感情タグBEST3
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Posted by ブクログ 2022年06月18日
読友さんと不定期で読む日本の古典2冊目。自身の未熟さ故に旅に出ることを決意する自分(旧制一高生)。旅の途中で旅芸人一家と出会う。そこには少女の姿。芽生える恋心。旅芸人は売春も兼ねる可能性を知るが、少女は14歳であることを知り、また風呂場では全裸で手を振ってくる。その瞬間恋心ではなく、「愛おしさ」に変...続きを読むわる。旅芸人一家と自分の社会的身分の相違に気付き、さらにこの少女もまたいずれは売春により生きていく可能性がある。愛おしさと身分の壁を見事に描写した。さらに雨、泉、涙という水の存在が彼をカタルシスへと導いた。⑤
Posted by ブクログ 2023年04月09日
「伊豆の踊子」
清潔感を感じる文章で、言葉が美しい。
だが当時の感覚と令和の感覚での齟齬があるのか、
いまいち内容そのものには趣を感じられなかった。
言ってること、この作品が好きだという人たちの感情は理解できるのだが、自分には響かなかった。
雪国も同じ気持ちになったので、近い時代を過ごしておらず想像...続きを読む力と感受性が豊かでない自分のような人間には、昭和の文豪たちの作品は難しいのかもしれない。
「抒情歌」
短編4本の中で、この話が一番内容がわかりやすく、楽しく読めた。
あくまでも「私」の一方的な独り言のような文章なので、「あなた」が本当に放った言葉が実際に載っていたら、私たち読者の「あなた」という存在の受け取り方がまた変わったのかなあと思う。
「私」を通してみる「あなた」にはフィルターがかかりすぎているように感じ、実際の「あなた」はどんなふうだったのか想像を巡らせると楽しい。
Posted by ブクログ 2021年02月14日
踊り子たちと何泊かして帰ることになり、帰りの船で泣いてるというそういう話かいと思ったけど、硬かった少年の心が踊り子達のおかげで打ち解けられたという話だったのか。
文章は美しかった。とても。
Posted by ブクログ 2023年01月23日
『伊豆の踊子』『温泉宿』『禽獣』に見られるように、処女性に対しての筆者の表現の模索が多く描かれている。
『伊豆の踊り子』はほんとに旅情溢れる趣深い作品だった。
『抒情歌』はかなり複雑で難解だが筆者の死生観を反映し、このような作品でこそ文学的に自身の思想を落とし込むことの本領が発揮されている。
...続きを読む面白かった。
Posted by ブクログ 2022年04月22日
伊豆の踊り子
・子供なんだ。私達を見つけた喜びで真裸のまま日の光の中に飛び出し、爪先きで背一ぱいに伸び上がるほどに子供なんだ。私は朗らかな喜びでことことと笑い続けた。頭が拭われたように澄んで来た。微笑がいつまでもとまらなかった。
・下田の港は、伊豆相模の温泉場なぞを流して歩く旅芸人が、旅の空での故郷...続きを読むとして懐かしがるような空気の漂った町なのである。
・海の上の朝日が山の腹を温めていた。
・二十歳の私は自分の性質が誇示根性で歪んでいると厳しい反省を重ね、その息苦しい憂鬱に耐えきれないで伊豆の旅に出て来ているのだった。
禽獣
・だから人間はいやなんだと、孤独な彼は勝手な考えをする。夫婦となり、親子兄弟となれば、つまらん相手でも、そうたやすく絆は断ち難く、あきらめて共に暮らさねばならない。おまけに人それぞれ我(が)というやつを持っている。
・それよりも、動物の生命や生態をおもちゃにして、一つの理想の鋳型を目標として定め、人工的に、畸形的に育てている方が、悲しい純潔であり、神のような爽やかさがあると思うのだ。良種へ良種へと狂奔する、動物虐待的な愛護者達を、彼はこの天地の、また人間の悲劇的な象徴として、冷笑を浴びさせながら許している。
・自分の犬を飼うようになってからは、道の雑犬など見向きもしなくなった。人間についても、またかくの如くであろうと、彼は世のなかの家族達をさげすみながら、自らの孤独も嘲るのであった。