【感想・ネタバレ】防衛省と外務省 歪んだ二つのインテリジェンス組織のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

【日本の国益という観点から、防衛と外交の「両輪」をバランスよく統括するシステムを築かなければ、日本という国そのものがまっすぐに進むことができなくなってしまうのです】(文中より引用)

外交・安全保障に関するインテリジェンスを大きく握る防衛省と外務省。両組織の扱うインテリジェンスの違いに考察するとともに、あるべき協力・棲み分けの姿について詳述した作品です。著者は、『防衛駐在官という任務』などの著作でも知られる福山隆。

著者の実体験を基に考えが記されているため、説明が具体的で読ませるところがありました。現在では執筆時から少し状況も変わってきているのかもしれませんが、日本の安全保障の実態を学ぶ上で参考になるかと。

あっという間に読み切れる分量でした☆5つ

0
2019年10月02日

Posted by ブクログ

この本が一大ブームにならなかったこと自体がアメリカのインテリジェンスの成果なのかもしれないと、余計なことを考えるほど、読んでよかったと思える新書。防衛省・外務省での経験に裏打ちされた防衛の世界を、わかりやすくまとめていて、読後感が非常に良い。

菅首相を例に、リーダーの資質を述べた部分も白眉である。ハードカバーぐらいの厚さでも必ず読むべき本だと思う。

0
2019年01月04日

Posted by ブクログ

おれの抱くイメージとおりの元自衛官の文章で、突っ込んだ話、専門的な話には触れられていない。
インテリジェンス機関は国家の防寒着で、取り巻く環境が寒くなれば厚手になる。第二次大戦から厚着した米国と違って敗戦で厚手のコートを脱いだ日本。戦後は日米安保条約を所管する外務省が第一国防省、自衛隊を所管する防衛省が第二国防省といった状況だった。外交インテリジェンスは戦略情報だけだが、軍事インテリジェンスは戦略情報だけでなく作戦情報、戦闘情報も扱う。また、外交インテリジェンスは個人プレーになりやすいが軍事インテリジェンスは組織プレーが重要になる。RMAの中核的な要素であるC4ISRが示すとおり、軍事において情報は大きな意味を持ち、インテリジェンス活動も様々。安全保障は一元化されてるのにその他の分野では外交は一元化されていない。それから地政学の話。

0
2015年02月14日

Posted by ブクログ

先日、高校の同窓会で自衛隊で働いている友達と話した。そのタイミングで書店で目にしたので買ってみた。著者の福島隆さんは、防大を卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後外務省に出向し、駐在武官としてインテリジェンスに関わる。陸将も歴任された方のようだ。

インテリジェンスについては、ボクの中では佐藤優の本を読んだことで、その概念を認識したと思っている。今は、社会的にも一分野として認められたのではないだろうか。佐藤優の著作が注目されたからかもしれないが、インテリジェンスは外務省が担当していると思いがちだ。なぜなら、外交政策は外務省が担当していると漠然と思っているから。だが、対外政策の中には国防に関する案件もあるわけで、当然、防衛省も関与している。実際、アメリカのNSAは「軍保安局(Armed Forces Security Agency、AFSA)として設立されている。

日本は、戦後締結した日米安保条約と、それに付随する日米地位協定が実質的な「国防」の根拠となる。そして、それを主管する外務省が安全保障政策の最前線に立っている。これは国際的に見てもかなり異例な体制とのことだ。言われてみれば、国防のことを防衛省ではなく、外務省が主管するのはたしかに妙な印象を受ける。

戦後レジームの中で外務省が「国防」についても最前線に立ってきたこと。そして、その国防の根拠となる日米安保条約は、決してアメリカ的良心から友好国日本を助けるためのものではなく、アメリカにとって意味があるから助けるということ。さらには、アメリカの意向に沿った形で日本の「国防」の姿が形作られてきたこと。こういうことに対して、著者の福島さんは問題提起をする。

では、そのアメリカという国は、どういう国なのか。そして、今後のインテリジェンスのあり方はどうあるべきかと展開する。

アメリカの分析や、インテリジェンスについての自論は興味深い。防衛省の視点での日米分析、情報戦略分析を知るには良書だと思う。

0
2013年12月31日

Posted by ブクログ

著者の言うとおり、二つの省のインテリジェンスに対する歪みが良くわかる一冊。
ただ、いんてqの特性上すべて協力できる訳ではないが、日本という国家のアイデンティティを考えて動く組織としてはもっと協力し合わないと、これからの隣国との情報戦で優位に立つことは難しい

0
2019年06月12日

Posted by ブクログ

防衛省と外務省。二つの『機密情報』を扱う組織を経験した筆者だからこそ書ける本です。経歴の関係上、防衛省、軍事関係よりの話になっておりますが、「インテリジェンス」の重要性がよくわかります。

本書は防衛省から外務省に出向し、大韓民国駐在武官として朝鮮半島のインテリジェンス業務にかかわり、93年にはあの地下鉄サリン事件の除染作業を指揮したという経歴を持っておられる方で、外交と軍事。この2つを司る組織に時に板ばさみになりながらも、扱う情報の「ちがい」について浮き彫りに記したものです。

『インテリジェンスは国家の「防寒着」』
と語る筆者が「インテリジェンス不在」の日本の現状を憂い、軍事と外交のインテリジェンス能力を以下に強化していくかという提言が、自身のアメリカ留学などの経験も踏まえて、具体的な筆致で描かれておりました。

戦中までは日本も世界に冠たるインテリジェンス大国だったわけですが、現状ではすっかり『やられ放題』となっているのだそうで、僕自身がこの世界にかかわることはおそらくないかとは思われるのですが、今後、できることなら日本にはしっかりとした『インテリジェンス機関』を整えていっていただきたいものでございます。本書では二つの情報機関を熟知した筆者だからこそ書けたのであろうと推察せられ、ここでいうところの「情報」が意味するところとは一国の運命を左右するものでありますので、慎重な扱いが求められるところであると本書を読んでそんなことを考えてしまいました。

0
2013年10月14日

「ノンフィクション」ランキング