あらすじ
「市場主義」による経済構造改革を主張する人々に好んで引用されるシュンペーター。「企業者精神」「イノヴェーション」「創造的破壊」などの概念はどのような文脈で理解されるべきなのか。ウィーンで学び、大蔵大臣・銀行頭取などを歴任、破産の憂き目に遭いながら、独創的理論を打ち立てケインズと並び称された20世紀経済学の天才の思想と生涯を追う。(講談社学術文庫)
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Posted by ブクログ
私が深く尊敬する経済学者であるシュンペーターに関する本であるが、よく知っていたところもあるが、深く理解するところもあった。
彼のその「学問への執着」が私が最も愛する所以であるし、それであるがゆえのケインズへの批判、それもよく分かる。ニューディール政策は、「酸素室の資本主義」であると批判した。彼は1929年の世界恐慌を、在庫投資循環と設備投資循環と技術革新の波が同時に来ただけだ、とする。
彼はマルクスをとても評価したと云われるが、その資本主義の衰退論はマルクスとその主義者たちと一線を画する。マルクスは「資本主義は末期ガンになる。」とするが、シュンペーターはいわば「精神疾患(ノイローゼ)になるのだ。資本主義は生きていく意思を失う。」とする。その集大成が「資本主義・社会主義・民主主義」である。
シュンペーターは壮大にすぎるがゆえに、これからの検証が待たれるであろう。彼は政策によって評価されない。