【感想・ネタバレ】危機の三十年―冷戦後秩序はなぜ崩壊したか―(新潮選書)のレビュー

あらすじ

冷戦終結で平和が訪れるはずだったのに、なぜ再び戦争の時代となってしまったのか。国際政治学の古典『危機の二十年』を下敷きに、ユートピア主義とリアリズムの相克という視座から、ソ連の解体、アメリカの傲り、NATOの東方拡大、そしてロシアによるウクライナ侵攻へ至る三十年を検証する。戦争回避のための必読書。

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Posted by ブクログ

 個人的に興味深く感じたのは、1989年以後の米国とヨーロッパによるロシアの「包摂」の挫折という物語を、同時代の国際政治学者の論説を紹介しながら記述していくスタイルだ。素人の僻目だが、著者は国際政治学研究の「レジーム・チェンジ」をも意識しているのではないか? 米英の研究者はしばしば政権内部に入ったりブレーンになったりするが、彼ら彼女らの理論構築と実践が、現在の事態を差し招いた一つの要因でもある、と。
 だが、結局のところ本書が語る現代史は、大国の政治指導者たちの駆け引きの物語でしかないことも事実である。視座が米国/ヨーロッパ/ソ連=ロシアという三極の関係に限定されたことで、たとえば「ポスト冷戦」期に軍事的暴力の行使がどのように変化したか、その結果、大国間の恣意的な協調と対立によっていかに多くの人々が傷つけられ、この大地と環境が傷つけられたかはそもそも問題にされない。「ポスト冷戦」期の最大の失敗は「オスロ合意」の締結とその破綻だと個人的には思っているが、本書のフレームではそもそもイスラエルの問題が議論されない。さらに言えば、「ポスト冷戦」期の政治を動かした最大のファクターであるところの、資本主義と地球環境の行き詰まりという問題にもほぼまったく言及がない。

 「ポスト冷戦」期は、冷戦時代に大国の権力によって抑圧され、覆い隠されていた政治の爪痕が明るみに引き出され、その問題意識が西洋中心主義的・大国中心主義的な歴史認識に対する批判とカウンター的実践に接続されていった時間でもあった。あらためて、著者とは異なる視座から、「ポスト冷戦」期の記憶と正義(Justice)にかかわる議論の展開を学びなおさなければ、と思った。

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2026年08月01日

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