あらすじ
2013年参院選から解禁されることとなった「ネット選挙」。
しかし、そもそもネット選挙とは何なのか? その解禁によって、巷間言われるように「お金がなくても政治家になれる」、「ネットで見た候補者の発信に触発されて、若者が選挙に行くようになる」というのは本当か? 「この情報化社会にインターネットの使用を禁止するなんて、時代遅れもいいところだ!」という主張は正しいのか? テクニカルな側面だけを見ていても、本質には辿り着けない。ネット選挙を丁寧に一歩踏み込んで考察すれば、これらの主張が幻想に過ぎないことは明らかだ。
しかしそれなら、ツイッター議員はなぜツイッター議員であろうとするのか? なぜ全国紙がソーシャルメディア分析に取り組むのか? 解禁による静かな変化が、候補者・有権者・マスメディア・ネットメディアに及ぼす影響はどのようなもので、そこから日本はどう変わっていくのだろうか? インターネットの設計思想を政治に受け入れることで、日本社会が変わる!?
――ツイッターやフェイスブック、私たちが何気なく利用するソーシャルメディア上で、政治家の個人アカウントを目にする機会が増えてきました。ところが、公職選挙法に定められた選挙運動期間に入ると、新しいツイートも政治家個人のブログ更新もぱったりと止まっていたのが、2012年末の衆院選までのこと(一部例外もあり)。それはなぜだったのでしょうか? その答えからわかるのは、公職選挙法が実現しようとした選挙戦環境のありよう、そしてその基となる理念です。
一般市民による選挙関連のツイートやYouTubeへの動画投稿も、場合によっては合法とはいえなかった、という意外な事実に驚かされます。日常の中でほとんど意識することのない法律ですが、公職選挙法はそもそも何を実現しようとしたものだったのか? 改正によって何が可能になり、その影響は日本社会、私たち個人にどう及ぶのか? まさに、「制度だけでなく、これは思想の問題だ!」
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Posted by ブクログ
「理念なき解禁」を超え、日本の政治を「斬新的改良主義」へ―。トライ&エラーを繰り返しながら、ブラッシュアップしていく政治。そこでネット選挙運動の真価が問われるのか。そんな政治を見てみたい。ありがとう。
Posted by ブクログ
2013年通常選挙が国政として初のネット選挙運動解禁となった。それを受け、ネット選挙とは何なのかを論じた本書。
しかし内容は我々が思い描いた景色ではない。
西田亮介氏はこのネット選挙解禁を「理念なき解禁」と断じる。我が国でのネットによる選挙という概念が生まれて20年。その歴史を紐解きながら、公選法とネットのあり方が如何に相入れないかを明らかにする。
ネット選挙にまつわる“誤解”を実証しながら巷にあふれる俗説を切ってゆく。自分自身も勘違いをしている部分があった。ネット選挙を解禁したところで、若者の投票率は上がらない。西田氏は海外の事例からそれを証明している。
このような個別の事例から見えてくるのは、政治家を選ぶための投票の在り方…理念への疑念である。「公平性の重視」から「漸進的改良主義」への変化を見据えて。。
この著作は今回迎えたネット選挙の解説に留まらない。つまりこれは未来にも読まれるべき書であるということだ。
何故ならば、ネット選挙でもたらされるべき、国民と政治の関係は、この選挙では無残にも達成されることはなかったからである。
如何に政治家が「しょうもない話」しかしないかが可視化されただけの選挙だったのである。
我々はネットによって、政治家と政策論議をしたいのである。オープンに双方向に…
これが達成されるまではこの書は目標として掲げつづけられるべきであるし、仮に達成されたならば、この書は歴史の書へと変わるだろう。
Posted by ブクログ
本質は「均質な公平性」のもとでの競走から、「斬進的改良主義」の価値観を政治に取り込むこと。情報技術と政治の距離を近づけ、その豊かな可能性を引き寄せ得る。
