あらすじ
アメリカを代表する女性作家イーディス・ウォートンによる、
すべての「幽霊を感じる人(ゴースト・フィーラー)」のための、珠玉の幽霊物語集。
静謐で優美な、そして恐怖を湛えた極上の世界。
生霊(いきりょう)や幽霊がこの世にいなくなると、何を失うことになるのか、つい考えてみたくもなります。しかし本書での私の目的は、むしろ幽霊を眼に見えるようにしてくれた人びとを称えることなのです。というのは、幽霊が生き残れる唯一のチャンスは、現実にせよ、想像にせよ、──おそらくは想像のほうが好ましいのですが──幽霊に出会ったひとたちの話のなかに存在すること、それを幽霊に忘れさせてはいけません。幽霊にとっては、ぼんやりと「体験される」よりは、いきいきと想像されるほうがありがたいのです。幽霊が影のようにぼんやりしていても、ちゃんと透けて見えるように表現することが、いかに困難なことか、幽霊だけが分かっています。――「付『ゴースト』序文」より
【目次】
カーフォル
祈りの公爵夫人
ジョーンズ氏
小間使いを呼ぶベル
柘榴の種
ホルバインにならって
万霊節
付『ゴースト』序文
訳者解説
【著・訳者プロフィール】
イーディス・ウォートン(Edith Wharton)(著)
1862~1937。ニューヨークの富豪の家に生まれる。1905年、ニューヨークの上流社会を批判的に描いた『歓楽の家』がベストセラーとなる。21年『無垢の時代』でピュリッツァー賞受賞。本作はマーティン・スコセッシ監督で93年に『エイジ・オブ・イノセンス』として映画化された。他の作品に『イーサン・フロム』、『夏』など。
薗田 美和子(そのだ・みわこ)(訳)
元女子栄養大学教授。津田塾大学大学院博士課程単位取得退学。共訳書にS・ギルバート、S・グーバー『屋根裏の狂女──ブロンテと共に』、E・ショーウォーター『心を病む女たち──狂気と英国文化』(以上朝日出版社)、P・リーフ『フロイト──モラリストの精神』(誠信書房)など。
山田 晴子(やまだ・はるこ)(訳)
元玉川大学教授。津田塾大学大学院単位取得退学。共訳書に『屋根裏の狂女』、『心を病む女たち』など。監修書に錢寧著、謝崇怡訳『現代中国青年たちの夢そして現実』(上・下、YMS 創流社)など。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
原著1937年刊行。
幽霊と覚しきものが出現する、まあ、「怪奇」短篇小説集。
しかし、イーディス・ウォートンはエンタメ系の小説家ではない。19歳ほど年長のヘンリージェイムズがこの女性作家を励まし、親交を深めたそうで、ウォートンはアメリカ文学史において、ジェイムズの後継者的ポジションに位置すると見られることが多いらしい。
ウォートンの『無垢の時代』を先に読んだが、確かにジェイムズに近い地味で稠密な心理小説といったところ。もっともジェイムズほど難解な文体ではない。
従ってシリアス文学というか、普通小説というか、いわゆる純文学系の作家である。が、どうやら幽霊小説に惹かれるものがあったらしく、そうした短篇を集めたのが本書。
エンタメなホラー小説を期待して読み始めた人にはちょっと読みにくいかもしれない。それに、読者をどんどん怖がらせてやろうという娯楽ホラー小説とは根本的に異なっており、幽霊的なものの発現を核とした心理的な小説群である。それでいて、やはりちょっと怖いような感触があることも間違いない。この感触を、ウォートンは愛好したのだろう。
本巻中幾つかの作品は確かにヘンリー・ジェイムズの影響を受けているような、あの「曖昧法」の醍醐味が感じられた。特に私が気に入ったのは「小間使いを呼ぶベル」「柘榴の種」そして最高に感じたのは「ジョーンズ氏」だ。この最後の作品は存在しないはずの者が人々のあいだに強烈な存在感で存在していて、「不在の存在性の重圧」「心象の迫真性という強迫」を素晴らしく描ききった傑作だと思う。
Posted by ブクログ
よかった。幽霊そのものがどうこうではなくて、幽霊を感じてしまう心理、こういう幽霊ものが私はことに好きなんである。
そして『ゴースト』序文で言及されるスティーヴンソンとオブライエンの作品も読みたいなーと思い、なんか覚えがあるなー?とも思ったら、しっかり自分の棚にあったんである。再読したい。
(今年はどうもイーディス・ウォートンにはまっているな。)