が切なく胸に迫る長篇小説。 第144回直木賞受賞。
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Posted by ブクログ
一体、何匹のヤドカリが炙られただろうか。海から取ってきたヤドカリを『ヤドカミ様』として崇め、少年たちは願う。心が『無』になるまでの過程が丁寧に描写されており、かつての言葉にし難い感覚に共感を覚えた。心の廃退とヤドカリの子の成長の対比が印象的。物語の後半~終盤にかけての畳み掛ける疾走感。暗闇の中の月は悲しくも美しかった。
Posted by ブクログ
何も知らずに読み始めたので、いつ殺人事件が起こるんだろう、、と思ってたら読み終わった
読後感がなんとも言えない、叫び散らしたい
小学校高学年ともなれば思考は大人、でも経験値の浅さからか物事の判断力は子供、みたいなちぐはぐさが、なんとも懐かしいような、恥ずかしいような気持ちになった
あと爺ちゃん好き
Posted by ブクログ
両親の離婚、クラスに馴染めず不登校、母が出会い系で別の男を探してた、わたしの中学生時代の何もかも嫌になった時期を思い出した。
1つ嫌なことがあると、他のことも上手くいかないって思ってどんどんネガティブ思考になって抜け出せないんだよなぁ。周りの些細な表情や言葉も敏感に感じ取っちゃって生きづらかったあの頃は...。
「何か、粘着質の音が聞こえた。鳴海の父親の、微かな声。同じくらい微かな、純江の声。そしてふたたび静かになった。その静けさの中に、先ほどと同じような粘着質の音が、また聞こえた」(P222)
慎一が車にて、母と鳴海の父の密会現場に潜むシーン。口付けを「粘着質の音」と表現してるのが印象的。母が他の男と性的行為をしてるのを想像するだけでもゾッとするのに、慎一は現場に居合わせちゃうんだからすごい度胸。俺だったらその後、まともに母と顔合わせられないかも。
「鳴海は昼寝から覚めたように、しばし春也に顔を向けていたが、さっと恥ずかしそうに身体を硬くし、それから相手に笑いかけた。前髪で隠れた額は軽く汗ばみ、耳たぶが熱ってピンク色になっていた」(P259)
慎一、春也、鳴海の三角関係は台詞を使わず表情や仕草だけで、照れ、嫉妬、ショックなどを表現してるのが上手い。鳴海と春也の距離がだんだん近づき、慎一が可哀想になってきて切ない。
「『ね』って、逃げてく奴をロープか何かで捕まえとるみたいやろ。このほら、縦の棒が人やとして、首んとこからぐるぐる巻いて、ぎゅっと掴んで」(P34)
春也が「ね」を書きまくる場面が狂気を感じで怖い。他にもヤドカリを躊躇なく潰したり「あ、こいつサイコパスや...」って序盤から感じた。慎一宛のイタズラ手紙はなんとなく「春也が書いたんだろうなー」と予想してたので、慎一が春也が書いたのだと見破るシーンの驚きは少なかった。
最後鳴海の車に乗ってたのは春也なのかヤドカリ神なのか気になる。でも父親を結局殺せなかった春也が慎一のためとはいえ、鳴海の父を殺そうとするかなぁ。モヤモヤして気になる。