あらすじ
増え続ける人口を養うための策を、事実のみから導き出す
米・小麦・牛・豚・鶏――我々はなぜ限られた種類の糧に頼るのか?
地球環境を守りながら、世界97億人を養うことはできるのか?
「飢餓と食の常識を覆す。思考が一変する一冊」 ― ビル・ゲイツ
なぜ、1人あたり1,000 キロカロリーもの食料が毎日無駄にされているのか?人口が爆発的に増えるなか、どうすれば地球を壊さずに人類が食べていけるのか? 知の巨人シュミルがこれまでの知見を総動員。そのテーマが「食料」であるのは、私たちの生存の根幹であると同時に、エネルギーなどほかの分野と比べても衝撃的なレベルで非効率が目立つからだ。本書では、歴史を踏まえながら、気候変動や人口増加という難題に直面する食料供給の未来を検証。私たちがいかに食の基本を誤解しているかを明らかにし、私たちの身体は何を必要としているのか、そしてそれが環境にどんな影響を与えているのかを、ファクトから誇張なしに描き出す。
【内容】
日本語版への序文
はじめに
第1章 農業はなにをもたらしたのか?
第2章 私たちはなぜ、いくつかの種の植物だけを大量に食べるのか?
第3章 私たちが育てられるものの限界
第4章 なぜ、私たちはある種の動物を食べ、ほかの種の動物は食べないのか?
第5章 食べ物とスマホ、どちらがより重要?
第6章 健康であるためにはなにを食べるべきか?
第7章 環境への負荷を減らしながら、増加する人口を食べさせる― 疑わしい解決策
第8章 増えつづける人口を食べさせる―どんな方策に効果があるのか
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Posted by ブクログ
ビル・ゲイツがオススメしていたから読んでみたけど、『世界の本当の仕組み』の人だったのね。どうりでこんなに面白いわけだ……!
昆虫食、スーパーフード、培養肉……。将来起きる”食糧不足”に対し、様々な案と技術が必要とされている昨今の実情に対し、ファクトをベースに「それは本当に代替可能だろうか?」と問いかける一冊。いやー、こういう本があるから読書はやめられない……。
本書の軸はいくつかあるんだけど、『世界の本当の仕組み』で触れられてないところとしては、小さい集団を食べさせることは可能かもしれないが、大きい集団(それが90億)にもなると実現不可能な案が殆どになってしまう、という点かな。
そんな不確定な案ではなく、廃棄食料をなんとかすれば90億人を養うことは出来ますよ、ってのが科学的に証明されるのがバーツラフ・シュミルの慧眼だね。
Posted by ブクログ
丹念に事実を積み上げ、世界的な食糧問題に対し奇をてらわず、夢物語にも独善にも陥らず明快な結論を出してくれる、胸のすくような内容。さすがにシュミル氏の論理構成は隙が無く、膨大なデータに支えられた緻密な論考は説得力にあふれている。
内容は文句なし星5なのだが、出来れば各種データはテーブル等にまとめたものを挿入してほしかった(編集側でできるはず)ということで1点マイナス。せっかくの理論がデータの可読性が低いせいでとっつきにくくなっているのはいただけない。シュミル氏のレベルならわざわざ図解する必要もないレベルなのだろうが。
今後予想される世界を養うには、食料の廃棄を抑え、食肉(特に牛)の消費を少しだけ抑え、そしてアフリカなど政治的に不安定な国の農業を現在の技術の範囲で改善すればよい。食品廃棄量が先進国で可食部のみで10~20%弱、ないし、食費の約1/4がただ捨てられている、という事実はショッキングで、これを減らすだけでも相当な改善が可能。
代替肉、古くは有機農業、「この技術で世界は救える」という華々しい(が空虚な)ただ一つの解にすがるのではなく、今ある技術を丹念に積み上げることで問題の解決に至ることができるのだ、という思考。これこそ、ともすれば「夢の技術」に飛びつきがちな我々に必要な思考だと思う。
とはいえ、この「丹念に積み上げる」ことは得てして最も難しく、政治的に言えば「受けが悪い」ところ。その意味では、こういった思考が広まらない真の原因は、我々凡人が思考し続けることを苦手とする、パッと打ち上げられたあだ花に飛びついて飽きたら次に移る、という性質を持つ故でもあろうかと思う。
本文中に指摘されるように食の価値を低く見積もり、半導体やエネルギーに投資し続ける現在の経済システムも含めて、やればよいだけの改革をやらない。食と環境が保全されなければいくらGPUを作ったところで意味がないのに、そちらの市場価値だけが高く評価されていく。挙句に切羽詰まると、データを見るのが面倒だからと現実を認識するところをスキップして「夢の技術」にすがる。
こうした風潮がはびこってしまうところに、せいぜい半年のタイムスパンしか思考できない人類の限界を見せられる思い。政治や、教育の世界において、もう少しこの手の議論をできるようにならないものか(その意味でも、数字が苦手な人に拒否反応を起こさせないためにデータのビジュアル化は欲しかった)。
ということで内容には基本的に文句ないのだが、読後、なぜか引っかかったところがあり、しばらく理由が何なのかわからなかった。
要するに、今の膨れ上がった世界人口を維持するには、現代農業を大規模化し効率を上げ、廃棄を減らし、効率よく人々に食を届ける、その当たり前「しかない」のだ。有機農業、代替肉、伝統農業etcといったサイドストーリーの入る余地は、基本的にない。その「しかない」ところに追い込まれてしまっていることが気持ち悪いのだ、と気づいた。
シュミル氏は古い生活をいたずらに、かつ無批判に懐かしみそれに戻ろうとする風潮にくぎを刺している。確かに、古い生活での乳幼児死亡率、平均寿命の短さを思えばそれは妥当なのだろう。その一方で、非効率ながらそれゆえに生まれた多様な食の文化もあったはずだと思う。
しかしながら、今の世界はその昔ながらの非効率を選択する余地は、基本的にないのだ。多少の非効率や非論理(多様性と言い換えてもよいが)を苦笑いしながら受け入れる余裕はなく、唯一解としてロジカルな栄養システムを洗練するしかないのだ、というところが、個人的に居心地の悪さを覚えた理由なのだろう。
スーパーに数千種類の食材が並ぶだけで、十分に変化に富んだ栄養のある食生活は営めるのだから、伝統食だの多様性だの言うのはただの贅沢だし、食のシステムを洗練させたからと言ってそれらがなくなるとは限らない。それでも、もしかするとそれらもいつかは効率よく食を届けるという大義の前には無くなるのかもしれない、と思ってしまった。
Posted by ブクログ
気候変動下での食糧生産について漠然とした不安があり、この本のタイトルを見たときに、すぐに読み始めた。
どうして農業が始まったのかというところから始まり、世界の食料消費や農業という産業の世界的に占める割合など、幅広い視点から食料生産に向き合っている本だった。
特に著者は、食料の安定供給について、食品廃棄物について着目しているようだった。私は、遺伝子組み換えの動植物と培養肉への期待や、気候変動による食糧生産の安定性に不安があった。しかし、著者のそれらについての解説を読んでいくうえで現状を理解することができた。
たくさんの事実とデータから予測されることを示したうえで、生産の限界を考慮し、効率を改善する努力を続け、現実を考慮した改善を続けていけば、世界は増え続ける人口を養っていけるだろうということを教えてくれた。
あと、やっぱ有機農業だめだ。きびしいって。農薬も化学肥料もないと世界は養えないよ。あと、経済学者さんは農業の経済評価をぜひ見直してください。農業の経済活動が世界のGDP総額の1%未満なんておかしいって。