しっかり考えてくれている人、に期待します。
Posted by ブクログ
「制度だけでなく、これは思想の問題だ!」気鋭の社会学者が説く『ネット選挙』という事象。僕自身は今までさして興味は正直無かったのですが、これを読んで一体どういう事が起こっているかを改めて知りました。
2013年の参議院選挙から解禁となった『ネット選挙』新聞などを見ていると「親子で学ぶネット選挙」というような特集が組まれているのを散見することがありますが、僕は正直、あまり関心が無かったのかもしれません。
ここでいう『ネット選挙』とは選挙活動にネットようのコンテンツ。具体的にはツイッターやフェイスブック等のソーシャルメディアということになるのでしょうが、先日テレビのニュース番組を見ていて、ある国会議員が四苦八苦しながらツイッターを使っていたり、ブログに自分の所属する党の『裏事情』を書きすぎて執行部からお灸をすえられた議員もいるとかという話が流れておりました。
本書にするされているのはそもそもネット選挙とは何なのか?という根源的な話や、巷でもよく言われている
「お金がなくても政治家になれる」
や
「ネットで見た候補者の発信に触発されて、若者が選挙に行くようになる」
なんていうことが本当に起こるのか?
さらにはネット論壇などでよく言われている
「この情報化社会にインターネットの使用を禁止するなんて、時代遅れもいいところだ!」
に至るまで多角的な角度から語られているということと、豊富なデータが提示されており、これ一冊読みきることができれば『ネット選挙』という事象についてほぼ正確に把握できるのではないでしょうかというのが僕の読後感でございました。
しかしツイッターをよく活用している「ツイッター議員」はなぜツイッター議員であろうとするのか?にはじまる様なネット社会の思想を政治の中に取り込むことによって何が変わってくるのか?ということも論じられていてとても面白かったです。
こういった話は立場によって意見が異なるかと思いますが、本書はすぐ読めますし、「ネット選挙って何?」という方には一読をオススメしたいと思います。
Posted by ブクログ
意識したわけではないが、タイムリーな1冊。そもそもネット選挙ってなんだっけ?という素朴な疑問を、その成立過程から俯瞰できる1冊だと思う。著者の述べるように、ネット選挙は新しい政治スタイルの始まりかもしれない。そんな側面も見ながら今回の選挙に参加したいですね。
Posted by ブクログ
ネット選挙の実態を示し、数々の誤解をコンパクトに説いている点がよい。ネット選挙を導入することは、均質な公平性から、インターネットの根源的思想である漸進的改良主義に政治の価値観を移すことになるが、そうした理念に踏み込まないままのネット選挙解禁を筆者は批判的に描く。感想としては、確かに理念が先立つネット選挙解禁は「規範的な問い」としては成り立つが、マルチプレイヤーの複雑な現実の政治過程の中で解決可能な問いなのかが気になった。現実的に解決出来ない問い(例えば「世界平和の実現方法」)は、規範的なイシューであり得ても、実務的なイシューには成りえない。
Posted by ブクログ
ネット選挙の一般的な認識としてあった「若者の投票率が増える」をしっかりと論理的に否定し、今後のネット選挙の展望についてわかりやすくかかれた書籍であると感じた。
Posted by ブクログ
テレビなどの新しいメディアの選挙運動への利用は認められてこなかったが、なぜネット選挙だけ認められるのか?
「お金がかからない」、「若者の投票率が上がる」という言説は合理的な根拠に乏しい。
理論なきネット選挙解禁は意味がない。まずは「インターネット」という世界の価値観の共有やそれを政治に取り入れる際に起こりうる変化を議論するべきである。
インターネットは政治家と国民の距離の遠さを縮め、政治を透明化できる可能性がある。ただし、ネットは手段のひとつで、従来のメディアや選挙活動を含めた総合的な議論が必要である。
ということが書いてありました。